読書日記

2009年2月20日 (金)

[破綻するアメリカ 壊れゆく世界]ノーム・チョムスキー

[厳しく、恐ろしく、避けようの無い選択]

 半世紀ほど前の1955年7月のことだ。哲学者のバートランド・ラッセルと物理学者のアルバート・アインシュタインがちが、他に類をみない内容のアピール[ラッセル-アインシュタイン宣言]を、世界の人々に向けておこなった。私たち人類が抱える様々な問題にたいしても、もっともな意見はあるだろうが、いまはそれを、「いったん脇において、すばらしい歴史をもつ生物学上の種の一員であることだけ」を自覚するよう人々に呼びかけ、「その種の消滅を、私たちの誰一人として望んでいるはずがない」と訴えたのだ。世界の人々はいま、「厳しく、恐ろしく、避けようのない」選択を迫られている。それは「人類を絶滅させるか、それとも人類が戦争を放棄するか」という選択なのだ、と。

[核惨事の危機一髪]

ラッセルとアインシュタインが強調した核による破壊の危険は、空想ではない。私たちはすでに核戦争の瀬戸際まで来ている。最も有名なのは、1962年10月のキューバ・ミサイル危機だ。このとき、私たちが「核による抹消」を免れたのは「奇跡」にほかならないと、二人の著名な研究者が言っている。ケネディの補佐官をつとめた歴史家のアーサー・シュレンジャーは、2002年にハバナで開かれた記念会議で、このミサイル危機を「人類史における最も危険な瞬間」と述べた。会議に出席した人々は、自分達が考えていたよりもっと深刻な危機だったことを知った。世界は長崎以来初めて核兵器が使用される「寸前」まで行っていたと、この会議を準備した国家安全保障公文書館のトマス・ブラントは報告。彼が言及しているのは、ソ連潜水艦のワシーリー・アルキポフ中佐が核兵器の使用を阻止した一件だ。アルキポフは、自分の潜水艦がアメリカの駆逐艦に攻撃されていたときに、核魚雷の発射命令の実行を拒んだのである。さもなければ、恐ろしい結果になっていただろう。

 ハバナの記念会議に出席した高名な製作立案者の一人で、ケネディ政権の国防長官をつとめたロバートマクナマラは、ミサイル危機の最中に世界は「核惨事の危機一髪」まで行ったと2005年に回想した。さらに「もはや世界の終わり(アポカリプス)」だと警告し、「現在のアメリカの核政策は不道徳かつ不法であり、軍事的に不要で恐ろしく危険だ」と述べた。アメリカの核政策は「他国民にとっても自国民にとっても我慢できないリスク」(「過失または不注意による核の発射」という「とんでもなく高い」リスクと、テロリストによる核攻撃のリスク)をもたらす。マクナマラは、「クリントン政権のウィリアム・ペリー国防長官のつぎのような判断--アメリカが10年以内に核攻撃のターゲットとなる可能性は、50%を超える--を支持した。

 「国家安全保障担当者の意見の一致しているところでは」とグレアム・アリソンは報告している。
「汚い爆弾による」攻撃は「避けられず」、必須の原材料である核分裂性物質を回収し管理しないかぎり、核兵器による攻撃の可能性が高いと、と。1990年代初めから、上院議員のサム・ナンとリチャード・ルーガーが率先して書く分裂性物質の回収や管理を目指し、その取り組みは一定の成果をおさめた。この成果について見当したアリソンは、ブッシュ政権の初日からこの計画が妨害されたと述べている。ブッシュ政権の政策立案者たちは、「逃れられない核の恐怖」を防ぐためにこの計画がを脇へ押しやり、精力を傾けてアメリカを戦争へと駆り立て、その後、自分達がイラクにもたらした破局を何とかくいとめようとしているというのだ。

 戦略アナリスtのジョン・スタインブルナーとナンシー・ギャラガーは、米国学士院の機関誌のなかで、誇張ではなく警告している。ブッシュ政権の軍事計画とその侵略的な姿勢は「最終的な破滅の危険をかなりともなう」と。その理由は簡単だ。一つの国家が絶対的な安全を追求し、意のままに戦争し「核の歯止めを取り除く」(ペダツールの言葉)権利を確保しようとすれば、他の国々の安全が脅かされ、それらの国は対応策をとると考えられるのだから。ラムズフェルド国防長官の米軍再編で開発されつつある恐ろしいテクノロジーは、「間違いなく世界中に広まるだろう」。「競って威圧しあう」状況では、行動とそれにたいする反応の繰り返しによって「危険が増し、制御不可能になるおそれがある」。「アメリカの政治システムがその危険を認識できず、その意味するところに対処できない」ならば、「アメリカの存続の可能性はきわめて疑わしくなるだろう」と、スタインブルナーらは警告する。

[もはや世界の終わり]

「もはや世界の終わり」であるかどうかを実際的に見極めることは不可能だ。だが、気のたしかな人なら静観できないほど、その可能性が高いのは間違いない。推測は無意味だ、アインシュタインとラッセルが述べた「厳しく、恐ろしく、避けようのない」選択に対処することは、決して無意味ではない。それどころか、これは切迫した問題である。とくにアメリカについてそう言える。アメリカ政府は、歴史的に類を見ない軍事的支配を拡大し、破壊競争の加速に中心的な役割を果たしているのだから。
「偶発的な、または過失による、あるいは正式な許可のない核攻撃の可能性が高まるかもしれない」と、核戦争の脅威を減らす取り組みを率先してつづけてきたサム・ナン元上院議員は警告する。「私たちは最終戦争の危険をわざわざつくりだしている」とナンは言い、それは「アメリカの存続」が「ロシアの警告システムと指揮統制の正確さ」に左右されるような政策を選択した結果だと述べる。

 ナンが言っているのは、アメリカが軍事計画を急拡大して戦略的均衡を破っているということ。その結果、「ロシアは、攻撃の警告を受けた場合、その警告が正確かどうか確認せずに、ただちに核兵器を発射する可能性が高まる」。「ロシアの早期警戒システムはひどい機能不全であり、ミサイルの飛来を誤報するおそれが大きい」という事実から、そうした脅威はいっそう増大する。アメリカは「高度警戒、核兵器即応態勢」をよりどころにし、「数分以内にミサイルを発射することになる」ため、「指導者は攻撃の警告を受けたら、核兵器を発射するか否かはほとんど即座に決定しなkればならない。データ収集し、情報を交換し、状況を把握し、破壊的な判断ミスを避けるための時間を奪われる」。その険がおよぶ範囲はロシアにとどまらず、中国が同様の行動をとれば、やはりその周辺まで危険がおよぶ。戦略アナリストのブルース・ブレアによると、「早期警戒および発射制御に関しては、パキスタンやインドをはじめとする核拡散国家も問題をかかえていて、そちらのほうがもっと深刻」である。

[無法国家のやりたい放題!]
 フィナンシャルタイムズ紙の調査で明らかになったことがある。「クリントンとブッシュの両政権は、イラクがトルコとヨルダンに石油を密輸していると知ったいただけでなく、アメリカ議会に知らせてもいた」うえ、「見て見ぬふりをする」よううながしていた、と。その理由は、ヨルダンはアメリカの重要な顧客国であるため、この違法売却が「国益にかなう」から。また、重要なアメリカ軍事基地として長期にわたり地域支配に協力してきたトルコへの支援は、「安全保障や繁栄をはじめとする死活的な利益」を促進するのだから。

 イラク侵攻前のリベート計画がどれほどの規模だったにせよ、イラク占領中のアメリカの管理下で消えた総額を概算することさえおぼつかない。連合国暫定当局(CPA)が統治を終えたとき、その管理下に移されていた推定200億ドルのイラク復興資金--石油・食糧交換計画による未使用の資金と110億ドルを超えるイラクの石油収入をふくむ--の行方がわからなくなっていた。「透明性の欠如」がCPAの汚職に関する「疑惑を深めている」とフィナンシャルタイムズ紙は報じ、多くの実例を挙げている。たとえば、500万ドルを超える契約の四分の三が、競争入札なしで成立していた。そのうちの一つ、「イラクの石油施設を再建する14億ドルのプロジェクトは、アメリカ副大統領のディック・チェイニーがかつて経営トップだった石油関連会社ハリバートンが、競争入札なしで受注し、[それによって]ハリバートンはイラク復興資金の最大の単独受領者となった」。さらなる調査によって、テキサスの会社と「伝説的な石油マンたち」が「国連の石油・食糧交換計画による規定」を覆そうと計画していたことが明らかになり、数件が告発されている。これまでに明らかになったのは、とりわけアメリカ企業による不正の泥沼化をしめしていることだ。

□今日の読書 ★★★★★

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2009年2月15日 (日)

[リンさんの小さな子] フィリップ クローデル

「タオ・ライさん、あなたとこうしてここにいると、不思議なくらい落ち着いた気持ちになるんですよ」

 給仕が料理を持ってやってくる。バルクさんは、最高のものを注文した。贅沢すぎるということはない。先日、港で過ごした午後のことを、彼は思い出す。胸にたまっていたものを洗いざらい話したこと、そのときの老人の仕草、そして思わず口を閉ざし、苦しみ、恥じたことを思い出す。それに値段などつけられない。

 バルクさんとリンさんは食べ、そして飲む。リンさんは、それまで想像さえしたことのない料理を味わったいる。知らない料理ばかりかでれど、どの料理もとてもおいしい。太った男が注いでくれるぶどう酒をちびちび飲む。顔が少しほてる。食卓が揺れる。笑いがこぼれる。ときに料理を子供にも味合わせてやろうとするが、あまりお腹がすいていないようだ。聞き分けのいい子なのだが、食は進まない。バルクさんは笑顔でその様子を見ている。

 デザートが済み、給仕が食卓を片付け終わったとき、太った男は、さっき座ったときに自分の横に置いた袋を手に取り、中からきれいな包みを取り出すと、それをリンさんに差し出した。

「プレゼントですよ!」ところが老人がためらっているので、さらに続けて「遠慮しないで、タオ・ライさん、あなたへのプレゼントなんだから! どうか受け取って!」

 リンさんはその包みを受け取る。震えている。プレゼントには慣れていないのだ。
「さあ、開けて!」バルクさんは手振りを交えながら言う。
老人は慎重な手つきで包装紙をはがす。あまりにばか丁寧なうえに、手先が器用でないので、時間がかかる。髪をはがすと、きれいな箱が出てきた。

「さあ、さあ!」太った男は笑いながら相手を見ている。
 リンさんは箱の蓋を開ける。中には、淡いピンク色の軽い薄葉紙がかかっている。それを取る。心臓が早鐘のように鳴る。小さな叫び声がもれる。丁寧に畳まれた豪華で繊細なプリンセス・ドレス。目もくらやむようなドレス。サン・ディウのためのドレス!

「これを着たらきれいだよ!」バルクさんは女のこのほうに目を向けながら言う。リンさんはドレスに触れることさえできない。汚したらたいへんだ。こんなに美しい衣服は見たことがない。しかもその服を、たった今、太った男がくれたのだ。リンさんの唇は、興奮のあまり震えが止まらない。彼はドレスを箱にしまうと、薄葉紙をかぶせ、蓋を閉めた。そして、バルクさんの両手を自分の両手で包み込むようにして、強く握り締める。とても強く。長々と。サン・ディウを抱き寄せる。リンさんの目が光り、友を見つめ、女の子を見つめると、やがて、か細い、ややしゃがれた震える声がレストランの中に響いた。

 いつでも朝はある
 いつでも朝日は戻ってくる
 いつでも明日はある 
 いつかはおまえも母になる

 歌が終わった。リンさんはバルクさんの前で、感謝の気持ちを示すために頭を下げる。
 そして、老人は幸福そうに、小さな女の子をしっかりと抱きしめる。

□今日の読書 ★★★☆☆

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2009年2月11日 (水)

「イギリス型<豊かさ>の真実 (講談社現代新書)」 林 信吾

[医療費が無料の国]

 英国では医療が無料である、ということをご存知だろうか。
 本当なのである。NHS(ナショナル・ヘルス・サービス)という公的機関が、国民に対して、医療を無償で提供している。
 もう少し、具体的に言うと、英国では街中の小さな医院や山村の診療所も含めて、医療機関の大半が公営で、日本の厚生労働省に相当する、保健省という官庁はあるものの、NHS自体は独立して税金で維持される機関である。このNHSが管理運営する病院では、医療費は徴収されない。

 医師の報酬も、NHSを通じて国家から支払われる方式で、もちろんキャリアや専門性によって差はあるが、おおむね高級官僚なみの「給与」を得ている。もっとも英国では、どこかの国のように官僚が優遇されてはいないのだが。

 当時の仕事仲間や友人は、総じて、
「自分や家族が病気になっても、お金の心配はしなくていのは、実に素晴らしい」と
語っていた。

 ある英国人女性は、二年ほど前にご主人を大腸ガンで亡くしたときの経験を語ってくれた。ご主人は二度におよぶ大手術を受けたのだが、その甲斐なく、ホスピスで最後の日々を過ごした後、永眠したという。

 その費用は、すべて無料だった。彼女はNHSほどありがたいものはない、と言う。別の男性は、同僚の四歳になる娘さんが、免疫がなくなってしまう難病にかかった話をしてくれた。その子はおよそ半年をかけて、数次にわたる最先端の手術を受けた結果、普通の生活が送れるようになった。
 日本だったら、とんでもない金額になったことは間違いない。

 しかも、英国人だけが無償の医療の恩恵に浴しているわけではない。
 ロンドン時代に知り合った、つまりは在英経験のある日本人に聞いて回ったところ、かなりの確率で英国の医療機関の世話になっていた。ほとんどの場合、風邪程度のことだったようだが、中にはバイクにはねられて入院したり、痔の手術を受けたという人もいる。 「お金がないから医者にかかれない」という人は、英国にはいない。

 あらためて考えてみると、これは大変なことである。
 
 そうかと思えば、いや、日本人から見れば・・ということなのかも知れないが、こんな「医療」まで無料で本当によいのだろうか、と思えることもある。

 やはり知人の英国人男性から聞かれた話だが、彼の親戚の娘さんが、十代の前半から、胸がおおきすぎることに非常なコンプレックスを抱いていたそうだ。で、とうとう小さくする手術を受けた。という。

 日本人の、まだ若い女性ジャーナリストにこの話を聞かせところ、たった一言、
「もったいない・・・」とつぶやいていた。そういう感想を聞きたかったのではないのだが。

とは言うものの、「本当になにもかも無料なのか?」と問われたならば、答えはノーである。
まず、薬代は取られる。NHSでは定額制になっていて、処方箋一通につき7ポンド10ペンス取られるという。1ポンド=200円で計算してみると1420円だ。

[財源は消費税]
 英国では医療が無料である、という話をすると、まず例外なく、日本人の口からは「素晴らしい」「うらやましい」といった感想が聞かれる。しかし同時に、かなりの確率で、「財源はどうなっているんですか?」
という質問を受ける。そんな時、私は決まって、こう問い返す。
「日本の消費税に相当する、VAT(value-added tax=付加価値税)というのがあるんですが、この税率、どれくらいだと思いますか?」
・・これまで正解できた人はいなかったので、さっさと発表してしまおう。17・5パーセントである。
 これでまず、大いに驚かれるのだが、
「それでもまだ、ヨーロッパ大陸諸国に比べれると、安い方なんですよ」
と話を続けると、聞かされた側はまず例外なく、信じられない、という表情を見せる。しかしこれは事実なのだ。

 付加価値税は、英国においては1973年にEC(欧州共同体)に伴って導入された。
 当初は、贅沢品に対しては12.5%、一般消費財及びサービスに対しては8%の税率だったが、1979年に「サッチャー革命」の一環として一律15%へと大幅な値上げが行われた。その後さらに、1991年に17.5%へと再度引き上げられ、現在に至っている。

 手元に「The United States Of Europe」という本がある。著者のトム・リード氏は米国人で、「ワシントン・ポスト」紙の元ロンドン市局長である。
 その本の中に、著者がロンドンに赴任して間もない頃のエピソードが出てくる。
 娘さんがピアスの穴を開けたところ、翌朝、耳たぶが腫れて痛み出したという。ロンドンの地理も何もわからなかったので、とりあえずタクシーに乗り、パディントン駅近くの病院に駆けつけた。
 そこで応急処置と、今後のケアについて医師からの説明を受けた後、著者は米国で身についた習慣通り、小切手帳を取り出した。すると看護師だか職員だかの女性スタッフから、
「請求書は出ませんから、小切手は必要ありません」と言われ、大いに驚いたという。
著者によれば、米国でも同等以上に適切な医療は受けられるが、その場合、まずは複数(診察代や薬代)の、総額数百ドルに達するであろう請求書を受け取り、その後、支払った医療費を取り戻すべく、三ヶ月ほど保健会社と論争を続けねばならないそうだ。

 病院に同行した奥さんは、
「これが17.5%の意味だったのね」
と語った。

 そういうことなのだ。英国の医療は、本当は無料ではない。ただ、昨今の米国や日本のように、万事を自己責任と位置づけてしまう、新自由主義の生き方とも、明らかに違う。お金がなくて医者にかかれない人などいない社会であり、そのための財源は、できるだけ皆に平等に負担すべき、という「高福祉・高負担」の考え方である。

□今日の読書 ★★★★★

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2009年2月 9日 (月)

[空の香りを愛するように (幻冬舎文庫)] 桜井 亜美

「君に頼みがあるんだ」
「どういうこと?」
 彼は眼を閉じてゆっくりと頭を仰け反らせ、煙を空に向かって吐き出す。薄青色の煙は大きな輪を描いて観覧車のイルミネーションが映る空に立ち上がっていった。
「ぼくの名前はミツル。君のことはずっと前から知ってた」
 あたしは眉根を寄せて彼の横顔を見つめる。いつか遭ったことがあったろうか?
 だが、高速で捲られていく記憶のインデックスに彼の顔は見当たらない。

「ごめん、あたしは覚えてない」
「君はぼくをしらないけど、ぼくは君を知ってる。ぼくたちは仲間だと思う。コウ繋がりの」
 ようやく納得がいった。彼はコウの友人なのだ。きっと写真か何かであたしを知っていたのだろう。
「あまり時間がないから、用件を言う」
 あたしは無言で彼が煙を吐き終えるのを待つ。それは煙が空に届くまでの、長い長い時間に思えた。
「鳥の影から逃げないで。逃げたら、一番大切なものを失うから。その眼で鳥の影の招待を見ることができれば、影は消える」
「鳥・・影・・?」
「世界の暗黒面を支配していて、人々の不安を食う魔物の影。姿を見せず、その雲に映る影だけで恐怖を生み出し人間を支配する。ぼくも君に手を貸すよ。でもコウにはぼくのことを秘密にして」
「待って。意味がよく分からない」

 彼は答えもせずすばやく立ち上がって、手を振りながら「また会おう」と言った。
 追いかける暇もなく、その華奢な彼の後姿はレストランの物置に隠れて消えていた。
 でも淡い満月から零れた光のような、銀色のほのかな粒子が、まだ大気中に残っているような気がする。異次元の小さな亀裂から抜け出してきた使者のように、実体のない男の子だった。

 鳥の影から逃げないで。逃げたら、一番大切なものを失う。
 あたしにとって、一番大切なのはもう決まっている。
 ぼんやりと立ち竦んだまま、あたしはミツルの言葉の意味を考え続けていた。

□今日の読書 ★★★☆☆

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2009年2月 7日 (土)

[瑠璃でもなく、玻璃でもなく] 唯川恵

でもふたりで消えたりしたら、後でみんなに抜け駆けしたって言われる」

「いいさ、そんなの無視しておけば。これは合コンだよ。いい相手が見つかれば当然、別行動になる。それが自然の摂理というものだろ」

 かれの無防備な笑顔を見ていると、それも悪くないかもしれない、と、思い始めていた。こんなふうに誘われるなんて久しぶりだ。だいたい最近こういうことから遠ざかり過ぎていた。彼は感じもいい。会話も面白い。ふたりで飲みに行くぐらいどうということはない。二十六歳、もう十分に大人だ。出会ったばかりの男と、気軽にお喋りを楽しむ夜があってもいいはずだ。

 その時、バッグの中でメール着信の音が鳴り出した。
「ちょっとごめんね」
美月は洗面所に行くふりをして席を立った。ドアの前で携帯を取り出し、メールを開く。
<残業が早めに終わったんだけど、今から会える?>

と、出ていた。弾んだ思いで美月はすぐに電話を返した。
「うん、大丈夫。いつものバーでいい? 三十分ほどで行けると思う」
「わかった待ってるよ」
 それから急いた気持ちで席に戻り、彼に告げた。
「ごめんなさい、急に家に帰らなくちゃならなくなったの」
 彼はおどけたように肩をすくめた。
「見え透いた嘘だなぁ」
「本当よ、私も凄く残念だけど」
 言いながら、三月は変える準備を整え、席を立った。気持ちはもうすっかり約束の場所へと飛んでいた。
「あら、美月、帰るの」
 順子には「ごめん」と顔の前で片手を立てて謝り、店の前に出てすぐにタクシーを止めた。
「外苑前」と告げて、シートに身を沈める。道は思ったより空いていて、タクシーは初夏の街中を軽快に飛ばしてよく。それでも美月の心ははやる。
 早く、早く。もっと速く。
 バーには二十分で到着した。ドアを開けると、通い成れた店の匂いが溢れてきて、それだけで酔ってしまいそうになった。カウンターに愛おしい背中が見える。すぐにスツールが半回転して、その身体が美月に向けられた。
「早かったね」
森津朔也がわずかに口元を緩めた。

「いい人がいるなら、家に連れてらっしゃいよ」
 母の言葉に、美月は返事に詰まりながら、適当にはぐらかした。
「いたらね」
「あなたもういい年なんだから、そろそろそういうことも考えなくちゃ。お父さんも心配してるのよ」
「はいはい、じゃあ行って来ます」
「夕飯は?」
「いらない」

 外に出て、美月は一つため息をついた。朔也のことは、いずれ両親にも紹介する時がくる。けれど、それは離婚が成立してから。もし今、美月が妻子ある男と付き合っていると知れたら、頭が固い両親は激怒するだろう。そんな不道徳は許せないと、端から反対するに決まっている。
 だからこそ慎重にことを運ばなければならない。

 そんなことを考えながらも、駅に向かう足取りは、自分でも笑ってしまうくらい弾んでいた。
 朔也はきっとまだ寝ているだろう。アパートに着いたら、すぐにコーヒーを淹れてあげよう。朝食は生ハムとクルームチーズのオーブンサンド、それにヨーグルト。それを窓の下を流れる川を眺めながら食べる。そして日がな一日、身体をくっつけ合って、のんびり過ごすのだ。
 もうお洒落なレストランも、ロマンチックなホテルもいらない。こうして週末、朝から晩まで朔也と一緒にいられるのだから。

□今日の読書 ★★★★★

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2009年2月 4日 (水)

[霞が関の逆襲] 江田 憲司,高橋 洋一

[タスポは天下り団体を作る伏線か]
 近年、世の中の禁煙ブームもあって、タスポの導入が始まりましたが、私はこの話には裏があると思っています。
 2008年7月1日から、関東地方や沖縄県でもタスポの導入が始まり、現在では、タスポがなければ、自動販売機でタバコを買うこともできなくなっています。未成年に買わせないための処置と言われていますが、どうもきな臭い。

 確かに喫煙は20歳以上と決まっています。そういう法律があるのですから、これは守らなければなりません。ただ、そのためになぜタスポが導入されるのか?
 このタスポに関しては、あまり世間に知られていませんが、JT(日本たばこ産業)やフィリップモリスが500億円ずつお金を出しています。しかし、これだけ多額のお金をかけてシステムを作らなければならないのか、疑問です。
 まず、なぜ新しいカードを作らなければならないのか?

 運転免許証でも同じようなシステムが作れるはずです。それなのに、なぜ新しいタスポのようなカードを喫煙者みなに持たせようとするのでしょうか? まるで、新しいカードを導入したいがために取られた策のように見えてしまう。こういったカード導入には、必ず後に業者からの囲い込みが行われるのが常です。ここに利権が発生するようになる。これは今後注視しなければなりません。

 また、タスポを導入することによって、全国の自動販売機に高機能の自動販売機に電話のようなものがついていて、タスポをかざすと、無線で情報を飛ばして認識しやすくするという構造になっている。
 しかし、このような大掛かりなシステムにする必要があるのでしょうか?
 タスポの導入でいわれているのは、結局儲かったのは、このようなシステムを導入した自動販売機メーカーだということです。

 タスポは「社団法人日本たばこ協会」「全国たばこ販売共同組合連合会」「日本自動販売機工業会」が主体になっていると、表向きはされている。役所の存在は、表に全然出てきていません。
 ただ、日本ではタバコに関して管轄しているのは財務省。こういったシステムを作ると、後にそれを統括する天下り団体ができるということがよく起こります。新しい制度を導入して、新たな法人を作り、そこに天下るというのは、霞ヶ関の得意技なのです。

 これは私の元役人としての直感なのですが、今後こういった類の話が出てくるのではないかと思っています。天下り団体、公益法人などができないか、国民は注目していく必要があるでしょう。

[温存された道路公団の打出の小槌]
 道路公団改革は、当時、小泉首相が「民営化問題が持ち上がったときには、こういうことができるとは誰も信じなかった」と胸を張ったにもかかわらず、残念ながら、「名ばかり改革」に終わりました。予想されたとおり、道路官僚や道路族は「名を捨てて実をとった」格好です。

「名」とは道路公団の経営形態で、そこを生贄にしておいて、「実」である高速道路の建設計画(9342キロ)は100%確保した、いや、それ以上のものを確保しました。

 道路公団の本質は、これまで国の税金や財投資金(国民が郵貯や年金等に預けたお金)を湯水のように使い、無駄な高速道路を造り続けることで、結果的に40兆円もの借金を残してしまうような体質を、根こそぎ改めることでした。そのためには、いわゆる道路族の介入をいかに排除していくかがキーポイントだったはず。そして、そのうえで、巨額な借金を新たな国民負担なく、通行料で返済していく道筋をつけることでした。

 にもかかわらず、採算にあわないため国自らが税金で高速道路を造る「新直轄方式」と、民営化会社が、政府保証を受けて民間から資金を調達し、新たな高速道路を造る仕組みの創設により、いかようにでも高速道路が造れるようになってしまった。いわば、道路公団の打出の小槌が温存されたのです。ちなみに政府保証ということは、焦げ付いたら税金で穴埋めするということを意味します。
 採算にあわなくても必要な道路もありますから、直轄方式の創設自体には私も異論はありませんが、それなら、民営化会社が整備する道路は、より一層厳しく採算性を求めるべきでしょう。
 しかし、会社に道路建設の拒否権があるとはいうものの、最終的には、国土交通省の諮問機関が、その拒否理由の正当性を審議し、「正当な理由なし」と判断した場合は結果的に建設せざるを得なくなる仕組みが導入されてしまいました。この時点で私は、「これで改革は失敗に終わった」と思いました。会社と道路官僚・道路族との力関係からすれば、実際、無駄な高速道路建設に歯止めをかけることにはならないからです。そうなると、現在の約40兆円にも上る借金はさらに拡大していく可能性がああります。
 道路利権はしっかりと温存されたのです。

[なぜ、官僚は官邸で力をもっているのか]
 それは、政権が代わると、総理や官房長官、各大臣、副大臣に至るまで政治家すべては入れ替わってしまうのに、この官邸官僚たちは替わらないからです。政権交代時には、いったん、彼らの辞表をとりまとめるのですが、新しい総理や官房長官は、ついつい、官邸の仕事の運び方も熟知していて、たくさんのノウハウも受け継がれている彼らに頼ってします。

 事務担当の官房副長官の最大の任務は「霞ヶ関内調整」です。総理や官房長官まで問題を上げる前に、一府一ニ省庁の間で調整しきれなかった政策を扱います。官僚の掟やしきたりを十二分に熟知した立場から調整を行うのです。ちなみに、官房副長官は事務次官等会議の主催者でもあり、閣議にも出ることができる。事務次官等会議との閣議の両方に出席できるのはこの官房副長官のみです。
 この事務次官等会議とは、火曜、金曜の閣議に備え、その前日である月曜と木曜に官邸で開かれる会議です。すべての省庁の責任者が出席し、各省庁から提出が予定されている案件を事前に調整します。

 全会一致が原則で、ここで調整がつなかければ閣議案件としてあがらないことになっていますが、実際は会議にかかる前の段階で、各省庁間で根回しなどが行われて合意が図られているので、この会議がもめることはまずありません。しかし、霞ヶ関の権力が見え隠れする会議であるのは確かです。

 したがって、通常何代もの内閣に仕える、この事務担当の官房副長官に誰を据えるかが、大変重要な問題となってきます。「霞ヶ関の組織防衛」派か、「国益」派かで、政権運営はずいぶん変わってくるのです。

[JT株と地デジで6兆円]--高橋
 政府はJTの株の半分ほどを持っています。これはJTを霞ヶ関が天下り先として確保していたいためでしょう。ただ、政府が株を半分持っているためJTには自由度がないのが現状です。
 私はJTは、完全民営化でいいと思っています。なぜ株を半分持っているのか、国会で議論すべきでしょう。
 株を政府は売却すればいい。この売却益が二兆円ほどになるでしょう。

 また、これも新しい話なのですが、2010年には地デジに完全移行します。
 実は地デジに移行すると周波数帯が空く。日本はいままで周波数帯が空いたときには関係業者の間に配るしかありませんでした。もちろん電波料はとりますが、格安で関係業者に叩き売りするという、持ちつ持たれつの関係を続けてきたのです。
 しかし、世界では、こういった空いた周波数帯はオークションで売ってしまう。日本も同様のことをすれば、四兆円ぐらいの収入が入ると思います。ここはうまく制度デザインすると、もっと収入が増えるでしょう。
 この三年間でやろうと思えば、六兆円の「埋蔵金」が発掘できるのです。

[URのファミリー企業が行った埋蔵金隠し]--江田
 特別会計だけではなく、数ある独立行政法人やそのファミリー企業にも埋蔵金が眠っています。
 そもそも独立行政法人にはそれ自体、無駄といわれているものも多い。
 その一つである都市再生機構(UR)について、私は、そのファミリー企業の一つが、その余剰金を資本金に移し替えた件について、政府に質問趣意書を提出して問いただしたことがあります。その企業の名前は日本総合住生活株式会社(JS)。2008年3月現在、URの持ち株比率が75.5%の子会社です。
 JSは、2006年決算で、剰余金を519億円から248億円に約270億円減らす一方、資本金を50億円から300億円へ250億円増資しました。剰余金のうち、250億円をしれっと資本金にしてしまったのです。株主総会で決めたといっても、それはUR含めた身内の会なので、まったくのお手盛り。これでお金の流動性をなくしてしまったのですから、これでは剰余金隠しといわれても仕方ありません。

 ちなみに、JSおけるURからの再就職役員は2008年3月末現在で、16人中10人です。また、毎年のURからの受注(契約)金額は200億円近い。そして、随意契約100%というのがその実態です。まさに、URとJSは一体不可分の関係なのです。

[独立行政法人に眠る15兆円の埋蔵金]
[労働保険特別会計に眠る埋蔵金]

□今日の読書 ★★★☆☆

霞が関の逆襲 Book 霞が関の逆襲

著者:江田 憲司,高橋 洋一
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2009年2月 1日 (日)

[天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書)] 山本 雅人

[信任状捧呈式]
 華やかに馬車が走る

 JR東京駅丸の内中央口から西にある皇居に向かってまっすぐ伸びる幅約60メートルある道は、「御幸通り」あるいは「行幸通り」と呼ばれている。(行幸は天皇が出かけること) 1ヶ月に1~2回、この通りの、ふだん通行止めにされている中央部分の四車線分くらいのスペースが開かれ、周囲が一時的に交通規制され、車の動きが止まる。その中を、東京駅から二頭立てのえんじ色の菊の紋の入った儀装馬車がゆっくりと走り抜け、「パカパカ」という馬の足音が響き渡る。

 馬車の前部では、白い羽根のついた黒色のシルクハットに、金筋の入ったフロックコート、赤色のビロードのチョッキ姿の人が馬の操り、後部にも掌車係が乗り込む。これらは宮内庁の主馬班の職員で、そのまわりを皇宮警察を警視庁の騎馬隊の馬がガードする。
 日常とはまったく異なる世界の出現に、交差点でその風景に出会った丸の内のサラリーマンや観光客は驚き、携帯電話などで撮影する人の姿も見受けられる。

 馬車に乗っているのは、人事異動で駐日大使館に着任したばかりの外国の大使(夫妻)らで、沿道の人が手を振ると、にこやかに手を振り返す姿も見られる。
 大使らはこれから、皇居・宮殿でもっとも重要な行事の行われる部屋「松の間」での「信任状捧呈式」と呼ばれる儀式に臨むために皇居に向かっているのだ。

 信任状捧呈式は、憲法第七条に列挙されている天皇の「国事行為」のうち、「外国の大使及び公使を接受すること」に該当する重要な儀式とされている。

[1年に30カ国以上の大使らと]
 しばらくしてモーニング姿の天皇がお出ましになり、式が始まる。天皇のそばには外相が立ち、ほかに宮内庁長官と通訳、それに天皇に続いて松の間に入った侍従長、 侍従の姿が見えるが、いずれもモーニング姿だ。

[天皇の住まい]
 住所は[皇居 御所]
 天皇・皇后両陛下は皇居内にある住所「御所」に住まわれており、宮内庁のホームページによると、両陛下の住所は「東京都千代田区千代田 皇居 御所」となっている。ここはかつての徳川将軍の居城(江戸城)で、鳥羽伏見の戦いの敗北により幕府が明け渡し、明治天皇が明治元年(1868)年に京都から移った。

 115万4368平方メートル(東京ドーム25個分に相当)ある皇居の中で、お住まいの「御所」は、西に位置する、木々に囲まれた「吹上御苑」と呼ばれる一帯にある。皇居の外から見た地理関係でいうと、地下鉄半蔵門線の半蔵門駅から東に約600メートルの位置に建つ。「御所」の呼び名は、天皇の御座所(居室)から転じて、皇太子も含む方々の住居を意味するようにうなったという。

 一方、仕事(公務)や行事、儀式の多くは、同じ皇居内の「旧西の丸地区」と呼ばれる場所にある「宮殿」で行われる。

[天皇の国事行為]
1.国会の指名に基づいて、内閣総理大臣(首相)を任命すること(憲法第六条)
2.内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官(最高裁長官)を任命すること(同)
3.憲法改正、法律、政令および条約を公布すること(第七条)
4.国会を召集すること(同)
5.衆議院を解散すること(同)
6.国会議員の総選挙の施行を公示すること(同)
7.国務大臣および法律の定めるその他の官吏(国家公務員)の任免ならびに全権委任状および公使の信任状を認証すること(同)
8.大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を認証すること(同)
9.栄典を授与すること(同)
10.批准書および法律の定めるその他の外交文書を認証すること(同)
11.外国の大使および公使を接受すること(同)
12.儀式を行うこと(同)
13.国事行為を委任すること(第四条)

[皇室外交]
1.外国を訪問すること
2.国賓を含む、来日した外国賓客に会い、もてなすこと
3.駐日外国大使らへのさまざまな接待
4.諸外国への災害見舞いや各国の建国記念日の祝意など、各国の元首らと電報(親電)や手紙(新書)のやり取りをする
5.海外への赴任予定の大使や、任期を終え帰国した日本の大使らに会う(ねぎらう)

このうち、1の外国訪問と、2外国賓客のうち特に国賓のもてなし(国賓には宮中晩餐会が催される)

[地方訪問]
 三大行幸啓
 天皇に関するテレビや新聞などの報道で比較的多いのが、「天皇・皇后両陛下が○○県を訪問された」とか「○○の式典が○○県で行われ、天皇・皇后両陛下が出席された」といった地方訪問のニュースだろう。

 現在の天皇陛下は年に四回程度、泊りがけで東京以外の地方、つまりいずれかの道府県を訪問されている(御用邸での静養を除く)。これらの地方訪問には皇后さまも同行されており、宮内庁では天皇・皇后の地方訪問のことを「地方行幸啓」と言っている。これは天皇が外出することを「行幸」、皇后・皇太后・皇太子・皇太子妃が外出することを「行啓」ということから、天皇・皇后の外出は「行幸」「行啓」の両方をあわせたもの、つまり「行幸啓」というのである。

 地方訪問は年に四回程度ある。そのうち三つは毎年行われている以下の定例の行事である。
・「全国植樹祭」(四~六月ごろ)
・「国民体育大会(国体)」(九~十月ごろ)
・「全国豊かな海づくり大会(九~11月ごろ)

□今日の読書 ★★★☆☆

天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書) Book 天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書)

著者:山本 雅人
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2009年1月31日 (土)

「ゴーン道場 (朝日新書)」 カルロス・ゴーン

[部下のモチベーションを上げるための基本条件]
1.共感能力を磨く
2.コミュニケーションをとり、周りの状況を理解させる。
3.「あなたは重要だよ」と認める。
4.結果に公正な評価を与える。
5.組織の将来について、明確なビジョンを打ち出す。

[女性の部下の心を開くには]
 上司は常に自分から歩み寄るべきです。執務室で待ってるのは古いタイプのボスです。上司と部下はコーチと選手のようなもの。常に部下を観察し、うまくいっていないときは「相談に乗ろうか」と声をかける。上司がイニシアティブを取るんです。

[会社とクライアントの板ばさみになったら]
 裁量権を持たない営業マンがクライアントから難しい要求をされ、対応策を自分では決定できない場合、どう対処すればいいでしょう?

 まずお客様の要求がどのようなもなのか、それを把握しなければなりません。何か具体的なことを要求しているのなら、その裏にある本当のニーズを把握して十分納得したうえで、お客様の言っていることは実現可能なのか、どのように努力すれば可能なのかを判断するんです。まったく実現不可能であれば、率直に言うしかありません。あいにくどうしようもありませんと。

[中間管理職が、上司も部下もうまくコントロールするには]
 中間管理職の役割は単に上からのメッセージを下に伝えることではありません。ただ伝えるだけなら録音機があれば済みますよ。間に立つことでそのメッセージを豊かにする。それが、彼らが生み出す付加価値です。

-メッセージを豊かにするとは?

 例えば、上司から指示を受けたら、それをチーム全体の業績につなげるために、なぜその指示が出たのか、どうやって実行するかを、個人が理解できるカタチでかみ砕いて説明するのです。上司の言うことがわからなければ、その場で問い正さないといけません。中間管理職はしばしば、これができずにコミュニケーションの大きな弱点になっています。 というのも、現場には意欲があり、HOW(どうすればよいか)を知りたがっています。彼らをサポートしながら、上からの指示を実行計画に落とし、期待される成果を出す。大事なのは最終的に実行に移せるかどうかですからね。

[革新的で創造的なものづくりができる環境を作るには、第一に目的を共有することが大事です]

 目的は、明快でワクワクするものでなければならない。また、研究者や開発者にとって、プロジェクトに関わることが世の中や会社、チーム、自分自身にも違いを生み出す機会であることが必要。明快な目的と変革の機会。この二つが満たされれば、モチベーションはぐっと上がる。

「日産リバイバルプランを成功させるためには、どれだけの多くの努力や犠牲、痛みが必要となるか、私にも痛いほどわかっています。でも信じてください。ほかに選択肢はありません。そしてこの計画は挑戦するに十分な価値があるのです。

[嫁姑関係を良好にするには?]
 嫁と姑は非常にデリケートな問題ですね。私も経験があります。妻からみると、お姑さんは口を挟みすぎる。姑は、妻がきちんとやっていないと思う。夫は母親を愛していますから、妻が姑を批判するとイライラする。ここでもコツは教育と同じ。ほめるのと厳しくすることのバランスです。まずはプラスから入るのです。

 ほめる?

 夫に言うのです。「お義母は素晴らしいわ。頭もいいし、あなたのことをすごく愛しているのよね」と持ち上げつつ、「でも、ちょっと口を挟みすぐるのよ」と。そのとき、「私にも責任はあるんだけど」とフォローも忘れずに。母親の悪口や批判だけでは、夫は絶対に聞いてくれません。

□今日の読書 ★★★★☆

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著者:カルロス・ゴーン
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2009年1月27日 (火)

[苔の話―小さな植物の知られざる生態] 秋山 弘之

[信じがたいコケ屋の存在]
 「コナカブリテングタケ、レアもんですよ。かっこえー、かっこえー、これはレアだ」 ちょっと珍しいキノコを前にアルヤマさんが思わず生き物屋的な反応を見せていた。

 マルヤマさんの縄張りである、奈良に遊びに行くことにした。人付き合いの広いマルヤマさんのこと、せっかくだからと、知り合いの生き物屋に声をかけてくれた。おかげで、キノコ屋のみならず、虫屋、ヘビ屋・・とフィールドを行く一行は二十名以上にふくれあがる(いくら何でも声のかけすぎ・・・)これだけの人数、しかも集まったのが生き物とあって、行動にまるで統一性がない。一方で珍しいキノコが見つかったと言って喜んでいるかと思えば、片方では朽木の中からオオゴキブリが出て来たと言って、声をあげている。そんな集団の中に、一人、とりわけ僕の目を引く生き物屋がいた。腰に大工さんが使う道具入れのようなキャンバス地の袋をさげている。その袋の中には、何枚もの紙包みが入っている。ほかには水の入ったスプレービンと、お好み焼きのこてのようなガムはがし(駅などで、床に張り付いているガムをこそげ落とすのに使っているやつ)などが入っている。彼は、時々立ち止まっては、地面から何者かをむしり取り、それをルーペでじっと長めていた。それは、僕がはじめて野外でみる「コケ屋」の姿だった。

 虫屋や貝屋は何となくわかるとして、コケ屋という病の存在はご存知だろうか。

[ストーカーになってみた]
 「コケって、どうやって見たら種類がわかるんですか」
 かつて一度だけ、コケに詳しい人に聞いたことがあった。野外ではなく室内でのことだった。それも宴席での立ち話。ちょっと声をかけてみた、という程度のものだ。

 コケにも種類がある。それくらいのことは、さすがに僕も知ってはいた。コケの種類を識別するのは、とてもむずかしそうだ。似たような姿のものが多いし、葉っぱも小さくて、特徴がみにくそうだし・・・

 「胞子体とかがついているときじゃないと駄目なんですか?」
 後述するが、季節になるとコケの葉の間から胞子体と呼ばれるものが、姿を現す。俗に「コケの花」とも呼ばれているものだ。そんなコケの花みたいなものがついているときなら、多少は種類の特徴が現れるのかもしれない、そう、思ったのだ。

 コケは生き物屋の僕にとっても、身体性を伴う関係が結びにくい相手だと思っていた。しかし、コケは「まずい」ものだ。しかも「とってもまずい」らしい。この手があったか、と思う。口にするというのは、もっとも原初的な生き物とのふれあいの手段である。
 こんな話を聞いてしまったら、コケを食べてみたいという気持ちになるではないか!

[コケ屋という病にかかる]
 「オオカサゴケが、とりわけまずい」
 キムラさんはより具体的な話しもしてくれた。オオカサゴケって、どんなコケ? どんなところに生えている、どんなコケなのかさっぱり知らないけれど、その名前だけは、僕の中にしっかりとインプットされた。

「コケはね、標本を入れておく紙包みのほうが虫に食われても、コケ自体は虫に食われないんです。植物標本には、普通、防虫剤が欠かせないでしょう。でも、コケの標本には防虫剤なんて必要ないんです」

「コケは下等植物と言われてしまうけれど、大昔に出現して、その後長い間、生き残ってきたということでしょう」
 コケの長い進化の歴史こそ、すなわちコケのまずさの証かもしれない、なんて話にもなる。
 コケって、すごいかもしれない、と思ってしまった。

 やや専門的になるかもしれないが、ここで生物学的なシダとコケの違いを紹介しておこう。秋山弘之氏の『苔の話』(中公新書)には、両者の違いについて、次のような点がる。あげられている。

コケ(蘚苔類)には水を地面から吸い上げるための根がない。
コケ(蘚苔類)は水や栄養を運ぶ維管束をもたない。
コケ(蘚苔類)は水分の蒸発を防ぐためのクチクラ層が発達していない。

一言で言うなら、コケはシダに比べて、体の作りがいまだ原始的な植物だということだ。コケとシダを間違える・・・病の初期症状の頃には、こんな初歩的な間違いもつきものだ。

 蘚類と苔類の違いは、胞子体にある。すなわち胞子がしっかりるのが蘚類で、胞子体が柔らかいのが苔類だった。ナンジャモンジャゴケの所属に議論が起こったのは、発見当時から長い間、ナンジャモンジャゴケの胞子体がみつからなかったからだ。

 キムラさんが死にかけたのは、ナンジャモンジャゴケの産地の一つ、ボルネオ、キナバル山でのことだった。
「キナバル山で、ナンジャモンジャゴケを、三人で探してたんです。あそこはスコールが多いでしょう。探している最中、スコールにあったんです。沢沿いでナンジャモンジャゴケを見つけて、うまいこと採れて、満足して、さあ帰ろう・・・と。その途中で沢を渡るんですが・・・」

 その沢は、普段は靴がぬれる程度にしか水量がない。しかし、スコールの後である。三人のうち、キムラさんともう一人が石を伝って対岸に跳び移ったそのとき、濁流が急に押し寄せてきた。沢はその先で、断崖を落ちる滝になっている。流されれば命はない。最後の一人はまだ、沢の途中の石の上だ。
 「僕ともう一人が肩を組んで、僕が手を伸ばして、最後の一人を引っ張り挙げました。一瞬の判断です。それをしなかったら、死んでたでしょう。もしあと三分、余計にコケを採っていたら、三人とも日本に帰れんかったでしょう。

□今日の読書 ★★★★★



苔の話―小さな植物の知られざる生態 (中公新書) Book 苔の話―小さな植物の知られざる生態 (中公新書)

著者:秋山 弘之
販売元:中央公論新社
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2009年1月25日 (日)

[数字でみるニッポンの医療]読売新聞医療情報部

[日本の医療費は高いのか]
① 平均寿命 23年連続世界一
 日本人の平均寿命は、男性79.19歳、女性85.99歳(2007年)となり、過去最高を更新し続けている。女性は23年連続世界一で、男性はアイスランド、香港に次いで3位だ。戦後間もない1947年には、男性が50.06歳、女性は53.96歳だったので、60年かんでおよそ30年も延びたわけだ。

②医療費 年間33兆1276億円
 医療費の国際比較の際によく用いられる指標としては、国民所得のかわりに、「国内総生産(GDP)に占める医療費の割合」がある。
 欧州各国など先進30カ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)が、2007年7月に発表した「ヘルスデータ2007」から紹介する。全30カ国の平均は9.0%。トップはアメリカで15.3%と圧倒的に高く、以下スイス、フランス、ドイツ、と続き、日本は22番目だった。先進7カ国中では最下位だ。日本の医療費は決して高くない。むしろ安すぎるという主張の根拠はここにある。

④病院の実力格差 死亡率約2倍
 心臓の冠動脈バイパス手術について、実施件数が少ない医療機関の死亡率は、件数の多い医療機関に比べて約2倍も高い--
 日本胸部外科学会が2006年、全国の約21万件の手術データを解析したところ、こんな実態が浮かび上がった。これほど大規模なデータを基に、心臓外科手術の件数による成績格差が明らかにされたのは、初めてのことだ。

⑤医療事故死 年間2万6000人
 「医療事故」で死亡する入院患者は年間約2万6000人。国立保健医療科学院の長谷川敏彦・政策科学部長(当時)が2002年、初めてはじき出した医療事故被害の推計値だ。交通事故死の3倍を超える。

⑥命の値段、47歳で6106万円
 Aさんは47歳のサラリーマン。年収は700万円。平均的な労働者の収入に近い。医が痛むので近くの病院に入院したところ、手術はうまくいったが、その後の点検ミスが原因でなくなってしまった。Aさんの妻は損害賠償を求める民事訴訟を起こすことにした。依頼を受けた弁護士は、こんな数字を妻に示した。
 700万円×(1-0.3)×12・462 = 6106万3800円
 これがAさんの命の値段(遺失利益)である。

⑦救急患者 5割は軽症
 救急車で搬送されたり、夜間、休日など診療時間外に医療機関を受診したりする救急患者は、全国で1日6万5千人にのぼる。うち推定で焼く7500人が入院している。救急搬送された患者は、1995年に316万人だったが、2005年には496万人に増加した。このうち65歳以上の高齢者は95年の約100万人から05年には約220万人増え、高齢化が救急患者の増加の要因になっていることがわかる。

 総務省消防庁の調査では、救急搬送された患者の約50%は軽症だという。救急車を病院までのタクシー代わりに利用しようとする119番通報が全国各地で問題になっている。読売新聞社が全国の主要51都市の消防本部に実施したアンケートでは、「119番でかけつけると、入院用の荷物を持った女性が自ら乗り込んできた」「○月○日の○時に来て」と救急車を予約しようとする、救急車を呼びながら、実際はあらかじめ病院に診察の予約を入れていた。などのケースが報告された。風邪程度なのに、「救急車で行けば、早く診てもらえる」と思って119番する事例も確認されたという。

①75歳以上の新保険 月定額600円

「現代の姥捨て山か!」「年寄りは早く死ねということか!」
2008年4月から始まった新しい後期高齢者医療制度の評判がすこぶる悪い。
国の制度では65歳以上を「高齢者」とし、そのうち74歳までを「前期」高齢者、75歳以上を「後期」高齢者と呼んでいる。今回始まった新しい医療制度は、このうち75歳以上の「後期」高齢者を対象としたものだ。評判が悪いのは名前のせい? とばかりに、政府は急遽「長寿医療制度」と言い換えたものの、マスメディアもさすがにそんな行き当たりばったりの名称変更にはまともにつきあっておられず、カッコつきで後期高齢者医療制度(長寿医療制度)としたのがせいぜい。

 出だしからミソをつけてしまった新制度だが、とりあえず輪郭を説明すると・・・。
 75歳以上であれば全国民が加入する新しい公的医療保険で、これまでの老人保健医療の規模に準じて、年間給付費は08年度が10兆8000億円。そのうち税金が5割、健康保険組合からの支援金が4割、残り1割分は高齢者自身が負担する。

 まず、この高齢者のからの1割の拠出を巡って混乱がおきた。新制度では、収入によって差はあるとはいえ、75歳以上の全員が保険料を直接負担する。国の説明によると、総額は大きく変わらないが、人によって負担が減ったり人もいれば増えた人もいる。特に子供の扶養家族扱いになっていた人はそれまでゼロだったため新たな負担が生じた。
 年金からの天引きという強制的な徴収法であることも、騒動に輪をかけた。実は介護保険料も、従来から天引きされているのだが、昨今の「消えた年金」問題もあり、「年金の支払いはいい加減なくせに、保険料の徴収だけはしっかりやるのか」と、庶民感情を逆なでした。

 診療面での改革の柱とされたのが、患者が主治医を一人に決めて月600円(1割負担の場合)の定額制となる「後期高齢者診療科」だった。従来の診療は、診療や検査した分だけ治療費を徴収する出来高払いだが、この後期高齢者診療科には、簡単な検査などは定額料金に含まれる。専門医にかかる場合には、主治医からの紹介が必要となる。事実上の「かかりつけ医」制度となる。

②高齢者はどこへ? 老人病院38万床が半減へ
「社会的入院」「介護難民」といった言葉を、新聞などで見かける。治療の必要性がないのに入院している状態が「社会的入院」であり、病院を追い出されたのに老人保健施設などに入ることもできず十分な介護が受けられない人を、「介護難民」と呼ぶようだ。
 「医療費の無駄使い」と常に槍玉にあげられてきたのが、社会的入院だ。国は2006年度の医療制度改革で、38万床ある療養病床(いわゆる老人病院)を2012年までに15万床に大幅削減する計画をまとめた。老健施設や在宅介護への移行を図るというが、そんなにすんなりいくのだろうか?

③終末期医療 1ヶ月112万円

①がん生存率 前立腺だと99%
②がんサバイバー300万人、2015年には500万人
③がん対策の国家予算 年間534億円
④認知症患者 30年で倍増450万人
⑤出生率1.26の衝撃
⑥糖尿病患者 1870万人
⑦たばこによる損失、年間7兆3786億円
⑧自殺者3万人

 人口10万人当たりの自殺者数は、日本は24.0人、アメリカでは10.4人、イギリスは7.5人。日本より自殺死亡率が高いのは、ロシアやリトアニア、ベラルーシなど東欧諸国で、西側先進諸国では日本が最も高い。残念ながら、わが国は国際的にみても「自殺大国」と呼ばれて仕方がないのが現実だ。
⑨精神科入院ベッド数 35万床
 人口1万人当たりのベッド数を他の先進諸国と比べると、イタリアが1、アメリカが3、イギリスが7、韓国が8、フランスが10であるのに対し、日本はなんと28にのぼる。
⑩不妊カップル 今や7組に1組
⑪年々小さく生まれる赤ちゃん 女児は平均3kg切る。
⑫医師になるのにいくらかかるか 医学部初年度で1400万円
⑬検査大国 日本 世界のCTの3分の1が日本に。
⑭日本人は「薬好き」タミフル 世界の7割を日本で使用。
⑮抗生物質漬け MRSA比率71.6%(米国34.2%, 英国27.5%)
⑯新薬開発に1000億円
⑰抗がん剤 1回30万円
⑱後発医薬品 8割安


数字でみるニッポンの医療 (講談社現代新書) Book 数字でみるニッポンの医療 (講談社現代新書)

著者:読売新聞医療情報部
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2009年1月22日 (木)

[進化するグーグル (青春新書INTELLIGENCE)] 林 信行

[世界で最も楽しい職場]

 ペイジは同社が学んだ6つの教訓について次のように語った。

1.何よりも製品が大事
 ペイジがまずあげたのは製品の重要性だった。実際、今日のグーグルがあるのは、そもそもの製品「インターネット検索」機能が、他社のサービスと比べて群を抜いて素晴らしかったからに他ならない。
 製品とは企業と顧客との接点であり、まずはこれをよくしなければならないというペイジの訴えにはうなずける。

2.まずはポテンシャルを試せ
 どんなすぐれた製品をつくっても、それが必ずしも市場に受け入れられるとは限らない。一度、製品を投入してしまうと責任も発生し、後からそれが失敗だとわかり引っ込めようと思ってもなかなかそうできない。
 ペイジは事業を本格的に始動させる前に、その製品が本当に市場で受け入れられるかを十分に試せとアドバイスする。

3.(ウィルスのように広げろ)マーケティングは不要
 3つめは製品さえよければ、過大な広告費やマーケティング費用をかける必要はない、という教訓だ。実際、グーグル者は、一切、広告を打つことなく大きくなった。

4.明快な目標の設定と焦点の絞り込み
 ただ単に、できるから、おもしろそうだからといってバラバラに事業をやっていても、会社としてのまとまりも出ないし、成功もできない。ペイジは明確な目標の設定と焦点の絞り込みこそが重要だと言う。
 グーグルが手がける数々の事業は、まとまりがないようにも見えるが、じつはこれまでたびたび紹介してきたミッション・ステートメントによってまとめられていることは、先に述べた通りだ。

5.人々の暮らしに影響を与えよ
 「誰も気にしてくれないようなサービスをつくってもおもしろくない。それよりは人々が情熱を感じられるサービスをつくったほうがいい。人々がそれまでやろうとしていてできなかったことをやれるようなサービスをつくるのが望ましい」

6.大きなマーケットに狙いを定める
 ペイジはこう言う。
 「自らターゲットとする市場を絞りこんでしまわずに可能性を広げるべきだ。そうすれば成功したときには、その報酬が何十倍にもなって跳ね返ってくるし、それほど成功していなくてもなんとかやっていける」
 グーグルも創業2年弱でスペイン語、フランス語、イタリア語など10種類のヨーロッパの言語に対応、その半年後には日本語、韓国語、中国語を含む15ヶ国語に対応。さらに半年後には26ヶ国語に対応している。

[グーグルが発見した10の真実]
1. ユーザに焦点を絞れば、「結果」は自然に付いてくる
2.一つのことを極めて本当にうまくやるのが一番
3.遅いより速い方がいい
4. ウェブでも民主主義は機能する。
5.情報を探したくなるのは机に座っているときだけではない。
6.悪事を働かなくても金儲けはできる。
7.世の中の情報量は絶えず増え続けている。
8.情報のニーズはすべての国境を越える。
9.スーツがなくても真剣に仕事はできる。
10.すばらし、では足りない。

[グーグル翻訳]
 従来のほとんどの翻訳ソフト/サービスは、特定言語を解析するプログラムと、解析した得た意味を特定言語として構築するプログラム、そして対訳の辞書といったもので構成されていた。
 つまり、プログラムが文章の内容の理解を試みた上で、それを辞書を引きながら別の言語で再構成するというステップだ。
 これに対してグーグル翻訳は、インターネット上の無尽蔵にあるWebページの中から、異なる言語で、同じ内容について記述しているWebページを索引化し、それを参照しながら対訳の例を見つけ出す。
 簡単に言うと、グーグル翻訳は、何か適当な文章を打ち込むと、インターネット上から似た文を他の言語に翻訳した事例を検索してきて、その事例で使われている訳語を表示してくれるというわけだ。
 この方法だと、他社の翻訳サービスが得意とする汎用的な文章の翻訳は苦手だが、一方で他社の翻訳サービスが苦手な専門用語や特殊な言い回しをもっとも的確な形で翻訳してくれることが多い。
 たとえば「Spirited Away」と入力して「千と千尋の神隠し」、「小泉ハ雲」と入力して「Lafcadio Hearn」と翻訳してくれるのはグーグル翻訳くらいだろう。

[ひとり勝ちの真の理由]
 大型データセンターの構築はどの企業も抱えている問題で、マイクロソフト社はロシアに、そしてサン・マイクロシステムズ社は鉱山跡地の地下に建築する予定だ。そしてグーグルは、なんと大型タンカーにコンピュータを詰め込んで、海岸から10kmほどの沖合に置こうと考えているようだ。電力は波力発電、風力発電、潮力発電で供給し、コンピューターの冷却には海水が利用される。(もしかしたら、固定資産税などの税制的にも有利かもしれない)
 もしかしたら、数年後には、パソコンというのは、ただの通信機能を備えただけのディスプレイに置き換わり、コンピュータ本体は、どこかの沖合に浮かぶタンカーのなか、という時代が来るのかもしれない。 

□今日の読書 ★★★★★

進化するグーグル (青春新書INTELLIGENCE) Book 進化するグーグル (青春新書INTELLIGENCE)

著者:林 信行
販売元:青春出版社
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2009年1月20日 (火)

[青山娼館] 小池 真理子

「おやじ、別に女好きだったわけじゃないんだと思う。ただ単に、そうやってめちゃくちゃをやっていたかっただけなんだよね。そのくせ、母の他に女がいなけりゃ、生きていけなくて・・・」
 うん、と私は言った。「わかるような気がする。お父さんにとっては、道具みたいなもんだったんだね、女の人が

「道具?」

「なんて言うのかな、自己愛? 自分しか愛せない人だったんじゃないの? お父さんにとって、女っていうのは、自分で自分を愛するために必要な、ただの道具でしかなかったんだよ。それが欠けたら、お父さんんが理想とする形は壊れちゃって、いびつなまんまに終わっちゃうから」

「ていうか、それを言うなら、女っていうのは、おやじにとってパズルのピースみたいなもんだったのかもね」と麻木子は言った。「家に連れ込む女がいて、初めて、おやじの人生のパズルが完成したんだ、きっと」

 エッセンシャルオイルのオレンジとシナモンの香りが鼻腔をくすぐった。私はその香りの向こう、ブドウ色の壁紙に囲まれた部屋の奥に、笑顔でこちらを向いているマダム・アナイスの姿をみとめた。

 あの瞬間は今も忘れることができない。どういうわけか、わたしはマダムの眼鏡の奥に光る美しい目を見た瞬間、救われた、と思ったのだ。まだ採用されるかどうかもわからないという時に、失うものが何もなくなったようなじぶの人生を最後に救ってくれるのは、ここにいるこの女であり、この場所以外、あり得ない、とわたしにはあらかじめわかっていたような気がする。

 私が中に入って行くと、マダムはにっこり微笑み、「お坐りになって」と言った。患者を診察室に迎えた女医のような、淡々とした落ち着いた口調だった。面接に来た女を値踏みしているような様子は見えなかった。

 私は口を開いた。「ひとつ、つまらないことを聞きます」
 「どうぞ」
 「素朴な疑問、と言ってもいいかもしれません。どうしてわたしが・・・ここで雇われることになったんですか」
 野崎は鳩のように目を丸くし、大仰な表情を作るなり、呆れてみせた。「不思議なことを質問されるのですね。マダムがあなたを採用したからですよ。それ以外、何の理由もないのだし、あなたもそれをご存じでしょう」
 
 ややあって彼は、ふうっ、と軽く息を吐いた。「コルティジャーナ、という言葉を聞いたことがありますか」
 「コルティジャーナ?」

 「昔、イタリアのヴェネツィアは快楽都市と呼ばれていました。そのヴェネツィアに実際に存在していた高級遊女がコルティジャーナです。彼女たちに求められたのは、教養と美しさと気品で、まさにあなたが今、口にしたことと似ているのですが、その場合の教養というのは、何も大学院を優秀な成績で卒業したとか、海外の著名な大学に留学経験があるとか、五ヶ国語が喋れるとか、そういったこととは無関係です。本当の教養というのは、それを感知する能力のある人間にしかわからい。

 「悲しいということっていうのは、案外簡単に乗り越えられるものよ。問題はね、そうではない感情と戦わなくてはならなくなった時」とマダムは言った。

□今日の読書 ★★★★☆

青山娼館 Book 青山娼館

著者:小池 真理子
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2009年1月18日 (日)

[官邸崩壊 安倍政権迷走の一年] 上杉 隆

[錯誤]

 当時多くの者が、中曽根は安部晋太郎を選ぶものだと信じていた。寸前まで疑わない政治記者もいた。中曽根が別の人物を選んだ時、その記者は何かの間違いだとさえ思ったほどだ。その後、この悲劇の政治家は他界する。
 中曽根の前に座っている安部は、二日前の参議院選挙で歴史的大敗を喫した52歳の若い首相である。自民党はこの選挙によって、結党以来初めて、参院第一会派の地位を失うとこになった。
 最悪の選挙結果について軽く触れた中曽根が、まず助言したことは人事であった。
 有能な人材を起用する。個性ある面白い人間を抜擢するのも一つの手だ。自らの信念に基づいて豪胆にやったらいい--。

 そして、現在の日本が国家的な危機に直面していることを語り、安部の先祖について言を及ぼす。
 困難な時ほど、政治家の本領は発揮されるものだ。あなたの祖父である岸信介元首相もそうだった。日米安保という重大な危機をまさしく命がけで突破した。その孫であるあなたにできないはずがないーー。

 ちょうど同じ頃、すぐ近くの自民党本部の建物では総務会が開かれていた。そこは安部に対する批判の嵐が吹き荒ぶ場でもあった。

 約1か月前、参院選を目前に控えた安部は党首討論の席上でこう述べる。
「今回の参院選は、実績と政策を支持してもらうための選挙です。私と小沢一郎さんのどちらが首相にふさわしいかということについて国民の考えを聞く選挙です」
 この直前、自民党は極秘の世論調査を行っていた。結果は惨憺たるものだった。あらゆる指標が自民党惨敗を指し示している。選挙区、比例区、都市部、農村部ーー。もはや民主党に太刀打ちできる術はない。そう思われた。だが、阿部官邸はそうしたデータの中に僅かな光明を見つけ出した。

 安部と、民主党代表の小沢の個人好感度を比較した場合のみ、「36%対16%」と支持の数字が逆転していたのだ。藁にもすがる思いで、安部鑑定はこのデータに飛びついた。つまり、小沢と安部の個人対比をさせるという戦況戦術を採用することに決めたのである。

 だが、皮肉なことにこれが仇となった。総務会ではこの点ばかりを追求される。口火を切ったのは元財務大臣の谷垣禎一だった。谷垣の、今回の選挙をしっかり統括するべきだ、という号令を元に、本官房長官の加藤紘一、元自治大臣の野田毅、元防衛庁長官の石渡茂ら閣僚経験者が続く。批判は激しさを極めた。誰もが安部の責任の取り方について疑義を呈する。

 参院会長、幹事長など党幹部がそろって引責辞任を表明したのに、なぜ安部だけが辞めないのだ。原因を作ったトップが責任を取らないのでは、国民に対して説明がつかない。そもそも「安部か小沢か」と言って国民に選択を迫ったのは総裁自身ではないか。もはや選択の余地はない--。
 激しい議論は一時間近く続いた。結局10人以上が安部の政治責任を追及する。総務会長の丹羽雄哉は、すべての発言をメモに留め、怒号の飛び交ったその場所を後にした。向かう先は首相官邸であった。

[静かなる爆弾]

 2006年秋、一部の年金記録の行方が分からなくなっているという情報は、すでに安部官邸に伝達されていた。当時は、些細な事柄と受け止められる。件数も多くない。きっとデータ上のミスだろう。しょさん野党の一部が騒いでいるだけだ。そうやって片づけられる。
 
 年が変わって2007年2月14日、衆議員予算委員会で民主党の長妻昭が「消えた年金記録」を質した時ですら、官邸に焦りの色はなかった。担当大臣の柳沢もまるで無自覚であった。
 社会保険庁は、本来業務で忙しいのだ。そうした中で処理をしている。年金記録を調べろと言っても簡単にはできない相談だ。
 長妻からの再調査要求に対してもこんな調子であった。あまりにも鈍い反応。実際、柳沢は、自信の「産む機械」発言の釈明に追われて、「年金」どころではなかったのである。

 3か月後の2007年5月、納付者を特定できない国民年金や厚生年金の納付記録が、5095万件以上あることが発覚する。信じ難い数字が明らかになり、それが独り歩きを始めると、マスコミがこのテーマに跳びつく。それは狂乱とさえいえるものだった。来る日も来る日も、年金問題が報じられる。
 初めは小さな新聞記事だ。それが雑誌に取り上げられて、やがて大きな見出しになる。すると様子を窺っていた他の新聞も、改めて記事を出稿する。今度は前回より大きな扱いだ。こうした活字媒体の動向を見て、テレビが興味を示す。まずは報道番組で事実関係だけを伝える。もし視聴者の反応が良ければ、次は情報番組だ。朝夜、休日を問わず、洪水のように同じテーマが繰り返される。終わりは決まっていない。視聴率のグラフの右肩が上がり続ける限り、このテーマは続くのだ。
 
 この5月、消えた年金記録問題は、こうした流れを経て、一躍ワイドショーの主役に躍り出たのである。安部官邸は、完全にお手上げ状態となる

 一方、安部官邸はまだ戦闘態勢に入っていなかった。より正確に言えば、すでに戦場に立たされていたのだが、その認識すらなかったのである。

 政権には驚くべき楽観主義が横行していた。誰も目前に迫っている危機に気付かない。いや気づこうともしない。手柄は進んで求めるが、危機は意識的に遠ざける。安部鑑定の習性がここでもいかんなく発揮される。こうして結局安部自身が、戦闘の最前線に押し出されるのであった。
 半年間にわたって装備した武器を携える長妻、その攻撃の前に無防備で立つのが安部という構図---.

□今日の読書 ★★★★★

官邸崩壊 安倍政権迷走の一年 Book 官邸崩壊 安倍政権迷走の一年

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2009年1月15日 (木)

[ 菜根譚の読み方] ひろさちや

[奢者富而不足。何如倹者貧而有余。能者労而府怨。何如拙者逸而全真]

 贅沢をする人は、いくら裕福であっても満足できない。これでは、倹約を守っている人が、たとい貧乏であってもいつも余裕があるのには及ばない。才能のある人間は、一生懸命に苦労して、それで他人の怨みを買うありさまだ。これでは、無能といわれる人間がのんびりとやっていて、しかも自分らしさを保っているのにおよばぬではないか。
 
 前半は、仏教の教えである「少欲知足」--欲望を少なくし、足るを知る心をもて--に通ずる。後半は、いわゆる「器用貧乏」に相当するか。有望な人間ほど、気苦労が多いものである。

 だから「菜根譚」は、あまり才能を見せびらかすなと助言している。俗諺にいう、「能ある鷹は爪かくす」と。これども、逆に考えれば、エリートは気苦労が多いものである。大衆はのんびりとしている。洋の東西を問わず、そのようになっている。エリートがのんびりしようなどと考えるのは、それこそ虫がよすぎるのである。

 富貴や名誉は、それが徳望によって得られたものであれば、野山に咲く花のごとくで、自然に枝葉が伸び広がる。それが功業によって得られたものであれば、鉢植えや花壇の花のごとくで、あちこち植えかえられたり、捨てられたりする。もしそれが権力によって得られたものであれば、花瓶の花のごとくで、根がないものだから、しぼんでしまうに時間はかからない。

「菜根譚」の人間世界の観察眼は、さすがに鋭い。名誉や富貴は、いろんなかたちで得られるものだ。その得られ方によって、それがどれくらい持続するかわかる。職場において、上に立つ人間を、このような視角から評定してみるとおもしろい。彼の持っている権力が、どれくらい持続するかが占える。逆に、その持続度によって、彼の持つ権力の性質がわかるともいえる。

[未だ就らざるの功を図るは、已(すで)に成るの業を保つに如かず、既往の失を悔ゆるは、将来の非を防ぐに如かず。]
 まだ完成せぬ仕事の利益を計算するより、すでに完成した仕事の持続を考えたほうがよい。過去の過失にくよくよするより、将来の失敗を防ぐほうがよい。

[人之過誤宜恕、而在己則不可恕。己之困辱当忍、而在人則不可忍]
 他人の過ちは許すべきであるが、しかし自分の過ちは決して許してはならない。自分の苦難はじっと耐えるべきであるが、しかし他人の苦難は見過ごしてはならない。

[持身、不可太皎潔なるべからず。一切の汚辱穢をも、茹納し得んことを要す。人に与するは、大だ文明なるべからず。一切の善悪賢愚をも、包容し得んことを要す。]

[山が高く険しいところは、木が生えないが、谷川のみぐるあたりは草木が密生する。水の流れの激しく急なところには魚がすまぬ、水のよどむ深いところには魚やスッポンが群れをなしている。このように孤高を誇り、狭量で性急な気持ちは、君子たる者が深く戒めたいところである。

□今日の読書 ★★★★★

中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚 Book 菜根譚の読み方 

著者:ひろさちや
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2009年1月13日 (火)

[私の男] 桜庭一樹

[花とふるいカメラ」

「ねぇ。かぜ、ひいてない?」
「これぐらいで、ひかないだろ」
ほそい指から投げ捨てられた煙草が、小さく光りながら窓の向こうに落ちていった。
「そりゃあ、淳悟は丈夫なほうだけど。でももう若くないんだしさ」
 つとめてつめたく聞こえる言い方をして、淳悟に背を向けた。電気をつけようと、天井からたれさがる紐に手をのばしたとき、背後からぞくり、と雨の匂いがした。それに取り囲まれて、こわばって動きを止めた。

 背中から抱きしめられて、髪の中に、淳悟の鼻が押し付けられた。むかしとおんなじ、抱きしめ方。からだの奥で、あの泡がたくさん立った。鳥肌が立つような嫌悪感が増していった。
「・・・それなら、あたためてくれよぉ」と低い声がした。吐き気と、目眩で、立っていられないような気がした。こういうのは、もういやだ。ほんとうに、もういやなのに・・・。だけどどこからか・・・こころの、遠くから、いとしい気持ちがこみあげてきて、わたしはつい「淳悟・・」とつぶやいた。名前を呼んだら、囚われた。彼の長い腕の中でからだを回して、正面から、この疲れた男の首のしわに手のひらをはわせた。
 離れられない。
 そばにいたい。
 もう、離れないといけない。
 でも、できるだろうか・・・

 額に、鼻が押し付けられた。ゆっくりと顎を上げると、暗闇の中で目があった。淳悟はむかしと同じで、黒くて切れ長の瞳をしていた。また嫌悪感が増した。いやだ。きらいだ。でも、嫌いだから離れられる、と安心した瞬間に唇がふさがれて、こころの中が、ふるびた、男への思いで再びいっぱいに満ちた。
 二人して、畳の上に落ちた。そのまま抱き合って、じいっとしていた。どちらも動かなかった。雨のような湿った、男の体臭が増した。痩せたからだは、乾いてどこもカサカサしていた。

「愛してるよ、花」
 わたしは唇をかんだ。そんなこと、わざわざ自分から言ったことなかったのに。こんな夜に限って、この男は。玄関の外で、洗濯機ががたがた、がたがたと鈍い音を立てていた。
「この世で、おまえを愛している男は、俺だけだ。血が繋がってる。他人の男にそれを求めたらって、無理だ」
「でも、べつに、男の人になんか愛されなくってもいいの。女って、安定さえしてたら、ちゃんと生きていけるものよ」
「・・・嘘だろ、それは」
はなから信じていないような、乾いた笑い声が響いた。
「そんな女、いるもんか」

「おとうさん?」
「・・・なんだよ」

 眠っていたはずの淳悟が、ゆっくりと目を開けた。切れ長の瞳が、わたしをやさしく包む。
 色のない薄い唇が、悪戯っぽい微笑みをたたえている。目の下にひろがるたくさんのしわ。お、おとうさん、とう一度つぶやくと、だから、なんだよ、と笑った。涙が出てきて、布団の中で養父にしがみついた。カサカサと痩せたからだは、どこも乾いて、かたかった。淳悟が唇を開いて、色の悪い、長い舌をのばしてわたしの顔を舐めた。涙をふき取ったのだ。淳悟が舐めてくれるから安心して、声をたてずにずっとなき続けた。長い舌。ふざける牡犬のようだ。おとうさぁん。呼んでも呼んでも、やがて淳悟は返事をしなくなった。ただだまってわたしを舐めまわし続けた。熱い舌。唾液の匂い。しがみつくとははり、さびしい、雨の気配がした。おとうさぁん。おとうさぁん。

「長かったなぁ、花。思ったよりずっと、長くかかった」
「うん・・・」
「一緒ににげたんだよな。こんなに遠くまで、あれから、もう八年か」
 風にいまにもなぎ倒されそうで、わたしの足がふらついた。
 おそるおそる見上げると、淳悟の横顔はあの夏の夕方のように、暗く陰っていた。低い声で、吐きすてるように、
「おまえ、もう、俺を忘れろよ」
「なに言っているの、淳悟。忘れたりしないわ・・・」

 雅楽の調べが鳴り出した。三三九度の盃を交わして、指輪を交換した。わたしは披露宴もふくめてほとんどを新郎に任せっきりだったから、なにをどうやったらいいのかわからなくて、そのくせ、淳悟のほうばかり見ていた。小声で美郎にささやかれるたびに、あわてて機械仕掛けみたいに動いた。

□今日の読書 ★★★☆☆

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2009年1月12日 (月)

[伝説のプロ野球選手に会いに行く] 高橋 安幸

[犠牲バントは勝っているときにやるもんじゃない 千葉茂]

 昭和25年、千葉さんは105四死球という記録をつくっている。これは王貞治が38年に破るまで最高記録だった。
「2-3からは絶対にヒットを狙わないんですよね。ヒットを狙っても確率は3分の1、でも、フォアボールなら5割の確率で塁に出られるという。そのほうが得だと。で、調べてみたら、確率は本当にそうなっているんで驚きました」
「ただね、本当の犠牲バントの意味はね、負けているときに、追いつくために、一塁走者を二塁に送る手段。負けているときやで。それも一点差。これが原則なんだよ。勝っているときにやるもんじゃない」
「以前、吉田義男さんが、『勝っていても、さらにしつこく追加点を取るためにやる』なんておっしゃっていましたが。
「しつこいというより、ケチな作戦やな、それは。はっはっはっ」

[なんで400も勝てたのか、真実を言ってみようか? 金田正一]

「なんで400勝できたのか、本当のことを言ってみようか? 強い体をもって努力したから、だよ。勝つ材料、つまり体がなかったれ勝てない。だから、体そのものの素質と、その人の自己管理が行き届き、節制をすれば勝てる」

「長嶋さんが大学4年のとき、お蕎麦屋さんで攻略法を練っていたというのは本当ですか?」
「本で読んだんだろう? 蕎麦屋にいたのは事実だ。ただな、ワシが蕎麦屋のテレビで長嶋のホームランを見た事実と、4三振はワシのなかでは結びつかない。結びつけたのはその本を書いた人であって、ワシが『長嶋を意識してテレビを見ていた』と書かんと、ストーリーが進まないからや」

[フォークボール=杉下茂、ということは以前から頭に刷り込まれている。[元祖]であることもわきまえていた。]

 今時、フォークは日常的な変化球になり、高校生だって投げている。つまりは、事実上、フォークを教えられる野球人はほかにもいるのだし、[元祖]の出番はないものと決め付けていたのだ。それでも松坂は、いや、東尾修監督は、[元祖]に助けを求めた。

「では、杉下さんのフォークと今のフォークは、軌道も落ち方もまったく違うものと考えていいのでしょうか?]

「違うね、うん。伸びるんだよ。投げ方、投げる場所に応じて、落ちないでフーッと伸びる。ナックルと一緒だね。」
 ボールの軌道を手の動きで示してくれたのだが、実感できない。「伸びる」というのは、バッターの胸元に近づく、という意味のようでもある。そういえば、青田さんは(まず、いったん速球のようにグーンとホップしてくる)と書いていたが...
「ボールの回転はまったくないわけですか?」

「ない。回転がないから、風が吹くまま、気まぐれに変化して、揺れながら飛んでいくんじゃないかな。僕のフォークは、調子のいいときは3段ぐらいにわたって落ちた。振れながら落ちて行って、バッターの手元でさらに2段階に落ちていく。こう落ちて、こう落ちて、最後はドーンと落ちる」

 杉下さんの腕の動きに合わせて目で追いかけると、それはまさに「魔球」としか表現できない途轍もなくシュールな軌道に見えた。

[エンジンを締める力が強ければ、カーン!と飛んで行く 中西太]
 「ワシは1年目、泳ぐようなバッティングでライナーを打っとった。それで2年目に入る前、巨人の名ショートやった平井三郎という人にある程度、ボールを引き付けて打つにはどうすればいいか教わった。そのためにね、ベースのような布団のようなものを股に挟んで、股を締める練習をした。エンジンのバランスが完成しときゃ、泳ぐようなことはない。ほんで、雨が降ったら、リストの力を付ける練習しとった。下と上の力がうまく合わさったらごん! と振れる」

「先日、イチローが股間部分を鍛える練習をやっているのをテレビで見ました」
「そうやろ? 若松もそうや。アイツはこんな太い足をしとる。『ならばその足を生かせ』と言った。理屈を言えば、内転筋やな。ココを鍛えていいエンジンをつくる」

「昔の人はよく、『引きつけて、高いところから最短距離で打つ』と言った。言葉で言うたら簡単やね。だけどこれ、インコース打つだけの打ち方や。90度に、広角に打ってええんや、ベースボールやから。ボールが行きたい方向に打てばええのや。逆らわずにな。だから、いいバッターはムダなところで力みがない」

「力みがないというのは、先ほどの、力が抜けたように見える状態と同じですか?」
「そうそう、逆に、力むちゅうことはイコール、関節が止まるわけやね。まぁ、ガイジンなら少々力んでも、足の力と腕力で行ける。しかも、リーチがあるから遠いボールも届く。ワシらはリーチがないんだから、いかに効果的なポイントまでボールを引きつけるかと。ひきつけるということは、その間に体制を崩してはいけない。そのために、真ん中のエンジン、内転筋の力、これを制御する。それに日本人の体は向いているんだよ」

 「あの、85年、阪神が優勝しましたな。あのとき、219本のホームランを記録しましたが、チームの犠打も141でセリーグで一番多かったんですよ。でも、バース、掛布、岡田、真弓にはバントを1本もさせてません」
 この年、3冠王に輝いた3番のランディ・バースが54本塁打。4番の掛布雅之が40本、5番の岡田彰布が35本、そして1番の真弓明信までが34本を記録している。
 「やっぱり、彼らにつなぐため、走者をスコアリングポジションに進めるために、2番の弘田、あるいは吉竹や北村、木戸とか平田とか、ピッチャーを含めてね、ものすごくたくさんバントさせました」

 クリーンアップにつなぐ2番は弘田澄男、吉竹春樹、北村照文が交互に起用され、記録を見ると、この3選手合計で50犠打。7番の平田勝男はチーム最多の25犠打で、1試合4犠打の日本記録までつくり、保守の木戸克彦は8番で上位打線へのつなぎ役を担っていた。

 「そうやって、たえず、相手バッテリーにプレッシャーを与えた。そのことが219本という数字につながったと僕はおもいますね」
「送りバントによるプレッシャーがピッチングに微妙な影響を与えていたと。その回数が非常に多かったということですね。」
「ハイ。やっぱり野球は攻める競技ですから。バントがものすごく攻撃の幅を広げてくれたと。足を使うよりもひろがりましたよ、あの年に限っては」
「送りバントによるホームランのお膳立てのようなものですね」
「そうです! ピッチャーの心理にじわじわと働くお膳立てができてたんとちゃいますか」
 
□今日の読書 ★★★★☆

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著者:高橋 安幸
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2009年1月 9日 (金)

「これから」夏目房の介

[金子光晴の老い方]

 金子光晴「衆妙(しょうみょう)の門」(桜井滋人による聞き書き)という本がある。
 大学を出たばかりの私は、これで金子光晴のファンになった。詩や文のほうはほとんど知らないが、この本にあらわれる金子老人に惚れたんである。
 もういきなり最初から最後まで女遍歴の話。猥談。きわどい話。そればっかし。
 当時私がもっていた老人というイメージからは想像もつかない、びしゃびしゃと音をたてそうな生々しい口調。それでいて下卑たいやらしさのない堂々たるスケベ。こんな老人が目の前にいたら、思わず一日中でもお話をうかがってしまうに違いない。

 人に聞いたところによると金子老人、初対面のときはムスッとしていかにも偏屈。こりゃかなわんなと思っていると、いきなりスケベの話を始めるのだという。写真で見るかぎり、眼光鋭い、いかにも偏屈そうな老人であった。そりゃたしかにドギモを抜かれるだろう。

 たとえば百戦錬磨の三十代の女性に、あっちの達人について聞く部分はこんな調子だ。<<赤坂の太鼓もちの名人がいたてえの。これは長襦袢でそろりと入って、ああはじまったな、と思うともう何もわからなくなっちまうんだって>>

 うーん、すごそうである。で、その女性がそのあとでいうんだそうである。
<<でも、ああいうの技巧がすぎて、あとで嫌なものよ。やっぱりあなたのようなのがいいわ>>
 うふふ。なるほど。柳家三亀松(みきまつ)(って誰も知らないか)。歳をとると、こんなことも話せちゃうのか、と初めて読んだ頃は思った。

 あこがれのジジイ群像を並べてみてわかるのは、私のあこがれる追い方にモノサシになりうる共通項がある、ということだ。

 その一。老いの自然な芸を感じること。すなわち彼の存在自体が面白いこと。
 その二。後悔や未処理な感じを与えないこと。後悔や未処理なことは、ふつうに人生を送っていれば、誰だってきっとあるにはちがいないが、もはやそれとは別の心の居場所ももっている感じがするということだ。
 この心の居所については、かすかながら推測がつく。後悔や未処理なもの、冷や汗ものの実人生があればあるほど、しまいにはそれをどっか別の場所から他人事のように見ないと人間をやっていけなくなる。そんな、実人生や人間そのものを、遠くから眺めざるをえない場所である。

 漱石は理不尽にこわい父親だった。父もそうで‥‥、若い頃の私も‥‥、だから今の長男もそうらしい。因果応報とはこのことか。トホホ

□今日の読書 ★★★☆☆

Korekara

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2009年1月 7日 (水)

「運慶の数珠―仏師の子に生まれて」栗原 照久

 祇音にとって十年ぶりに見る奈良の街は、平氏の蛮行で惨憺たるものだった。東大寺大仏殿はもちろんのこと、中門から南大門は跡形もなく焼け、その間の東塔と西塔は崩れ落ち、興福寺に至っては中心伽藍の金堂・講堂・東金堂・西金堂はおろか寺の周辺のほとんどが焼き尽くされ、僧や仏師の生活と教学の場さえ満足に確保されていなかった。

 夫の行隆はまず東大寺の大仏をどのように再建するかで苦慮していたが、祇音の心は裏腹で、かねて噂に聞いていた円成寺にある運慶の大日如来が気になっていた。数ある彫物師の中で数珠玉に彫られていた「運」と「慶」の文字を使う仏師はこの運慶しかいないことを祇音は知っていた。風のように渡り歩く白拍子の舞姫の頃に出逢った阿古丸が立派な仏師となって作り上げた最初の作品をどうしても見たかった。

 重源上人と夫の打ち合わせの隙を見て、祇音は一人牛車を東大寺の北東およそ三里(約十ニキロ)のところにある円成寺に走らせた。懐かしい柳生への路であった。かつて、とぢと共に祇王や祇女を連れて歩いた山路である。

 お忍びではあるが、東大寺大仏復興の長官の妻が円成寺を訪れたのであるから、寺から特別な計らいがなされたことは、言うまでもない。祇音は最初に寛遍(かんへん)僧正がつくった五月の青葉がざわめく庭園を見てまわり、それから本堂に上がって本尊の阿弥陀如来を拝み、帰りがけに多宝塔を覗いてみた。しかし、この多宝塔こそ本当は祇音が一番先に見たい場所だった。その多宝塔の中には、あの男の作った大日如来が座していた。

 祇音は小柄な大日如来の姿を見るなり、おもわず鳥肌が立った。
 ほんの少し丸みを帯びてはいるものの、十八年前の自分がそこにいたのである。髪の櫛の入れ方といい、眉の描く線から下に伸びた鼻梁と小さな鼻翼は十六のときの自分の顔であった。首にかけられた胸飾りは覚えがないが、上腕に巻かれている腕輪(ひせん)は、祇音が好んで付けていたものに似ていた。少々鳩胸気味だと、とぢに笑われた張りのある硬い胸や、細く締まった腹部は、あの男に見せた若き日の舞いに明け暮れた自分の身体であった。祇音は涙が溢れそうになった。

「阿古丸・・・」
 祇音は思わず運慶の名を口走った。
 祇音は頬を伝う涙を拭わずにいた。
---あの男の胸の中には、まだ私がいる。
と祇音は確信していた。
---逢いたい、あの男に一目会いたい。そして、詫びねばならない。
と祇音は思った。

「わしはよくわからんが、定慶は、春日神社に捨てられていた孤児と聞いたが・・・父の子ではないのか」
 運慶は、はっきりと自分の抱いていた長年の疑問を言った。
「そのようなことは、噂になったことがありますが、まったく存じません」
 運慶の父親の醜聞を、運慶を目の前にして言うには憚られると思ったのか、国成は、明言を避けた。さすがに、何の根拠もない噂をまことしやかにふれて回るような軽率なことはできないという自制心が古参の国成に働いた。

「そうか」
 運慶はぽつりと言って、茶碗を床に置こうとした。
「ただ、阿古丸様は、その昔、白拍子として舞いを得意としたとか。それで、定慶殿の散手の面をご自分でお付けになり、武舞を披露したと聞き及びました。」
「何! 阿古丸様が、白拍子だったと・・・」
 運慶は驚きのあまり、茶碗をうまく置くことができず、転がしてしまった。中には白湯が残っていなかったので、転がった茶碗を国成が押さえ、自分の脇に置いて返事した。
「はい、そう聞きました」
「そうか。それは、知らなかった」

 運慶は、じっと一点を見つめたまましばらくの間動かなかった。

仏師略系図

康尚---定朝---覚助---頼助---康助---康朝---康慶--+-------運慶---+---湛慶
                        |                    +---康運
                         |                    +---康弁
                         |                   +---康勝
                         |                    +---運賀
                         |                   +---運助
                                                    +-------定覚--------覚円
                                                +-------定慶
                                                +-------快慶---+---行快
                                                                   +---長快
                                       +---栄快
                                            

□今日の読書 ★★★★★

運慶の数珠―仏師の子に生まれて Book 運慶の数珠―仏師の子に生まれて

著者:栗原 照久
販売元:文芸社
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2009年1月 5日 (月)

「これからを面白くしそうな31人に会いに行った。」 近藤 ヒデノリ,米田智彦,サトコ

[思いついた事を即やってみようという勢いを大切にする]

米田 お二人は雑誌のスタッフ募集から出会い、映画を撮るようになったそうですね。結成した頃はどんなものを撮ろうと話していたんですか?

高橋 その頃は先のことは全くしゃべらずに、「今はこれが撮りたい。じゃあそれを撮りに行こう」って、それだけで動いてましたね。そこに意味なんかなくても、ただ本当に「レモンを金属バットで打ってみよう」と言ってたら、本当に打ってみたりして。

米田 衝動があったら、即やってみようと(笑)。
高橋 はい。それが途中から、なんとなくストーリー性や感情を帯びてきたりしていった感じですかね。最初はそんなもんでした。

米田 でも思いつきの部分と、自分の中で時間をかけて構築していく部分はどう折り合いをつけてるんですか?
 
高橋 まず、勢いを優先します。やっぱり、やってみたいという気持ちが本当の部分じゃないですか。その本当をどう見せるかって言う嘘を塗り固めていく漢字ですかね。そこは絶対崩さないっていうのが僕らのスタイルですね。

米田 「ある朝スウプは」が狭いアパートの部屋一つで物語が構成されているのが凄く面白かったんですよ。

高橋 あの作品に数千万とか予算があったら、あの部屋から出て、風景を描いたり、余計な事をやっていたかもしれないですね。ですから作品を撮る金額っていうのは、本当に10万、20万あればいいのかなって思います。ただ、それをどうやって劇場公開や、映画祭まで持っていくのかと考えると、そこからのお金が多少必要なのかなって。

米田 「14歳」では当時の自分を思い返したり、今の14歳を創造したりしながら脚本を書いて作っていったんじゃないかと思うんですが、リアルと虚構のバランスについてはどう考えていました?

高橋 元々「14歳」の脚本はリアリティーを追求していなくて、廣末君が演出すれば、自然に人間の生々しさが出てくるだろうと予想しながら書いていたんです。でも、「ああいう人間が実際にいるのか?」って議論になったら、もう全世界の映画の中の登場人物がそうなのか?っていう話になってしまう。観る人の感情を揺り動かすための嘘を追求しただけなんです。

[書き込みがある方が本の価値はあがる?]

 次に、内沼が行った「WRITE ON BOOKS」から「encounter」に共通する、本への「書き込み」について聞いてみた。「古本の価値って、(古本屋の)ブックオフの仕組みが象徴的なんですけど、「きれいかどうか」っていうのが一つの重要な基準なんですね。書き込みのある本というのは、どんなにいい本でも古本では価値が下がってしまうんです。だけど、「書き込み」って実は面白かったりするんですよね。なんでこの人はここに線を引いたんだろうとか。誰かの手を通っている、しかもその人の考えが入っている事で、元の本よりも価値が上がっているという事もあるんじゃないかなと。極端な話、妻夫木聡が読んだ本だったら、それが証明されていれば・・・。書き込んだ人が無名な人だったとしても、面白いことが書いてあったら、それは凄くオリジナルなんですよね。「WRITE ON BOOKS」は、(書き込みがされた)その瞬間、世界に一つしかない本になるっていう事を伝えたいと思って立ち上げた企画です。

 
 このインタビューの後、僕は横浜・馬車道のブックルーム「encounter」に行ってきた。Bank Artの向かいのビルの一室。壁にずらりと並んだ本棚。すべての本にカバーがされていて中身は見えない。その中の一冊を手にとると、以前に読んだ人の感想などが挟みこまれている。一冊の本とその読者を介して出会うという、全く新しい「本屋」体験だった。

 その後、内沼は自身の「本とアイデア」のレーベル「numabooks」を設立。アパレル、カフェ、ホテルなどのブック・コーディネイトをメインに、色々な業界で企画・ディレクションの仕事を手がけている。'06年には、TSの展覧会にも参加してもらい、会場を訪れた人のおすすめ本がその場で購入できる参加型本屋を作ってもらったり、彼の企画した「INDEPENDENT FESTA」にも参加させてもらったり‥‥‥今後も様々な形で共犯したい仲間である。
 
□今日の読書 ★★★★★

これからを面白くしそうな31人に会いに行った。 Book これからを面白くしそうな31人に会いに行った。

著者:近藤 ヒデノリ,米田智彦,サトコ(TOKYO SOURCE)
販売元:ピエ・ブックス
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「ほつれとむすぼれ」 田口 ランディ

[顔というマンダラ]
 私はまたしても、母の顔に注目した。
 顔が変わっているのだ。点滴の浮腫みはさらにひどくなっていた。だけど、その浮腫んだ顔の中に表情のようなものが感じられる。いやおうもなく感じてしまう。なにかの意思、あるいは生きている力のようなもの。

 いったい自分が母の顔から感知しているものの正体はなんなのだろうか。私の思い込みなのだろうか。だけど私は母の顔から確かになにかを読み取っているのだ。ただ、いったい何を読み取っているのか自分でもわからない。

 倒れてから二ヶ月が過ぎたころ、母を訪ねると、母は相変わらず病院のベッドに横たわって宙を見据えていた。目を開けていた。そのころには眼の白濁はずいぶんと取れて、もとの黒目が戻りつつあった。眠っているときは眼を閉じるようにもなっていた。
「お父さんったら、いまごろになってお母さんのありがたみに気がついたみたいだよ」
と、私が母の耳元で囁いた。

 すると、母の右目の目じりと口元がわずかに引きつった。本当にわずかではあったけれど、それは母が照れ隠しをするときの表情の癖で、まぎれもなく母の個性が顔のわずかな神経を動かしていたのだった。
 

[アレクセイと泉のこと]
  2001年の年末に「アレクセイと泉」という映画の解説文の以来を受けた。
 依頼を受けた頃は、疲労のために風邪をこじらせて体調も絶不調の時期で、原稿も差し迫った締め切りのあるもの以外はほとんど書いていなかった。

 初日、なんてことだ。寝てしまった。実に淡々とした映画なのである。
 舞台はベラルーシ共和国の小さな村。チェルノブイリ原発事故で放射能汚染され、六百人の村人のほとんどが村を去った。そして五十五人の老人と一人の若者が村に残った。村は地図から消された。この村には泉があった。百年もの間、人々を潤してきた泉。村の周辺は放射能に汚染されているのに、なぜか、この泉からは全く放射能が検出されなかた。。
 物語みたいだ。でも、ドキュメンタリー映画である。

 二日目、また最初から観る。
 チェルノブイリ事故で汚染された村の映画だから、暗い社会派の映画なんじゃないかな、とふと不安になる。ごろごろとリビングの床暖房の上に寝転びながら、最初に映し出されるロシアの雪原を見て、「うわー寒そうだなあ‥‥」と思った。

 三日目、さらに最初から観る。
 このときになって、ようやく私は「きれいな映像の映画だなあ」ということに気が付く。たぶん映画館のスクリーンで観ていたらすぐに気づいていたんだろう。
 ようやく三日目にして、最初から最後まで集中して鑑賞し、映画の世界に没頭した。そしたらとても不思議なことが起こった。

 この映画の全編に登場するのはブジシチェ村の泉である。ラストシーン近く、泉の水が画面に大きく映し出される。
 水はふつふつと湧いていた。その湧き出ずる水の、なにかが私にいきなり転写されてきたのだ。
 これは言葉に置き換えたら、希望とか、勇気とか、慈愛とか、そういう陳腐なものになってしまうのだけど、よくわからないなんらかの「力」だった。「力」であることだけは確かだった。

 気がついたら悲しくないのに涙が流れている。妙なこともあるものだと思った。
 私はなぜ泣いているのだろう。
 私は、生きる力みたいなものが自分のなかに転写されたのを感じてしまった。
 それで、観終わってからすぐさま「転写される水の力」というタイトルの原稿を書いた。
 それにしても、奇妙な気がだなあと思った。

□今日の読書 ★★★☆☆

ほつれとむすぼれ (角川文庫) Book ほつれとむすぼれ (角川文庫)

著者:田口 ランディ
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2008年12月31日 (水)

このミステリーがすごい! 2007年のミステリー&エンターテインメントベスト10 2008年版

[このミステリがすごい 国内10位]
1 警官の血(上下)佐々木譲
2 赤朽葉家の伝説 桜庭一樹
3 女王国の城   有栖川有栖
4 果断      今野敏
5 首無の如き祟るもの 三津田信三
6 離れた家    山沢晴雄
7 サクリファイス 近藤史恵
8 楽園(上下)  宮部みゆき
○9 夕陽はかえる  霞流一
○10 X橋付近   高城高
○10 インシテミル  米澤穂信

[このミステリがすごい 海外10位]
○1 ウォッチメイカー ジェフリー・ディーヴァー
○2 復讐はお好き?  カール・ハイアセン
3  TOKYO YEAR ZERO  デイヴィッド・ピース
○4 物しか書けなかった物書き ロバート・トゥーイ
○5 悪魔はすぐそこに D・M・ディヴァイン
6  路上の事件    ジョー・ゴアズ
7  狂人の部屋    ポール・アルテ
8  デス・コレクターズ ジャック・カーリイ
○9 ジョン・ディクスン・カーを読んだ男 ウィリアム・ブリテン

□ 今日の読書 ★★★☆☆

 このミステリーがすごい! 2007年のミステリー&エンターテインメントベスト10 2008年版 このミステリーがすごい! 2007年のミステリー&エンターテインメントベスト10 2008年版
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2008年12月27日 (土)

「 波打ち際の蛍 」 島本 理生

[俺も、君のことが知りたいです。ずっと恋人はいなかったんですか。]
 一瞬だけ視線を外へ投げると、サイドミラーに映った私の顔は、頬のあたりがかすかに強張っていた。 
 私は前に向き直って、答えた。
「付き合ってた人はいましたが、だいぶ前に別れました」
「その後はずっと、一人?」
 はい、と答えた。さっきから流れているBGMが気になる。男の人なのに透明感があって、空気に溶けるような声。音楽は繊細な電子音だけ。ちょっと好きな感じの

「なにをしてた人だったとか、聞いてもいい?」
 私はいったん思考を止めて、動揺しないように気をつけながら
「私も、あんまりくわしくはないんですけど、大学に通いながら、時々、雑誌に小説の評論みたいなものを載せてて」
と言うと、彼はちょっと驚いたように
「かなり頭の良い人だったんだな」
と言った。
「そう、ですね。頭の回転が速くて博識な人でした。・・・ごめんなさい。もう、あの人の話はやめてもいいですか。 ちょっと気分が」
 バックミラーに映った彼の瞳は、つかの間、反応を決めかねたように瞬きを繰り返していたけれど、ちょうど高速道路の本線に合流しかけたので、
「分かった。もし君がはなしたくなったら、またいつか聞かせて」
と彼は言いながら速度を落とし、私は心の中で、面倒臭い女でごめんなさい。と謝った。
 
 信じられないんです、と私は首を振った。強く振った。
「道端でいきなり殴られたり刺されたりしないことを。ホームに立って背後から突き落とされないことを。知らない人が、意味もなく私を蔑んだりはしないことを。キスやセックスが、私を殺しはしないことを」

「私は、蛍のことが好きだから、大事にさせてほしいです」
顔を上げると、彼は食べる手を止めたまま、言葉を失っていた。
「蛍?」
「え、いや、だってそんなの、いつから」
「ずっと、そういうふうに思ってました。思ってる」
 そう言いながら、今の話し方はすごく蛍に似てた、とふいに気付いた。
「ごめんなさい、いつも唐突で」
 彼は、いや、とまた口ごもってから、ゆっくりと息を吐いた。
 そして滲みだしたような笑顔を見せた。
「嬉しいです。ありがとう」
 私も微笑んでから、ゆっくりと息を吸った。
 なんの無理もなく、呼吸するように彼を好きだと言えたこと。ひとを好きだと思えたこと。もうきょうだけで何日目か分からにけど泣きそうになりながら、私が私に感じている、まだこのからだの五感は死んでない、そのことを何度も繰り返し確かめて喜びを感じていた。

□ 今日の読書 ★★★★☆

波打ち際の蛍 Book 波打ち際の蛍

著者:島本 理生
販売元:角川グループパブリッシング
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2008年12月25日 (木)

「強欲資本主義 ウォール街の自爆」神谷 秀樹

 [アメリカ経済はなぜ衰退したのか]
 ダンテも嘆く「ウォール街の地獄篇」
 「フィレンツェよ。成り上がり者と、にわか成金どもが、おまえの中に傲岸不遜の風を生み出し、その為におまえは嘆き苦しんでいる」(ダンテ『神曲』地獄篇)

 ウォール街にいると、まことに人間の強欲さが手に負えないところまで来ていると痛感する。
 私はウォール街で16年前に創業した、小さな投資銀行を経営している。後に詳述するが、金融業に関わって30余年、ウォール街で働くようになって四半世紀が過ぎようとしている。
 長い間、金融業に携わったうえで、私自身信条としてきたことがある。それは、「金融マンは実業を営む方たちの脇役に徹するべきだ」ということだ。

 ところがアメリカの金融業界、とりわけウォール街の現状は、まったく様相を異にしている。
 例えば、近年の世界的な金余りによって、プライベート・エクイティー投資(ファンドにより企業の経営権を握る投資)が潤沢な資金を吸収して巨大化した。07年夏ごろには、実業を営む企業の「企業買収」の、実に三分の一がこれらのファンドの手によるものとなった。
 しかも、その買収資金のほとんどは「借りた金」によるものだ。つまり、金融資本が「主役」となってしまい、本来であれば「主役」であるはずの実業を営む企業(産業資本)は支配される側、すなわち「資本家の奴隷」となってしまったのである。
 そして、金融資本は、自らが買収した企業から、利益を絞りとれるだけ絞り取ってしまうのだ。彼らは「その事業」には興味を持ち「その事業」を行うために投資するのではない。
 事業は何でもよい。「純粋に金融収益を上げること」、「安く買って高く売って儲けること」、「お金がお金を生み出すこと」こそが、彼らの最終目的なのである。

 金融資本の本来あるべき姿、すなわち「顧客第一の原則」は、どこかに雲散霧消してしまった。顧客も含めた「市場」で「いかに儲けるか」しか考えなくなった。顧客はもはや証券の仕入れ先、あるいは売り先にすぎなくなってしまい、「いかに利益を抜くか」がすべてになってしまったのだ。
 今や大金融機関の中心に座っているのは、「経営者の相談に乗るバンカー」ではなく、「スクリーンを見て証券の売買をするトレーダー」たちである。このような浅ましいことを続けていけば、世の中(我々が生きている経済社会)がボロボロになってしまうのは目に見えていた。ここ数年のウォール街の姿は、まさに冒頭に掲げたダンテの言葉がピッタリとあてはまる状況だった。

□今日の読書 ★★★★★

強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書) Book 強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書)

著者:神谷 秀樹
販売元:文藝春秋
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2008年12月23日 (火)

「脳を活かす勉強法」茂木 健一郎

[脳はドーパミンと強化学習が好き]
 たとえば、プロ野球オリックス・バファローズの清原和博千選手は、以前、西武ライオンズから読売ジャイアンツに移籍した時、思うように成績が上がりませんでした。それは「ジャイアンツに入ることが目的だったからではないか。念願のジャイアンツに入団することで目的が達成されてしまい、次のステップに進めなかったからではないか」という話を、脳科学の大家だった故・松本元先生に聞いたことがあります。清原選手ほどの超一流のプロフェッショナルでも、そういうことが起こりかねないのです。
 
 僕自身は、いい学校に入ることを目的に勉強したことがないので、いまだに勉強するのが嫌にならずに続いています。むしろ、楽しくてしかたがありません。
 
 学生時代に勉強している最中も、これで学年何位になるとか、これで希望校に合格できるとか、そういうことは気にしていませんでした。ただただ、脳がずっと興奮している状態にあって、楽しいなと思ってやっていただけなのです。
 だからといって「必ず俺は上へ行けるはずだ」と自信を持っていたことは一度もなく、むしろ、「もうだめなのではないか」と不安でたまらなくなることもありました。しかし小学校の頃から、一貫して勉強に「喜び」を感じ、それ以降もずっと「学習の喜び」の原理に基づいてやってきたのです。そうしたらいつの間にか、学年一位という結果も付いてきました。

 勉強を厭わない脳をつくる。僕自身は、人生のある段階でこれを獲得できたように思います。そして、いまこの瞬間もこれだけでやっています。極端な言い方ですが、これさえあれば、この先もずっと、一生やっていけるような気さえします。

[突き抜ける感覚は絶対クセになる]
 ここでひとつ注意しなければならないのは「できることを続けても脳は喜ばない」ということです。ドーパミンは、できると分かっていることをなし遂げても放出されません。できるかどうか分からないことに、一生懸命になってぶつかり、そして苦労の末それを達成した時に大量に分泌されます。「えっ、私ってこんなこともできたの?」と意外性が強ければ強いほど、喜びが大きくなる仕組みなのです。

 僕の高校の時の英語の勉強法がまさにこれでした。
 普通、英語を勉強するといったら、まずは英単語を覚える、英文法をマスターする、という感じだと思います。しかし、そんな勉強方法には、僕はまったく興味を持てませんでした。僕の脳を喜ばせてくれる勉強法ではなかったのです。
 それでは、どんな方法をおったのか。僕は延々と、そして徹底的に英文を読み続けたのです。たとえば、僕は「赤毛のアン」が好きだったので、シリーズすべてを原書で読みました。それまで本格的に英語の本を読んだことはなかったのですが、無謀にも僕は辞書さえひかずに読み始めたのです。

 いまでもそのときの感覚を覚えています。最初のうちは読んでいても、苦しくてしかたがありませんでした。脳の中のボルトとナットがうまくはまらない感じで、とてももどかしい感覚でした。でも、それを我慢して何冊か読み続けていくうちに、ある瞬間に突然フッと楽になり、すらすらと英語が読めるようになっていったのです。
 きっと、脳の中で劇的な変化が起こっていたのでしょう。そのあとは「英語など恐るるに足らず」という感じになりました。

 苦しければ苦しいほど、その後の喜びは大きく、より強化される。これが脳のメカニズムです。この「苦しい」状況を何とかして突き抜けることは、とても重要なことです。

[茂木流・勉強の極意]
 ☆まずはたくさんの量にふれることが読書には必要
 ☆読書の質は読み方ではなく「集中」するモードで決まる
 ☆ネット上には、ありとあらゆる知識、情報がある
 ☆時代の変化にいち早く気づき、自分なりに勉強している人が輝ける
 ☆自分にとって本当に必要な情報を見極めることが大切

 ☆勉強とは、自分の脳の特性を見つけること
 ☆自分の脳の調子(コンデション)を把握する
 ☆絶好調の時のことを脳に覚え込ませる
 ☆自分の欠点、弱点を直視し修正する
 ☆「失敗」が、知的なハングリー精神を培う
 ☆「失敗」や「逆境」から学び、自分の力に変える

□今日の読書 ★★★★☆

脳を活かす勉強法 茂木 健一郎
配信元:電子書店パピレス
提供:@niftyコンテンツ

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2008年12月21日 (日)

「多摩とっても上等なランチ」

[三笠会館 聖せき亭]
 シシリー産の塩でいただくのがおいしい和牛ロースステーキコース「桐」
 ランチは1680円からだが、お勧めは和牛ロースステーキのコース「桐」(3990円)
和牛ならではのジューシーな味わいが存分に堪能できる。
TEL 042-337-2738(ランチは16:00LO)まで。
京王聖跡桜ヶ丘SC C館2F

[エル・ダンジュ]
 フレンチ
 オーナーシェフの豊嶋誠司さんの繊細で美しく、何よりもおいしい料理がいただける。ランチは1890円~だが、コースで味わうならBランチ(2650円)がお勧め。2人以上ならメインとデザートはそれぞれ分けて注文したい。ランチの醍醐味が一層味わえるだろう。
TEL 042-357-4080
桜ヶ丘カントリークラブすぐ

[和・NAGOMI]
 おすすめは、やはり魚の旨みがすばらしい北海道産。主に週末あたりが北海道産のネタを使うため、そこを狙ってくる常連客もいるほどだ。
ランチは840円~と採算度外視の価格設定もうれしい限り。
「なごみ」1575円、寿司10貫、汁物、サラダ、デザートが付く。
「ちらし寿司」945円、10種類ぐらいのネタがぎっしり。
TEL 042-674-6039
東京都八王子市上柚木1821

[きっちんなかやま]
 裏の畑や山で採れる山菜や自家栽培の野菜を使うなど特製の家庭料理は、創業以来変わらない味。直伝のデミグラスースに浸した「カントリーハンバーグ」「ポークの生姜焼き」など昔懐かしいメニューに加え和食も並ぶのが特徴。
 おすすめは1990円の月替わりランチコース
TEL 042-676-3409
東京都八王子市上柚木205

□今日の読書 ★★★★☆

多摩とっても上等なランチ Book 多摩とっても上等なランチ

著者:オフィスクリオ
販売元:メイツ出版
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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2008年12月19日 (金)

「恋のかけら」著者:唯川 恵,朝倉 かすみ,井上 荒野,山崎 マキコ,小手鞠 るい,南 綾子,山崎 ナオコーラ,豊島 ミホ

[無人島 小手鞠るい]
 -みずきって、根っから本が好きなんだね。
 -そうなの。本に囲まれているだけで、幸せなの
 -どうして、どこが、そんなに好きなんだ?
 -たぶん、本のなかにだけ在るものが、好きなんだと思う。
 -本のなかに在るものって、いったいどんなものなんだ?
 -それは・・・・

 子供の頃から、本が好きだった。
 読むのも見るのも触るのも。匂いも、佇まいも、形も色も重さも。
 図書館も、書店も、同じように好きだった。本のある場所でなら、何時間もひとりで過ごすことが出来た。書棚から書棚へ、時間をかけて歩き回って探し、読みたい本に巡り合えたときの喜び。そして、それを買う、という行為から得られる高揚感。

 斉田明典--年は、わたしよりもひとまわりほど上。住所は、図書館から歩いて15分ほどのところにあるマンションの一室。
「何冊か、リクエストしたい本があるんです。ここに収蔵されていないものばかり」
「新刊ですか? それとも、これから出る本?」

「それもありますが、古いものもあります。」
「もしもお急ぎなら、新刊は書店で買われた方が」
 早いと思いますが、と、言いかけている私の声に、彼の声がぴたりと重なった。
「残念ながら、買いたくない本ばかりなんだ。読む必要に迫られてるんだけど、買って、手元におきたくない本、とでも言えばいいのかな。だから、図書館というか、俺達が払ってる税金で買ってもらって、読めないかと思ってる」
「はい」
 思わず、背筋を伸ばししてそう答えてしまったのは、彼の視線が、わたしの瞳を捉えて、話そうとしなかったから。ひとたび捕まえられたら、二度と逃れることはできない--そんな獰猛さと、たとえ手にいれたとしても、気に入らなければ即座に切り捨ててしまう--そんな冷酷さを併せ持った、簡潔で、優雅な、男の視線。
「ではこの用紙に、必要事項を記してくださいますか」
「本が到着しましたら、お電話させていただいて、よろしいでしょうか?」

「襟野さん、お気遣いどうもありがとう。確かに、うちのカミサンが電話に出て、うっかり本のタイトルを耳にしたら、そりゃあ大変な騒ぎになるよね。本当にありがとう。いい子なんだね、きみは」
 いい子といわれて、私の頬は耳まで染まっていた。嬉しかったんだと思う。無邪気に、無防備に、喜んでいた。その時、わたしは29歳。

「絶対に離さない。誰にも渡さない。みずきは俺のものだ」
何度も何度もそう言って、彼は私を抱きしめてくれた。

 あじさい屋敷の窓の外で舞い踊る、淡いピンクの花びらのように、明るい黄色の木の葉のように、数え切れないほどの愛の言葉を、彼は降らせてくれた。
 私の体の上に。人生のなかに

 -ねえ、明典さん。わたしたち、もっと早く出会えていたら、良かったね。
 -うん。あと十年早く、出会いたかったなぁ、みずきと
 -あと十年早く、会えてたら、一緒になれた?
 -もう、一緒になってるじゃないか。さっきから何度も。
 -じゃあ、あともう一回だけ。

 ある日、散歩の途中にふらりと立ち寄ったいう風にして、別れはやってきた。

□今日の読書 ★★★★★

恋のかけら Book 恋のかけら

著者:唯川 恵,朝倉 かすみ,井上 荒野,山崎 マキコ,小手鞠 るい,南 綾子,山崎 ナオコーラ,豊島 ミホ
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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2008年12月17日 (水)

「時が滲む朝」楊 逸

時が滲む朝 Book 時が滲む朝

著者:楊 逸
販売元:文藝春秋
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[民主]
 テーブルを囲んで、椅子に座ると、文学サロンに相応しく優雅になった気分だ。文学だけにとどまらず、時事に関することや様々の議論で盛り上がることもあったが、意見の相違があると、ついむきになってしまう。

「最近噂に聞くけど、北京で民主の壁ができて、民主化するとかの話しさ・・」誰かが切り出した。
「それ、本当ですよ。高校の同窓生で、北京の大学に行ってる友達の手紙に書いてあったよ」範亮が応えた。
「民主化ってなんですか?」
「つまり、中国もアメリカのような国にするってことだよ」

「アメリカみたいな国? どうして?」
「今、官僚の汚職が多いからでしょう。アメリカみたいな民主主義になれば、役人は全て選挙で選ぶから、汚職はありえないし、腐敗もしないんだってさ」範亮 はいかにもよく知っているかのように言った。

「帝国主義で資本社会のアメリカって、どこよりも腐敗しているんじゃないの?」
「俺には、資本主義だの、民主主義だの、帝国主義だの、さっぱりだけど」
「僕もわからないけど、でも雑誌とかを読んでいると、凄く怖そうな国だと思ったよ。アメリカに留学した女子学生が、半年後には下着モデルになってたってさ」
 みんながあれかれと取り沙汰し始めた。

「授業のときに甘先生もチラッと触れたけど、中国も民主主義が必要で、監督する野党がなければ、官僚の腐敗は何時までも根絶できないってさ」範亮は大きい声で言った。

「甘先生の言うことだから間違いないよ」
「やっぱりよくわからないよ、アメリカが良いって言っても、誰かみてきたわけじゃないでしょう?」

[北京へ]
 文学サロンの活動で、学生たちはまた食堂に集まった。メンバーがそろったところで、背が低く目立たない範亮は存在感を強調するかのように席をたち、手を叩いて、みんなの注意を喚起した。
「北京の大学に行っている友人からまた手紙が届いた。官僚の汚職と腐敗に反対して、大学生は天安門広場で集会をして、ハンストなども行っている。国家興亡、匹夫有責。僕らにも応援して欲しいと要請しているが」息を荒げる範亮は、みんなが囲んでいる大きなテーブルに手紙を叩きつけて、ゆっきりと座った。

「あ、それなら、甘先生は二年生を率いて、先週から市政府広場で集会を始めたって。知りあいの先輩も行ったけど」
「僕も通知を待っていたけど、勝手な行動は取れないしさ」
「多分僕ら一年生には勉強に専念させたいから、甘先生はあえて知らせなかったんじゃないの?」

[動乱?]
「昨日、ある新聞が、今回の学生運動を動乱と決め付けた。我々は決して社会主義に反対しているわけではないことを、わかってもらうために、この記事を撤回するように求めたいと思います。明日は、集会の後にデモ行進も予定していますので、今日はここで解散して、帰ってしっかり休んで、明日元気いっぱいでがんばりましょう。」甘先生は、声のトーンを少し上げて締めくくった。

[天安門広場]
 市委書記は市政府を代表して挨拶した。
「・・・学生諸君の憂国憂民の熱情をありがたく受け止め、国への提案や意見などを真摯に検討して、自由民主の中国を目指し、わが人民一同頑張りたいと、我々も同じ気持ちであります。長い間デモや、ハンストまで行ってきた学生諸君は、心身ともに衰弱していることと思います。今日から各自の大学に戻り、少し休養してから、一日も早く授業が再開できるよう努めていただきたい。これからのことを我々に任せて、学生諸君は学業に専念して、将来のわが国の富強のために、頑張って、学を以って報国するよう・・・」

 甘先生は学生リーダーを呼び集め、臨時ミーティングを開き、疲れや病気のため、学生たちの体力はもう限界に達していることにかんがみて、一時解散と決定した。

 各自の部屋に戻ってすぐ眠りにおちた。ドアを叩く荒々しい音にも気付かないほど熟睡していた。
 顔をしきりに叩かれて、ようやく目を醒ますと甘先生だった。黒く日に焼けた顔が解散の時よりもやつれて、輝いていた目も、暗く重い何かに覆われていた。寝ぼけて朦朧とした学生たちはひたすら先生の言葉を待った。

「走行部隊が天安門広場に突入した」喉の奥に怪獣がいるような声だった。小さく重く低く、爆弾よりも強い衝撃だった。

□今日の読書 ★★★★★

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2008年12月15日 (月)

「乳と卵」 川上未映子

[卵子]
 というのは卵細胞って名前で呼ぶのがほんとうで、ならばなぜ子、という字がつくのか、っていうのは、精子、という言葉にあわせて子、をつけてるだけなのです。

[シーツ]
 を干して戻って来て、なんか食べなと思ってはみても、冷蔵庫には飲み物と葱とドレッシング、味噌つらいしかなく、開き戸の内側にはびっしり玉子だけが並んであって、プラスチックの棚にもパックで十個入りのがまるまる残ってあるだけで、先週に、まだ先に買った分が残ってあることをうっかり忘れて重ね購入したのを思い出して、どっちか腐ってるやろかと日付いりの紙切れを見れば、戸の内側のは賞味期限は明日まで、パックのほうも明日までで、しかしこのような大量は今日明日での消費は無理、わたしはパックの方を取り出して、流しの脇に置き、生ゴミの袋をつくらないとな、と思い、卵の捨て方はいつも割って中身をほかすか、そのまま投げ入れるかそっと置くのかがようわからない。などと思いながらとりあえずお昼は緑子を連れて家を出て、駅前で何か食べようと歩けば、その道々に、緑子とおなじ年くらいの子供らが数人めいめいの声をあげながら全速力で駆けてきてそれから前後へ抜けて行った。

□今日の読書 ★★★☆☆

乳と卵 Book 乳と卵

著者:川上 未映子
販売元:文藝春秋
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2008年12月13日 (土)

「地図男」 真藤順丈

[地図貼]
 国土地理院院長承認、同院が第五刷として発行した29cm×19cmの関東地域大判地図貼。モスグリーン地に金文字でタイトル徽章の入った、百科事典のようにいかつい装幀の、市井ではあんまり見かけることのないタイプの地図帖だ。
 その296枚にわたる地形図、市街地図、主要都市拡大図といった縮尺をとわないほぼ全頁に、所有者の記入がある。

 意味不明の×やマーキングだけではない、うねうねと縦横無尽に軌跡を描く矢印、そのすきまを埋め尽くす書き込み、書き込み、書き込み。虫眼鏡をつかって書いたような細かい文字で、意表な密度のハンドライティングがなされている。

 もちろん学習用の白地図ではないので、印刷をぬって書き込める余白には限界がある。そこで各頁に、紙面がわしゃわしゃ生やした毛髪みたいに無数の付箋が貼られ、キャプションがつけられている。そこへまた書き込み、書き込み、書き込み。付箋はポスといった的なものからルーズリーフの切れ端になったりすれし、ファーストフードの包装紙や、バラした煙草のケース裏に書き込まれたものまで挟まれていたりもする。混沌と錯綜し、ときには重ねが気までされた記入はどれも--物語の断片だ。

[地図男について]
 俺は地図帖ほどに、語る言葉をもたない。俺はその素性をまるで知らないし、本人に質問をぶつけてみたところで、満足な答えが返ってきたためしがない。
 外見の印象からいえば、年齢は不詳、三十代前半にも四十代後半にも見える。季節をとわずシャツやコートを重ね着しているこれど、不潔感はない。肌は黒ずんでいないし髭もたいてい剃られていて、衣服同様こまめにも体を洗っているようだ。

 膨大な物語数をはらんだ地図帖の所有者/記入者にふさわしい、雑念や妄想を混沌とまとった奇人、という印象はパッと見からはほとんど受けない。
 とにかく神出鬼没である。

[そろそろ語ろう]
 この物語を語ろう。舞台は東京都の西域。奥多摩の山間部からななめに流れる多摩川を境にすると、北東側の平野が「武蔵野」--立川市、昭島市、小平市、国立市、府中市、調布市などなど、西東京の主要都市がここに載っている--それに対して南西側は? かつてこの南西の流域は秋留郷に属していて、旧五日市町にある古社も阿伎留神社と呼ばれていたことから、1995年の秋川市&五日市町合併のタイミングで、対岸の武蔵野に対して多摩川南西岸の平野が<あきる野>と命名され、あきる野市が生まれたんだ。
 でね、天の川じゃないんだけどね。
 この物語は多摩川を境にその運命を隔てられた、男の子と女の子の物語だ。

□今日の読書 ★★★☆☆

地図男 地図男

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2008年12月11日 (木)

「次々に投入される探査機が明かす太陽系のすべて」

[水星]
 ゆがんだ楕円軌道をもつ最も内側の惑星

 1975年、マリナー10号による観測で、水星に磁場が発見されました。地球の磁場は、中心部にある核で起きている対流が原因だと考えられています。しかしサイズの小さな水星では、内部が冷えやすく、冷えてしまうと内部が固体となってしまい対流がおきないはずです。水星になぜ磁場が存在するのか、そのなぞはまだ解明されていません。

Photo_3  2004年8月に打ち上げられたNASAの水星探査機「メッセンジャー」は、2008年1月、水星に接近しました。このとき、メッセンジャーは、1200枚以上の画像を撮影することに成功しました。

   水星最大のクレーターであるカロリス盆地は、推定されていたよりも大きく、直径約1550キロメートルであることがわかりました。

[金星]
 濃硫酸の雲
 金星の自転スピードは非常に遅く、1周するのに243日もかかります。また地球とは逆まわりに自転しています。
 金星には二酸化炭素を主成分とする厚い大気があります。大気による室温効果のため、金星表面の温度は400度Cをこえる灼熱の世界です。また表面付近の気圧は90気圧にも達しています。高度45~70キロメートルには、金星全体を覆うように濃硫酸の雲が浮かんでいます。濃硫酸の雲は太陽光をよく反射するので、金星はとても明るく輝いてみえるのです。

 金星には、ほかの地球型惑星にはみられない独特の地形も多く存在しています。そのうちの一つが、「コロナ」とよばれる地形です。コロナは巨大な円形構造で、直径は数百~1000キロメートルにおよぶものもあります。最大のコロナは「アルテミス」とよばれるもので、直径2000キロメートルです。

 金星大気の謎を探るべく、現在ヨーロッパの金星探索機「ビーナス・エキスプレス」が観測を続けています。

[地球]
 大量の水があり、生命が存在する惑星。

[月]
2007年9月には日本の「かぐや」が打ち上げられ、多くの成果をもたらしています。また2007年10月には中国の月探索機「チュンア1号」が打ち上げられ、月の画像の撮影にも成功しました。そのほかにも現在、アメリカやインドなどでも月探査計画が進行中です。

[火星]
 Photo_4 ダイナミックな地形が広がる赤い惑星
 火星には巨大な山がいくつかあります。中でも最大のものは「オリンポス山」で、ふもとと頂上の高低差が21キロメートル、すそ野の直径は600キロメートルもあります。直径600メートルとは、北海道がすっぽりと入ってしまうほどの大きさです。

 火星の赤道付近には「マリネリス峡谷」とよばれる巨大な峡谷があります。長さは日本列島よりも長く4000キロメートルもあります。幅は100キロメートル、深さは7キロメートルです。2005年にはESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探索機「マーズ・エクスプレス」によって、マリネリス峡谷の層状堆積物から硫酸塩鉱物が発見されました。硫酸塩鉱物は水と関連が深く、その場所にかつて水が存在していたのではないかと考えられています。

[木星]
 表面の縞模様と巨大な斑点が特徴のガス惑星
 木星の半径は約7万1500キロメートルで、太陽系最大の惑星です。2008年5月現在、63個の衛星が発見されており、中でも大きな四つの衛星は、発見者のガリレオにちなみ「ガリレオ衛星」と呼ばれています。

Photo_5  木星表面で最も目立つ模様は、「大赤斑」とよばれる巨大な渦模様です。大赤斑を発見したのはイギリスの科学者ロバート・フックです。1664年のことでした。それ以来、340年以上もの間、ずっと消えることなく存在しています。

 1994年7月、1000年に一度ともいわれる天体現象が木星でおきました。「シューメーカー・レビー第9彗星」の分裂した核が、次々に木星表面に衝突したのです。
 衝突の瞬間に発生したきのこ雲や、衝突後の痕跡が捉えられました。

[土星]
 さまざまな現象がみられるリングのようす
 2006年10月、土星で新しいリングを2本発見したとNASAが発表しました。

[衛星タイタン]
 土星では2008年5月現在、60個の衛星が発見されています。その中で最大の衛星はタイタンです。タイタンの半径は2575キロメートルで、太陽系の衛星の中では木星の衛星ガニメデに次いで2番目に大きな衛星です。

 タイタンの最大の特徴は、分厚い窒素の大気が存在することです。海王星の衛星トリトンなど、非常に薄い大気が存在する衛星はほかにもありますが、タイタンほど濃密な大気が存在する衛星はほかにはありません。タイタンの地表付近の気圧は、地球の1.5倍にもまります。

[天王星]
 天王星には13本のリングと27個の衛星が発見されています。

[海王星]
 海王星最大の衛星は、"噴煙"をたなびかせていた。
 
□今日の読書 ★★★★★

次々に投入される探査機が明かす太陽系のすべて 次々に投入される探査機が明かす太陽系のすべて

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2008年12月 9日 (火)

「エコノミック恋愛術 」山崎 元

[嗅覚を研ぎ澄まして、街へ出よう!]
 リアルに想像しすぎると、気持ちの悪い話だが、恋愛の基礎知識として、重要な実験をご紹介する。
(以下、廣中直行「快楽の脳科学」NHKブックスを参考にした)。

 スイスのベルン大学のヴぇデキンドらは男子学生に2晩同じTシャツを着てもらい、次の日に、女子学生にどのTシャツのにおいが好きかを尋ねた(オエッ!)すると、自分の体臭とは違うにおいのTシャツに対する高感度が高かったという。これは、嗅覚に関連するHLAと称する遺伝子のタイプによるもので、女子学生が好んだにおいは、自分と異なるHLAを持っている男性のにおいだった。
 単刀直入にいうと、自分とは違うにおいのする女(男)を口説け、ということだ。さあ、嗅覚を研ぎ澄まして、街に出よう!

 先の現象の、生物学的な意味は、異なる遺伝子タイプを持つ2人が子孫を作ると、抵抗力の強い子供ができやすい、ということらしい。確かに、人間は、せっかく有性生殖で遺伝子を混ぜ合わせて子孫を作るのだから、お互いに異なるタイプ同士が結びつく方がいいし、それが自然なのだろう。

 どうにも下品として言いようのないオヤジが、何とも上品な美人を連れているのを見にして、世の理不尽を感じることがあるが、あれは理不尽などではなくて、むしろ、天の配剤なのだと分かる。

 なお、恋愛には関係ないが、男の体臭に対する好みを決めるHLAは父親から受け継ぐものらしく、娘が年頃になると、父親のにおいが嫌いになるようにできているのだという。

[そこそこで満足するか、理想を追うか]
 ノーベル経済学賞の受賞者だが、経営や政治から認知心理学に人工知能まで経済学に留まらない研究を行ったハーバード・A・サイモンが発案した重要な概念に「限定合理性」というものがある。
 人の認識能力は限られており、最適化計算を正しく行うことができるようなものではない。まして、現実には、商品と価格の組み合わせだけを取っても、必要な情報のすべてをローコストに短時間で集めることはできない。

 ある男性が生涯の伴侶となる女性を選択しようとしていると考えよう。新古典派的な人間像では、決定は次のように行われる。
 まず、対象になる可能性のあるすべての女性一人ひとりについて、自分が感じる各種の魅力、生活パートナーとしての能力評価、経済的諸条件、世間体や見てくれ、などを総合して現時点での彼女の効用を評価する。次に、将来の各時点での彼女の効用の実現確率の重み付き期待値を現在価値として集計し、一人の女性の総合的採点を行う。そして、彼女たちを点数の高い順に並べて、自分の予算制約(女性から見た自分の点数だ)で獲得可能な最高点の女性を選ぶ。

 何とも面倒な手続きだが、これでも対象を一人に限っている点で単純化している。相手の女性をポートフォリオ化する可能性を考えると、意思決定はもっと複雑だ。

 これに対してサイモンの満足化原理だと、ある一定の満足レベル以上の評価を与えられる女性が獲得できそうな場合、男性は次の候補を求めることをやめてさっさと一緒になってしまう。こちらの方が簡単だし、現実に近い。

[悪女に学ぶ行動経済学]
 読者は「悪女」に憧れるか。男性読者は、後のことはさておき、一度、悪女に近づいてみたいと思う方が大半だろう(最も身近なサンプル=自分からの推定だが)。女性読者の場合は、時々は悪女になってみたい、と思うのだろうか。男女両方にとって気になる存在の「悪女」。この本質について考えてみよう。

 第一に悪女は、気まぐれである。気がないかと思えば、急に近づいてくる。落ち着いたのかと思えば、いきなり、いなくなる。そして、諦めた頃には、また、帰ってくる。少なくとも、平凡な男にとって、悪女の行動は予測できるものではない。

 予測できないということは、常に「新しい」ということだ。実は、最近の脳科学の研究で「新しさ」というものが、人間の、やる気(たぶんドーバミンの分泌に関係があるのだろう)と幸福感とに深く関係していることが指摘されている。つまり、人間は、繰り返し比べると同等に思える二つのものであたっても、意外性を持って登場したものの方に、強く心を動かされる(良いものなら大きな効用を感じる)のだ。ものが持っていると考えられる使用価値だけでなく、価値の変化や、そのものの「新しさ」に対して、人間が強く反応する傾向があることは、かなり古くから、経済学者のチボール・シトフスキーらの研究で知られていたが、その後、脳科学的な研究で裏づけられた。
 大したことのなに女でも、意外性を演出することで、悪女バブルを膨らませることができる。

[合コンで幹事よりいい女(男)がなぜ来ないか]
 合コンの幹事役は、相手方からイイ女(男)をたくさん連れてくることを委任された代理人(エージェント)であると同時に、本人自身も合コンに実りある出会いを求める一個人だ。つまり、自分よりイイ女(男)を連れてくることは、自分自身にとっての競争条件の悪化を意味するのであり、合理的人間としてはこれを避けるのが自然な行動だ。
 実際の合コンに行くと、たとえば、ステディな彼(彼女)のいるイイ女(男)のような、明らかに競争対象外の「見せ玉」がいるだけで、あとは幹事役から見て安全な参加者が調達されていることが多い。出会いへの夢は単なる飲み会への現実と変わる。

今日の読書 ★★★★☆ 

エコノミック恋愛術 (ちくま新書) Book エコノミック恋愛術 (ちくま新書)

著者:山崎 元
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2008年12月 7日 (日)

「お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践」 勝間 和代

[金融リテラシーの必要性]
 少子高齢化の原因を他国と比較してみると、日本では、次の二つの要因が数多くの分析によって指摘されています。

①労働者の労働環境が整っていないため、女性が働きながら子供を生むのが難しい。
②男性の育児・家事への参加時間が他国に比べて極端に少ない。

 この二つの要因を引き起こしているものが、長時間労働です。そして、金融資産収入が多ければ、いまほど長時間労働する必要はありません。さらに、転職に伴う一時的な収入ダウンがあったときでも金融収入で補うことができれば、その後の最就職時における理不尽な長時間労働の要求を突っぱねることも可能です。

 現在の多くの企業では、勤務者、特に正規雇用者は長時間労働を「暗黙の了解」として期待されています。そして、労働以外による収入の手段が乏しい場合、長時間労働を受け入れやすい下地が全体に出来てしまうのです。さらに、失職がそのまま生活不安につながるときは、その傾向はますます強くなるでしょう。

 その結果、女性は子どもを持ちながら働くことが困難になります。また、男性も普段から長時間労働と長い通勤時間で疲労がたまっているため、家庭への家事・育児参加が肉体的にも精神的にも困難になるのです。

 こうした結果、日本において労働収入によってこれまでと同じ収入を稼ぎ続けようと思えば思うほど、よりきつくて難しい仕事を長時間せざるをえなくなるのです。
 そして、このことはもはや持続可能な方法ではないということは、今、組織に勤務している労働者の多くの人が実感として抱いているものではないでしょうか。

 金融リテラシーを得るためのひとつの基本原則を覚えておいてください。それは「金融はリスクに応じてリターンが生じる」ということです。大きなリスクには、それに見合った大きなリターンが生まれないと誰も投資をしないため、それなりのリターンがうまれるような商品になります。

 ここでリスクという言葉に目を向けてみます。私は、日本でリスクの概念を説明するのが難しいと常々感じています。その理由は、多くの人がリスク(risk)と危険(danger)を一緒にして考えているからです。リスクというのは、あくまで計量可能で、コントロール可能なものを指します。逆に、自分自身で計量できなかったり、コントロールできないリスクを取ってしまうことはリスクとはいえず、単なる危険(ギャンブルなど)を指します。

 株式投資を例にあげましょう。株式投資は主にファンダメンタルズ分析とチャート分析によって行われます。ファンダメンタルズ分析とは、企業の業績や株価などの用いた投資指標によって株価が割高か割安かを分析すること、チャート分析とは、チャートパターンやテクニカルチャートを利用することで株価動向を分析することです。

 ファンダメンタルズ分析、すなわち特に会計利益と株価の関係--会計利益が市場の期待よりも大きくなる会社は株価が上がる--については、Ball and Brown(1968年)など、日米を始めとする各国から学術的な証拠が疑いのないレベルで出ています。

 一方、チャート分析、すなわちそのパターンを使っていけば株式のリターンが有意に得られるということについての統計的な証明は、私が知っている限り、学術レベルでは目だった業績はありません。また、先に引用した「日経マネー」の個人投資家アンケートでも、チャート分析に頼る人に比べて、ファンダメンタルズ分析を行っている人の方が統計上、有意によいリターンが出ていました。

 したがって、会計利益の将来期待の大きさの割りに株価が安い会社に投資することは、統計的には勝つ可能性が高い「投資」(リスク)になりますが、チャート分析を使って株式投資をすることは単なる「賭け」(危険)になります。
 このように、金融リテラシーを身につけると「投資」(リスク)と「賭け」(危険)を分類できるようになります。逆に、正しい知識もないままリスク資産にやみくもに投資することは、文字通り「危険」を増やすだけとなります。

 金融は非常に公正な市場で、勉強すれば勉強した人にリターンが必ず返る仕組みになっています。そこには嫌な上司もいませんし、妙な社内政治もありません。アマもプロも、同じ立場で勝負ができます。

[金融商品別の視点]
 私たちは、もし同じリスクを取るのであれば、リスクがより低く、リターンがより高い商品を選んでいくことで機会損失を免れることができます。したがって、金利に関する金融リテラシーとしては、金利に対しては絶対値としての水準(例えば先に触れた銀行の定期預金の0.6%)で考えるのではなく、国債利回りと比べた相対値で、割高か、割安かを判断すればいいのです。

 また、金利については「期間構造」と呼ばれる仕組みがあります。これは、預け入れる期間が長くなればなるほど金利が高くなる構造のことです。この様子をまとめたものを金利のイールドカーブと呼びますが、図に示すように、国債と定期預金の利回りは年数が長くなれば長くなるほど開いていきます。

 したがって中途解約を考えていない資金があり、為替リスクも元本リスクも取りたくないのであれば、定期預金ではなく国債の方が利回りが高いことになります。
 ただ、ここで注意したいのが、国債は定期預金とは異なり、途中で解約すると元本割れのリスクがあることです。これは、買ったときに比べて金利が上がった場合、その国債の価格が額面よりも安く流通されるためです。

 そして、金利の上げ下げについては「将来は予測できない」と考えることが正解です。なぜなら、さまざまなマクロ分析をしながら日本銀行の動向に気を配る「日銀ウォッチゃー」と呼ばれるエコノミストたちですから、その金利がいつ上がるのか、いつ下がるのかは予測できないのに、ましてやそうした情報を持っていない私たち一般投資家の立場で予測できるわけがないからです。

 そうしますと、途中で解約する可能性の低いようなお金につていは、定期預金ではなく、国債で運用したほうがリターンが高くなります。
 そして、図15の金利イメージを頭に入れておく必要があります。

[金融商品別の視点]
 ①円の金利の標準は国債の金利で決まる。
 ②金利は通常、期間が長くなるほど高くなる
 ③信用リスクがあるところの金利は、国債の金利より高い

という三つの基本的なポイントを抑えておけば、なにか特別な理由がない限り、不利な定期預金にお金を預けることは少なくなると思います。

 実際に個人が国債を買うには、郵便局、証券会社、銀行などが窓口になりますが、国債の方が定期預金よりも有利な運用ができるということは、ある程度知られているようです。なぜなら、郵便局では売り出しの日の午前中にすべて売り切れてしまうような人気商品になっていますから、もっとも、新発債といわれる、発行されたばかりの国債だけではなく、すでに発行済みの流通している国債であっても、証券会社を通じて購入することは可能です。

 まずは自分の目で、銀行の金利と、国債の金利が違うことを確かめてみてください。こういった訓練の積み重ねが、金融リテラシーを上げる要素になります。
 本稿の最後に、国債に基づいた金利の一覧表が見られるサイトを紹介しましょう。金利のイールドカーブについては、次のサイトでブルームバーグが毎日公表しています。

 http://www.bloomberg.co.jp/markets/rates.html

 定期預金の金利については、各銀行のホームページが便利です。本稿で取り上げた三菱東京UFJ銀行では、次のページになります。

 http://www.bk.mufg.jp/cdocs/list_j/kinri/yokin_kinri.htm

 個人向け国債の購入については、発売元である財務省が丁寧なページを作っていますので、そちらも参照してみてください。

 http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/kojinmuke/index.html

 金利ものでは国債のイールドカーブを理解することが重要だと説明しましたが、株式では「市場は原則として効率的であり、個人が自分の力で割安銘柄を探すのはかなり難しい」ということをまず理解してもあればと思います。
 それでは、個人はどうしたら株式市場で儲けることができるのでしょうか。これは後に詳しく説明しますが、まず、次の二つを守ることが重要になります。

 ①自分の資産の中で、株式に投資する割合を決めること
 ②決めた割合の中で、株式のインデックス(市場平均値)に連動した投資信託や上場株式(ETFといいます)を買うこと。

 すなわち、自分で判断せずに投資するのです。

[金融商品別の視点]
 投資信託には、手数料が極端に低い「インデックス投信」と呼ばれるファンドもあります。なぜ手数料を抑えられるのかというと、人間が運用の意思決定に関わっていないためです。具体的には次のようなしくみです。

 例えば「日経225」という株式の指数がありますが、これは日経新聞が225種類の株を市場から選び、その平均株価を指数化しているものです。そして「日経225インデックスファンド」という商品は、その日経225になるべく近づけるように、その公正銘柄をすべて真似て買っていくのです。そうすると、その商品は平均的な動きに限りなく近くなるため、市場に比べて大きく下がることもなければ大きくあがることもないファンドになるのです。つまり、高い給料を必要とするファンド・マネージャーを置かなくても、平均的なリターンが出るようなファンドを作ることができるのです。

 そのため、インデックス投信の信託報酬は、通常の投信が年間、預かり残高の1~2%ぐらいだとすると、0.4~0.8%ぐらいしかかかりません。とても地味な商品ではありますが、手数料を考えれば、とてもお得にできている金融商品といえます。

 今後、多くの企業で401Kが導入される可能性が高いため、それが始まるからには私たちも自衛する方法を身につけなければなりません。
 自衛のための簡単な方法として、例えば「資産四分法」と呼ばれるものがあります。この手法は、資産をまず半分ずつにして、その半分を国内で運用する投資信託、残りの半分を海外で運用する投資信託に投資します。そして、さらにその半分ずつを債権と株式に分けるのです。すなわち、国内株式、国内債券、海外株式、海外債券と、それぞれ4分の1ずつに分けて運用するのです。そして、運用先もすべて、前述した手数料が安くて平均的な利回りで回るインデックスファンドにすればいいのです。金融面からいえば、その方が、利率の低い円貨の定期預金に入れっぱなしにしておくよりはリスクの少ない運用方法となります。

[金融でしっかり儲ける方法の基本5原則]
 細かい話に入る前に、必ず抑えておきたい5原則をまとめてみました。この原則から外れなければ、あり得ないような儲け話にフラフラとついてく確率は減ると思います。そして、すべての前提は「私たちは金融の相場は予測することができない」ということに基づいています。

第1原則 分散投資、分散投資、分散投資
第2原則 年間リターンの目安として、10%はものすごく高い、5%で上出来
第3原則 タダ飯はない
第4原則 投資にはコストと時間が必要
第5原則 管理できるのはリスクのみ、リターンは管理できない。

[金融リテラシーを身につけるための10のステップ]
 本書を読み終えた1年後には金融の基礎知識や商品知識がたいたい分かり、リターンを自分でコントロールできるようになる地点をゴールとして設定しています。そのためには、次のような10のステップを踏みながらすこしずつ地固めすることがその近道となります。

①リスク資産への投資の意思を固める
②リスク資産に投資をする予算とゴールを決める
③証券会社に口座を開く
④インデックス型の投資信託の積み立て投資を始める
⑤数ヶ月から半年、「ながら勉強」で基礎を固める
⑥ボーナスが入ったら、アクティブ型の投資信託にチャレンジ
⑦リスクマネジメントを学ぶ
⑧リターンが安定したら、投資信託以外の商品にチャレンジ
⑨応用的な勉強にすこしずつチャレンジ
⑩金融資産公正のリバランスの習慣をつける。

□今日の読書 ★★★★★

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書) Book お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

著者:勝間 和代
販売元:光文社
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2008年12月 5日 (金)

「たった3秒のパソコン術 (知的生きかた文庫)」中山 真敬

[Ctrl+A] 画面情報をすべて選択
[Shift + ←や→や↑や↓で選択領域の指定]
[コピー&ペーストは、Ctrl+X(切り取り)、+C(コピー)、+V(貼り付け)]
[Excelで、Ctrl+V は、繰り返し貼り付けが可能]
[メニュバーの操作は、Altキー]
[Ctrl+D 一度の操作で図や画像をコピー&ペーストする]
[入力フォームの記入は、Tab で移動]

[Alt + (半角/全角|漢字)で、英数と日本語モード切替]
[F9 英数全角に変換]
[F10 英数半角に変換]
[F6  ひらがなに変換]
[F7  全角カタカナに変換]
[F8  半角カタカナに変換]
[Ctrl+B = 太字、+I=斜字体、+U=下線付き]

[Ctrl + N 新しい文書の作成]
[Ctrl + O 文書を開く]

[Shift + F10  右クリックと同じ]
[パソコン画面の撮影 Fn+PrtSC 貼り付けたい画面を表示し、Ctrl+V]
[アクティブな画面の撮影 Fn+PrtSC+Alt 貼り付けたい画面を表示し、Ctrl+V]
[ハイパーリンクの挿入 Ctrl+K]

[Windowsキー スタートメニューの表示]
[Widonwsキー+M 開いているウィンドウをすべて最小化]
[Alt+Tab 作業ウィンドウの切り替え]
[Ctrl+Home  文章の先頭に移動]
[Ctrl+G 指定した場所に移動]

[Windowsキー +F ファイルやフォルダの検索]
[Windowsキー +E エクスプローラの表示]

エクセル編
[Ctrl+方向キー データのかたまりから次のかたまりにジャンプ]
[Ctrl+Fn+Pageup  前のワークシートに切り替え]
[Ctrl+Fn+Pagedown 次のワークシートに切り替え]

[Ctrl+9 指定した行を隠す]
[Ctrl+0 指定した列を隠す]
[Ctrl+Shift+9 隠された行を表示する]
[Ctrl+Shift+0 隠された列を表示する]
[Ctrl+D 上の行をコピー&ペースト]
[Ctrl+R 左の列をコピー&ペースト]
[Shift+スペース セルを横移動]
[ワークシートの追加 Shift+F11]
[複数のエクセルファイルの切り替え Ctrl+tab]

[マウスクリック 2回単語を選択、3回段落を選択]
[ファイル・フォルダ名の変更 ファイルを選び、右クリック+左長おし又はF2]
[ファイルのコピー Ctrl+ドラッグ&ドロップ]

[印刷ダイアログを開く Ctrl+P]
[印刷したいページをクリックしてから、印刷]

[Esc 確定する前なら、まるごと消す。]

[F7 文章の校正]
[Ctrl+D ワードの書式設定のダイアログが開く]

[Ctrl+z 操作を取り消して元に戻す]
[Ctrl+y 「元に戻す」の取り消し]
[F8 Windowsの起動前にまだ画面が黒いうちに長押]

□今日の読書 ★★★☆☆

たった3秒のパソコン術 (知的生きかた文庫) Book たった3秒のパソコン術 (知的生きかた文庫)

著者:中山 真敬
販売元:三笠書房
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2008年12月 3日 (水)

「中国臓器市場」城山 英巳

[臓器の九割は死刑囚から]
 世界第二位の移植先進国
 長瀬は私の申し出を受け、自分のデスクに置いてあるパソコンを操作して一枚の紙を印字してみせてくれた。
 提携する瀋陽の中国医科大学付属第一病院と、上海の復旦大学付属中山病院で、04年と05年の二年間に、肝臓移植、腎臓・肝臓同時移植の各種移植手術を計108人の日本人が受けていたという、衝撃的な数字が記されていた。

 長瀬が私の取材を承諾したのは、法律に抵触しかねない行為が公になることは承知の上で、もっと多くの日本人が移植のため中国に渡航してほしいと考えたからである。
 しかし、そう願う長瀬にとってネックとなるのは、患者の中国渡航を止めようとする日本の医師の存在だった。

「ここの医師には実績がある」それもそのはず。執刀医の劉永峰はこの一日で、三人もの移植手術を行うのだ。肝臓が一つと腎臓が二つ。つまり一人の死刑が執行され、ドナーが現れたのだ。前日には57歳の日本人男性が腎臓移植を受け、翌日にはなんと肝臓二人、腎臓四人の移植が予定されているのだという。日本人ら外国人を含めて、大量の移植希望患者をさばいていることを示す数字だ。
 
 長瀬はこう売り込む。「肝臓や腎臓の移植であれば、早ければ1~2週間、遅くとも1ヶ月以内、心臓や肺移植でも一ヶ月以内にドナーが決定するので、それに合わせて渡航して移植手術を受けてもらう。」

 さらにこうアピールする。「日本ではいくら待ってもドナーが現れない一方で、中国では待たずに移植を受けられるんです。」

 この移植ビジネスは日本人だけを対象にしたものではない。世界中でドナー不足が深刻化する中、中国はまさに「世界の臓器工場」と化していた。
「われわれには韓国、イスラエル、ウクライナ、サウジアラビア、パキスタン、インド、カナダ、米国から話が来て交渉している。」
 欧米諸国の患者が、中国まで来て死刑囚から摘出された臓器の移植を受けて救われている一方で、それらの国々では「死刑囚をドナーにすることは倫理・人権的に問題がある」と非難があがるという皮肉な現実もある。

[血で儲ける殺人病院]
 中国の医療現場では、血液までもが金儲けの道具になり、それが人の生命まで奪う深刻なケースに発展している。
 農村では、貧しい農民たちが生計を立てようと売血を繰り返した結果、エイズウイルス(HIV)感染が拡大した。
 王の妻は1997年8月、地元の私立病院、康泰病院で女児を出産した後、「回復が早くなる」というだけの理由で輸血を強要された。妻は99年5月に死亡する。エイズに感染したのである。生まれた娘も感染していた。

[中国の常識、世界の非常識]
 「麻酔から目を覚ますと、私の肝臓が生体移植されたはずの夫は、手術台の上で死んでいた。腹部や胸部に穴が開き、角膜も取られていた。私の肝臓の十分の七も切除され、勝手に他人に移植された。」
 衝撃的な証言を行うのは、陜西省咸陽出身の楊潔だ。二人の子供を持つ、41歳の普通の主婦だった。極めて穏やかな正確で、銀色のメガネを掛けためは優しさをかもし出している。
 しかし、夫を亡くし、自分の肝臓まで取られた2003年9月の出来事を思い出すと、表情が一変する。悔しくて涙がとまらなくなり、怒りがこみ上げてくるのだ。

[年1万件! 大量死刑執行]
 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、2004年には3400人、2005年1770人、06年は1010人となっているが、実際にはこれより多いのが常識となっている。
 中国では。68種類の罪名に死刑が適用されるという。大量の死刑執行の背景には、この厳罰主義がある。収賄など経済犯のほか、重大な窃盗罪にも死刑が適用される。

□今日の読書 ★★★★☆

中国臓器市場 Book 中国臓器市場

著者:城山 英巳
販売元:新潮社
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2008年12月 1日 (月)

米原万里の「愛の法則」

[国際化とグローバリゼーションのあいだ]
 日本語というのは、外来語がすぐ入ってこられるような構造になっています。なぜそう思うかというと、実際に自分で体験したからです。私は国際会議で中国語の同時通訳者と一緒に仕事をすることがありますが、会議の前には打ち合わせをします。そのときに、固有名詞とか、あるいはカタカナ語がたくさん出てくると、中国語の同時通訳者はしつこく、「これはどういう意味ですか?」と尋ねるんです。もううんざりするぐらい繰り返し聞かれます。つまり、シンパジウムとか、フォーラムという言葉も、中国語にするときには意味をとらえてきちんと訳さなければいけないのです。

 日本語だと、コンセプトという語の意味がわからなくても、音だけ移して、平気でみんな使っていたりしますよね。「どういう意味?」と聞くと、わからなかったりします。でも、中国語の場合、意味がわからないと中国語にならないわけです。日本語は意味がわからなくても、音だけ移して日本語らしく聞こえるという、カタカナ語はそういう役割を果たしています。

 ですから、中国語だけではなくて、ほとんどの言語が、実際に意味がわからないと言葉がつくれないようになっているのです。例えば、日本語に「ラブホテル」というのがありますね。日本語はそのままラブホテルとカタカナ語で言ってしむでしょう? だけど、香港に行くと、ちゃんとこれが中国語になっているんです。「情人旅館」となっています(笑)。

 ラブが厳密に訳されています。つまり中国語はちゃんと意味を訳さないと、外国の概念が入り込めないようになっているわけです。外国語が音だけで入り込める日本語は、それだけ門戸が広くなっている。悪い意味でも、いい意味でも、開かれた構造を持っているということになります。

[日本に刷り込まれた中国文明]
 カタカナ語が入り込めるようになっているのは、おそらく中国語を大量に入れるために生まれた構造だと思います。というのは、皆さんご存知のように、中国語を意味として入れたときは、漢字を入れて、訓読みをしました。訓読みというのは訳、つまり意味です。ところが、漢字には音読みもあります。この音読みは本来、日本語にはなかった音です。日本語は日本語になかった音も入れてしまったんです。

 
[世界最強の国一辺倒の日本]
 日本と日本文化には、その時々に世界最強と思える国、イコール世界最高の文化と持っていると思い込んで、その国の文化を熱烈に、ある意味では無批判に無節操に取り入れる癖があるんですけれども、それは、最初は中国でした。おそらく中国に出会ったことで、あまりにもすごい文明だったので、この日本文化の特徴が生まれたのかもしれません。エジプト、メソポタメアを一つとして、インド、中国は世界の三大文明で、そのうちの一つといきなり出会ったわけです。この時代が非常に長かった。

 江戸時代になると、まだ鎖国時代ですが、今度は日本の知識人たちにとって、最高の文化はオランダとオランダ語になっていきます。命がけでオランダ語を勉強します。
 江戸時代の蘭学者たちが命がけで一途にオランダ語を勉強していく姿は、結構感動的ですよね。でも、実際の世界はもう変わっていたのです。

 明治維新よりちょっと前に、実はオランダは世界最強の国でもないし、世界で最も学問が進んでいる国でもない、ということを多数の日本の知識人が知ることになるます。もう大慌てです。大慌てで軌道修正して、お師匠さんのくらがえをしていきます。当時は藩によって違いましたけれでも、フランスやイギリス、ドイツ、アメリカなど、欧米先進国にお師匠さんをくらがえするわけです。そういう国にどんどん留学生が行きます。そして、これが第二次世界大戦後になると、アメリカ一辺倒になります。

[すべて英語経由]
 沖縄サミットの時は森さんが首相でした。森さんが日本語で発言すると、これが直接通訳されるのは英語だけ。フランス語にも、ドイツ語にも、イタリア語にも、ロシア語にも、英語を経由して訳されていく、つまり、リレーになってしまうわけです。
 どうですか。この図式を見ると、日本語はなにか鎖国時代の長崎の出島みたいな漢字が英語を経由して築くということになります。

今日の読書 ★★★★☆

米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F) (集英社新書) Book 米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F) (集英社新書)

著者:米原 万里
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2008年11月29日 (土)

「ビジネス数字力を鍛える (グロービスの実感するMBA)」

[数字力を高める7ステップ]
①分析の目的を押さえる。
  何のための検討、分析なのか、その目的を明確にする。
②仮説をもってどんな情報が必要かを洗い出す
  目的に即して、「こうなるのではないか?」という仮説を持ち、その仮説を検証するためには、どのようなデータや情報が必要になるかを考える。
③適切な情報を収集する。
  第2ステップで考えたことにしたがってデータ、情報を集める。
④分析の際にどんな前提を置くべきかを確認する。
  第3ステップで集めたデータなどをどのような前提で分析するかを確認する。
⑤集めた情報を加工、計算をする
  データを加工する方法を検討し、加工計算などを行う。
⑥目的につながる解釈をする。
  加工、計算した結果から、目的に対して意味のある、意思決定につながる解釈をする。
⑦加工結果や解釈をわかりやすく表現する。
  解釈した内容をわかりやすく、意思決定者に伝える。

[曖昧さを極力つぶしておく]
 目的などの「そもそも論」は、時間が経過すると、関係者に再確認しにくくなっていまうため、なんとなく作業だけが進んでいってしまうということは起こりがちです。
 最初のボタンを掛け違えては元も子もありません。「わかっているはず」「前提は共有されているはず」という勝手な思い込みはすべて捨て、できるだけ具体的な言葉を使って、目的の定義からしっかり始めることが重要です。
 「指示をだしている上司は、最終的に何をしなければならないのか(例えば役員会での報告など)

[仮説は、さっさと、ざっくり」作る
 一般的に、ビジネスパーソンが何らかの課題に直面する場合、
・今までやってきている仕事に対する課題解決
・まったく新しいことに対するチャレンジ
 の大きく二つのパターンがあります。それぞれについて仮説の作り方を検討しましょう。

[今までやってきている仕事に対する課題解決]
 こうしたケースでは、その業務に対する様々な情報やほかに関与している人の話から、「この問題は○○かもしれないな」という仮説の卵を生み出します。この卵を初期仮説と呼びます。
 卵を生み出したら、まずその卵について、自分の周囲のメンバーはどう考えるか、話を聞いてみることをお勧めします。自分自身が持っているイメージがどの程度他の人の共感を得られるのか、得られないのかを確認するのです。
 この段階で良い感覚が得られたら、話を聞いてみるメンバーの範囲を広げるといいでしょう。できれば、社外の人などに聞いてみるのもよいかもしれません。

[新しいことに対するチャレンジ」
 まったく新しいことにチャレンジする場合、なかなか仮説の卵を持ちにくいものです。そんなときには、以下に挙げた方法を試してみてください。
①手元にあるデータを簡単にざっくり切ってみる
②関連する新聞記事などを時系列で見る
③似たような業界の状況を時系列で見る
④似たような業界のプロの話を聞く
 いずれの方法を使う場合も忘れてはいけないのは、「Quick and Dirty」(さっさと、ざっくり)というコンセプトです。初期の仮説を考える段階で詳細にデータを掘り始めるときりがない、時間が足りないという状態に陥ります。詳細な検討はある程度、仮設が育った段階で行えばよいので、この段階では、「さっさと、ざっくり」と、データや情報に対処することが大切です。

[仮説を育てるとは?]
 初期仮説 ⇒ ざっくり確認
        より具体的な仮説  ⇒ だいたいの裏付け
                    さらに具体的な仮説
                   (行動にむすびつく)  ⇒ 綿密な検証
[粗い段階          と     詰めの段階]
○普段から触れている情報でも可能    ○目的に沿って特別に情報を集めて判断
○ここの意見や事実そのものを重視    ○母集団全体の傾向等、統計的処理を重視

[仮説を持ちながら大枠で考える]
 さて、「仮設を持ちながら大枠で考える」イメージを、ある事業からの撤退のケースで具体的に見てみましょう。
「ここ数年間の当社の売上と、営業努力を見ても、この事業は今後とも厳しい可能性が高い」という初期仮説を持ったとします。
 では、考えを深めていくにあたってどんなデータを集める必要がありそうでしょうか? 今までやっていた事業をやめるかどうかを考えるわけですから、当然のことながら、たくさんのデータを集めて精緻に検討したいと考えがちになることは容易に想像できます。
 こんなとき、ぜひ、仮設を持ちながら大枠を考えるというステップを思い出していただきないのです。例えば、こんな感じです。

「そもそも事業はお客様があってこそ成立するものなのだから、改めて市場のことを考えてみよう。現状とこれからを予測できればいいかな? 今後の少子高齢化を考えると、将来はあまり明るい見通しではなさそうだな。外資系企業が入ってくる可能性もあるし。
 次に、自社の成長を妨げている競合がどんな状況なのかを見ないと、結果は出なさそうだ・・・。
 そして最後に、事業撤退を検討している事業がどんな状況なのか? 自社の強みはもう活かせないのか? 自社の弱みは今後事業継続をするには致命傷なのか? つまり自社おの状況をしっかり見つめなおす必要がありそうだ・・・。」

 このように考えることができたなら、大枠として市場(現状に関するデータ、将来予測をするためのデータ)、競合(誰が競合か、強み、弱み)、自社(強み、弱み)を中心にデータを集めてみようというあたりがつくわけです。

 図1-4のような図を「ピラミッド構造」と呼びます。最後の結論をサポートするメッセージ(例えば報告書で言えば各章の結論のようなもの)を、ピラミッドのような形で表現したもので、コンサルティング会社や外資系企業において、説得力のある論理を展開するための標準的な構造として活用されています。

 本書で言う大枠は、ピラミッド構造を支えるいわば柱のようなもので、この柱がしっかりしていれば、最後の結論を安定的に
支えることができます。つまり説明のロジックとして安定し、説得力が増すのです。

●図1-4 ピラミッド構造

       +----------------------------+ 
          |   結論としては、当社は              |
       |この事業から撤退すべきです      |
       +---------------+------------+ 
                                    | 
       +------------------+------------------------------+ 
        |自社の                  |競合の                 市場の  |
    |状況は?                |状況は?                 状況は? |
         |                          |                                        |
                                                  
+--------+-----------+   +-+------------------+   +------+-------------+
|自社は○○、              |     | 競合は○○、             |   |  市場は○○           |
|  ××の状況です        |   | ××の状況です       |   |  ××の状況です      | 
+-------------+------+  +---------+----------+    +------+-------------+
               |                     |                      |
     +-------+-+----+      +-------+------+       +-------+------+
     |       |      |        |       |      |       |       |      |
   +-+--+  +-+--+ +-+--+  +-+--+  +-+--+ +-+--+  +-+--+  +-+--+ +-+--+
   |情  |  |情  | |情  |  |情  |  |情  | |情  |  |情  |  |情  | |情  |
   |報1 |  |報2| |報3|   |報4|  |報5| |報6|  |報7|  |報8| |報9|
   +-+--+  +-+--+ +-+--+  +-+--+  +-+--+ +-+--+  +-+--+  +-+--+ +-+--+
 
 枠は大切な考え方なので、もう一つ別の例を挙げてみましょう。皆さんはイチロー選手がすぐれた野手であることを説明するには、どんな枠で考えるとよいと思いますか?
 例えば、「走」「攻」「守」などの枠組みが考えられそうです。「第1章 走」、「第2章 攻」、「第3章 守」という章立てでレポートを書くイメージです。もうひとひねり、イチローが優れたアスリートであることを説明したいなら、「心」「技」「体」もありそうです。わかりやすいと思いませんか?

●図1-5 マーケティング・プロセス
①マーケティング環境分析と、市場機会の発見
②セグメンテーション(市場細分化)
③ターゲティング(標的市場の選定)
④ポジショニング
⑤マーケティング・ミックス(4P)
  Product, Price, Place, Promotion
⑥マーケティング施策の実行と評価

 ビジネスフレームワークはこのように、仮設を考えるときに用いることで、仮設そのものを構造化する(大きな抜けや漏れがないように考える)ことが可能になります。結果tぽして仮説を考える効率が上がり、特定の細かいところだけを深堀することを避けることができます。
 以下に、びじねすでよくつかわれる事業分析、業界分析のフレームワークを二つご紹介しておきましょう。

●3C
 ある企業や事業部などがどのような経営環境に置かれているのか、どのような事業戦略をとろうとしているのかを分析するのに役立つ基本フレームワーク。3Cとは、自社(Company)、競合(Competitor)、市場・顧客(Customer)の頭文字を取ったもので、事業の全体像をおおかまに見ようとする際には、必ずこの三つの視点から見ることを提唱するものです。
 この三つを押さえないと、例えば、自社と競合に注意が向きすぎて、顧客という一番大事なものの変化を見落とす、あるいは市場と自社のみをみて、競合のことを考えていなかったということになりかねません。

●まずは視覚化する
 重要なのは、データを見たら、いきなり平均値を算出するのではなく、「まずはグラフなどにして、全体の傾向を目で見る」ことです。そのうえで、どんな種類の代表値にそのデータの特性を語らせるかを考えます。

 分析を進める際にまず重要なことは、その分析は何のためにやるのかという「目的を押さえる」ことでした。その目的を考えながら、「ああかな」「こうかな」という仮説の卵を産み、その卵を育てていくのが次のステップでした。
 そして、その仮説を検証すべく、情報やデータを収集します。
 一連のプロセスの中で、私が最も重要であると考える「目的に沿った解釈する」という加工、計算の次のステップに入ります

●図3-1 数字力を高める7ステップ
①分析の目的を押さえる
②仮説を持ってどんな情報が必要かを洗い出す
③適切な情報を収集する
④分析の際にどんな前提を置くべきかを確認する
⑤集めた情報を加工、計算する
⑥目的につながる解釈をする
⑦加工結果や解釈をわかりやすく表現する

・ボディの情報に対して「So what?」(だから何?)を問いかけ、しっかりとメッセージを紡ぎ出す。
・ボディのどの部分からメッセージを紡ぎ出しているのかわかるように、図中の該当箇所を目立たせる。
・一つのグラフから言えることがメッセージであるならば、不要なグラフは取り去る。
・ボディの情報量を適切にコントロールし、見た目にうるさくならないようにする。

□今日の読書  ★★★★☆

ビジネス数字力を鍛える (グロービスの実感するMBA) Book ビジネス数字力を鍛える (グロービスの実感するMBA)

著者:グロービス,田久保 善彦
販売元:ダイヤモンド社
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2008年11月27日 (木)

悪魔のPC事典―パソコンの真の姿をマニアックに解明! (I・O BOOKS)

[WEPキー]
 WEPは「Wired Equivalent Privacy」の略で、日本語に訳すと「有線と同等のプライバシー」という意味になります。
 WEPキーには「40ビット」と「140ビット」の2種類がありますが、40ビットの場合は「五文字」、104ビットの場合は「13文字」のWEPキーとなる文字列を指定することで、「RC-4」という暗号化方式によって通信を暗号化するようになります。
 これらのWEPキーに「IV」(Initialization Vector)と呼ばれる乱数初期化用の24ビットの数値が付加され、「64ビット」と「128ビット」と呼ばれています。

 64ビットの鍵を採用している無線LANでは、アタッカーは1分以内で侵入できるといわれています。また、128ビットであっても、辞書攻撃を使ってクラックすることができるといわれています。

[MACアドレス]
 ほとんどのアクセス・ポイントには、端末のMACアドレスを登録することで、登録されていないMACアドレスの端末から通信については無視するという機能が備わっています。
 MACアドレスは、イーサネット機器について固有の番号であるため、きちんと登録しておけば外部からアクセスされてしまうことを未然に妨げそうです(ただし、MACアドレスを偽ることは技術的に可能です)。
 また、あくまでもアクセス・ポイントへの接続を拒否できるだけですから、端末同士が通信し合う「アドホック・モード」と呼ばれる通信モードでは利用できませんし、電波そのものを傍聴されることを回避できるわけでもありません。

[PCにとってはメモリが要]
 はっきり言わせてもらいますと、CPUの高クロック化やハードディスクの高速化、大容量化によってPCの動作に最も顕著に変化が現れるのは、「動画のエンコ」ぐらいのものです。
 OSというものは賢いもので、メイン・メモリに入りきらないプログラムやデータは、アプリケーションの実行を一時停止してハードディスクに追い出し、あたかもメモリが増えたかのように見せる機能を持っています(これを「仮想記憶」といいます)。
 
 しかし、ハードディスクというものは、メイン・メモリと比べるとウサギとカメほどに読み書きのスピードが違うため、たびたびハードディスクへのアクセスが発生すると、システム全体の速度低下を招くことになってしまいます。
 ということで、PCの体感速度を上げようと思ったら「何をさておきメモリの増設」となるのです。

[文字遣いに大切なこと]
○ISO646
 「ASCII」が世界標準にならんとする勢いで広がっていきましたので、後追いの形で規格化された文字セットです。 
 よって、「ASCII」とほとんど同じです。
「ASCII」と違うのは、「一部の文字を国や言語に応じて入れ替えてもよい」と規定したことです。
 たぶんこの決定にからんでいた人は後悔していると思います(理由はこの先を読み進んでいけば分かると思います)。

○JIS X0201
 「ISO 646]の制定を受けて「JIS」(日本工業規格)がほとんどそのまんま、後半にカタカナとカギ括弧などの記号が制定されました。
"ほとんどそのまんま"というのがクセモノで、文字コード「5C」はASCIIでは「\」(バックスラッシュ)ですが、JISでは「¥」となっていたり、「7E」はASCIIが「~」(チルダ),JISが「 ̄」(オーバースコア)となっていたりしています。
 これはISO646的には違反ではないのですが、MS-DOSやWindowsでの"ディレクトリ区切り"やC言語などのエスケープ文字が「¥」で表示されたり、URLに良く使われるチルダが打ち込めないとか、何かと苦労させられることになったわけです。

○西ヨーロッパ各国ではアクセント記号のついたアルファベットを使うため「ISO646]の
"アノ12文字"にアクセント付文字を当てはめました。
しかし、当時最も流行っていたUNIXとC言語では、まるで狙っているんじゃないかと思うぐらい"アノ12文字"を遣いまくります。
 そのため、C++言語では「トライグラフ・シーケンス」なんていう苦肉の策もうまれました。しかし、このトライグラフ・シーケンスってヤツはなんてたって入力が面倒くさいし、そこまでして7ビットにこだわらなくてはならない技術的な制約があるわけでもないし、ということで各国が「ISO646」を基に思い思いに8ビット拡張した別のコードを作り始めました。

○JIS X0208
 さて、欧州各国は8ビットで落ち着きましたが、日本はまだまだ落ち着くわけにはいきませんでした。
 「漢字」があるからです。
 10万種類以上あるといわれる「漢字」を自由に扱えないかぎり、「安藤」さんと「安東」さんは安心して暮らせないわけです。
 といっても、いきなりすべての漢字を扱おうとしても無理な話ですから、とりあえずよく遣いそうな漢字と記号、それにひらかな、カタカナ、アルファベット、数字などを含め全部で6千字余りの文字が選ばれた「JIS X0208」(通称:JIS漢字コード)が策定されました。

[日本初の日本語処理システムである富士通の「JEF」が発表されたときの新聞記事の見出しが、"「安藤」と「安東」も区別できます" でした。

□今日の読書 ★★★★☆

悪魔のPC事典―パソコンの真の姿をマニアックに解明! (I・O BOOKS) Book 悪魔のPC事典―パソコンの真の姿をマニアックに解明! (I・O BOOKS)

著者:山本 将
販売元:工学社
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2008年11月25日 (火)

「中東激変―石油とマネーが創る新世界地図」脇 祐三

[中東と石油市場の構造変化]
 アメリカのブッシュ政権は2001年の発足直後から、エネルギー産業に関する規制緩和、国内資源の開発促進を優先的に掲げていた。政権の主張を反映した包括エネルギー法が2005年8月に成立し、国内の原油・天然ガス開発への税制優遇、バイオエタノールの利用促進、1979年のスリーマイル島原発事故の後から止まっていた原発の新規着工などに道を開いた。何年も議会でたなざらしにされてきた法案が可決されたのは、原油相場の上昇という追い風が吹いたからだ。
 
 ブッシュ政権はアメリカ国内のエネルギー資源開発を容易にすることに執着してきた。2001年9月の米同時テロは、当面の安全保障策として石油の輸入依存度を下げようとする政策のはずみにもなった。2003年のイラク戦争開戦前に、いわゆるネオコン勢力の中には「イラクのOPEC脱退と大増産によって世界的な供給過剰を広げ、原油価格下落によって中東産油国の政治的な影響力を弱める」狙いを広言する人もいたが、政権のエネルギー政策としては、ある程度の原油価格上昇による国内石油産業へのインセンティブのほうが重要だったと考えられる。

 中長期的な石油の地政学では、石油の確認埋蔵量の60%以上を占める中東が極めて重要だ。ブッシュ政権がイラクのフセイン政権を倒し、イランへの圧力を強めてきた背景には、中東から反米的な政権を排除したいという考えも当然あっただろう。

 中東産油国が直面する経済問題の多くのその震源はアメリカにある。しかも震源となっている金融の問題の広がりは大きすぎて、これにすぐ対処できるほどの経済力は今のアメリカにはない。むしろ、アメリカの金融機関を救済するために産油国資金を当てにする状態だ。イラク戦争でつまずいたアメリカは、中東での政治的な影響力も急速に落下した。ドル建ての原油という商品に大きく依存し、アメリカのパワーに依存してきたサウジなどにとって、大きな転機が訪れている。

---------------------------------------------
確認埋蔵量         (単位:十億バレル)
---------------------------------------------
中東合計                755.3
  サウジアラビア  264.2
  イラン   138.4
  イラク   115.0
  クウェート  101.5
  アラブ首長国連邦  97.8
---------------------------------------------
旧ソ連合計    128.1
  ロシア    79.4
  カザフスタン   39.8
  アゼルバイジャン   7.0
---------------------------------------------
アフリカ合計    117.5
  リビア    41.5
  ナイジェリア   36.2
  アルジェリア   12.3
  アンゴラ    9.0
  スーダン   6.6
---------------------------------------------
中南米合計    111.2
  ベネズエラ   87.0
---------------------------------------------
北米合計     69.3
  アメリカ   29.4
---------------------------------------------
アジア・太平洋合計    40.8
  中国    15.5
---------------------------------------------
ヨーロッパ合計     15.6

世界合計    1237.9
----------------------------------------------------

[新たなブームに沸く中東]
 世界の多くの人々にとって、近年の湾岸諸国の好況のシンボルになっているのは、UAEを構成する首長国の一つ、ドバイの急速な発展だろう。ドバイ産の原油は日本やアジアの石油市場で原油価格の指標になっているが、産油量自体は少ない。隣接するアブダビ首長国と違って、ドバイ首長国はもともと石油資源だけには頼れない国であり、早くから石油以外の産業の誘致と育成で独自の成長を目指してきた。

 1980年代以降の発展を主導してきたのは、ラーシド元首長の三男で2006年1月に即位した現在のムハンマド首長(UAE副大統領兼首相)である。
 ムハマンド首長(1949年生まれ)の口癖は、「未来は待つものでなく、自らつくるもの」。イスラム教徒が未来について語るときには、「インシャー・アッラー(もし神が望めば)」という一言を付け加えるのが普通である。だが、ムハマド首長は兄であった前首長の下で皇太子だった時代から、神の思し召しに任せるのではなく、国家運営に企業形成のセンスを加味し、「国際的な物流基地」「サービス業の拠点」「観光や航空のハブ」としての成長を戦略的に推進した。

 ドバイは空港を拡張し、自前の航空会社であるエミレーツ航空の育成に成功した。1990年に年間役500万人だったドバイ国際空港を利用する旅客数は、2005年には焼く2480万人と、15年間でおよそ5倍に増えた。航空貨物取扱い量は同じ15年間に九倍以上に増え、ドバイは湾岸地域の商都にとどまらない中東・アフリカ・南アジア地域で最大規模の運輸・物流のハブとなった。

 中東でもっとも便利でレクリエーション施設や娯楽の機会も多いドバイに、多くの外国人が吸い寄せられる。世界の有力企業の多くは、自社のビジネスと関連が深いドバイの特区に中東地域の統括拠点を置くようになった。ドバイに進出した日本企業の数も200社を超える。ドバイの人口は毎年、10%以上も増えているという。1980年代に40万人規模だったドバイの人口は、今や150万人を超える。150カ国以上の人がここで暮らし、アラブの国なのにアラブの人が少数派で、共通語は英語。ドバイは中東では稀有なコスモポリタンの街に変貌した。

 ウォータフロント開発の継続とともに、ドバイの開発の次の目玉となるのは、滑走路六本を24時間フル稼働させる計画の新空港だ。新空港と周辺に新設する物流関連施設を合わせたプロジェクトは「ワールド・セントラル」と名づけられている。「世界の中心」という呼び名のとおり、世界最大の航空貨物のハブにする計画だ。

[インフラが足りない]
 人口急増と産業多角化への対応で、まず必要なのは水と電力の確保だ。水と電力がなければ生活はできないし、製造業だけでなく商業やサービス産業でも水と電力の供給は先決事項である。水不足は世界的問題だが、中東は世界の中でも特に水資源が乏しい地域である。しかも人口が増え続けているから、年間に得られる一人当たりの水資源は減る一方だし、都市型の生活スタイルの浸透に伴って一人当たり水消費量は逆に増える傾向にある。
 海水を淡水化してつくる水は純粋すぎて化学物質に近く、そのままでは生活用水としては使えない。たとえばサウジの首都リヤドでは、ペルシャ湾岸にある淡水化プラントからパイプラインで運んでくる水と、内陸の深い井戸から汲み出す地下水をブレンドして、上水道で供給している。都市の生活用水としても不可欠である。
 サウジの紅海岸の大都市ジェッダでは、まともに上水道を使えるのは週に二日か三日という地区もある。

 サウジ、クウェート、UAEなどの一人当たりCO2排出量は先進国を大きく上回り、カタールの一人当たり排出量はアメリカの三倍近くに達している。資源の制約や地球温暖化への危機感が高まっている時代に、産油国はいつまでも、"悪役"になっているわけにはいかなくなった。
 降雨が少ない代わりに、中東にはあふれるばかりの太陽の光がある。太陽光をエネルギー源にすれば、石油・ガス輸出国の地位を長期的に確保することにもつながるわけだ。
 海面近くが温かく、深層が冷たい海水の温度差を利用する海洋温度差発電という技術がある。クウェートやカタールなどでは、この技術を応用して製油所からの廃熱を発電や増水に用いる事業について、日本のセネシスというベンチャー企業を商談を進めている。

[広がる教育改革の波]
 公文式算数、大ヒット
 初等教育の実験も広がってきた。ドーハのアル・イスラー独立女子小学校では、2006年から週明けの日曜(カタールでは金曜、土曜が休日)の朝一番に、英語による公文式算数教育をサブカリキュラムとして組み込んだ。公文式の導入はカタール産の液化天然ガス(LNG)の輸送にあたる日本郵船が同国の教育関係者に働きかけ、指導員派遣などの関連費用を負担することで実現した。洋数字に親しみ、計算に慣れるのが、大きな目的だ。
 アル・イスラー独立女子小学校の教室を覗くと、生徒たちは「クモンの時間は楽しい」と言い、指導に当たる教師は「掛け算の九九を覚えるという発想もなかった子供達の多くが、安産で答えを出せるようになった」「集中力の養成にも役立つ」と語る。

□今日の読書 ★★★★★

中東激変―石油とマネーが創る新世界地図 Book 中東激変―石油とマネーが創る新世界地図

著者:脇 祐三
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2008年11月23日 (日)

「よい印象」の言葉力 宮本 隆治

[よいアナウンサーの条件とは]
①庶民の目線を持つ
②トラブルに慌てず対処できる
 芸能、報道などのジャンルを問わず、アナウンサーにとって必須の能力・資質は、[臨機応変力]でしょう。
③いつも笑顔で
 結論から言います。最高の武器は、やはり笑顔だと思います。

 NHKでアナウンサーの採用試験の面接官を3年ほど担当しました。話してみると分かるのですが、明らかに、"面接攻略塾"で培った成果を発揮しようとする学生がいます。
 しかし、所詮は俄かの促成栽培。自分のものになっていません。その手の学生は、完全対策をしてきたという慢心の電源を抜くような想定外の質問をすれば、たいていすぐにボロを出します。たとえば、こんな質問です。

「今日、家を出てからここに車での間で一番印象に残った出来事は何でしたか?」
 殆どの受験生は、もっと高度な政局、経済、スポーツネタなど、時事関係のことを聞かれると思っていますから、この手の質問はまず想定していません。結果、しどろもどろになる人が多いのです。

 そうした中で一人、見事な答えをした女性がいました。私がその質問をすると、彼女はニコニコしながら、こう答えたのです。
「それはいまの質問です。まったく想定しておりませんでした。今朝、朝刊を二時間かけて隅からすみまで目を通し、それに関する質問が出たら何でも答えられる自信がありました。しかし、そんな身近なところには目がいきませんでした。自分の驕り、高ぶりが恥ずかしくなりました」
 当意即妙の見事な受け応えでした。まさしく先ほど挙げた「臨機応変力」です。私は迷わず彼女に「A」の評価をつけました。彼女は、その後の筆記試験の結果もよく合格。いまNHKのアナウンサーになっています。
 面接官をしていると、「この人はもうちょっとで『A』になれるのにな」と思う人がいます。限りなく「A」に近いのだけれど、「A」をつけるには躊躇される、紙一重の人です。

 そうした人に共通して感じるのは、自らの視点の弱さです。その点、彼女の場合は「いまの質問が一番印象に残っています」と、独自の視点でものが言えました。
 視点は個性であり、私達はそれで人物を判断するわけです。
 しかし、もし彼女に笑顔がなかったら、私はまた違う評価をしていたかもしれません。

[NHK的は面白さ、民放的な面白さ]
 NHKと民放では、番組に求めているものが違います。NHKが完成度(=安定)を求めるのに対して、民法は偶発性(ハプニング=非安定)を求める傾向が強いようです。
 たとえば、収録番組で司会が噛んだり、トチッたり(間違えたり)したとします。NHKの場合、その部分は番組として欠陥製品なのでカットし、もう一回取り直しをします。完成度(=安定)を求めるわけです。

 しかし、民法では、「それが面白い」と評価され、そのまま使われる。偶発性(=非安定)を求めているからです。当初は、「こんな欠陥商品でいいのかな・・・?」と悩みました。でも、民放ではそれが面白がられる。言ってみれば番組の"糊しろ"を面白がるのが民法で、NHKは絶対に糊代はお見せしない。これが両者の決定的な違いでしょう。
 違いが象徴的に現れるのが、打ち合わせです。NHKが打ち合わせをしすぎるとしたら、民放はしなさすぎます。

[刑事コロンボになってください]
 あの小池さんのコロンボの声は、実にすばらしい。肩の力を抜いて、リラックスした状態でお腹のそこから声を出す発声法は、しゃべりのプロの私達アナウンサーもお手本にしたいほどです。ですから、ぜひ皆さんも参考にしてほしいのです。
 そして、ソファに腰掛け、足でも組んで、3メートル離れたお母さんに向かって呼びかけてみてください。「お母さん、新聞とって!」と。
 そのときの声が、発声の仕方や声量、声の高さも含めて、あなたの最良の発声、「ベスト・ボイス」なのです。

□今日の読書 ★★★☆☆

「よい印象」の言葉力 Book 「よい印象」の言葉力

著者:宮本 隆治
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2008年11月21日 (金)

「垣間見」る源氏物語 紫式部の手法を解析する」 吉海直人

[空蝉・軒端の萩の「垣間見」]
 垣間見の基本的な概念として、従来は垣間見る側の存在を見られる側は知りえないとしているようである。ここで取り上げる空蝉巻の垣間見についても、垣間見ている源氏の存在に、空蝉も軒端の荻も全く気づいていないという前提で読んで来たのではないだろうか。ところが源氏の存在を暗示するものとして、空蝉の弟小君がその場にいることについては、これまであまり注意が払われていなかった。ここで小君に注目すると従来の読みがどのように変容するのか、この点について少しばかり私見を述べてみたい。
Photo_2

 第一に案内役の小君(空蝉の弟)が、
東の妻戸に立てたてまつりて、我は南の隅の間より、格子叩きののしりて入りぬ。のごとく大きな音を立てていることに注目しておきたい。
これに関して新編全集の脚注21では、「叩きののし」ったのは、人々の注意を自分のほうに引き付けて、褄戸にいる源氏の姿にきづかせないようにする策略と注記してある。そのために小君はややオーバーアクションをしているわけである。それは単に格子を「叩きののし」ったというだけでなく、「あらはなり」と言って対応に出た御達(老女房)に対してもわざわざ、

 御達、「あらはなり」と言ふなり。「なぞ、かう暑きにこの格子は下ろされたる」と問へば、「昼より西の御方の渡らせたまひて、碁打たせたまふ」と言ふ。さて向かひゐたらむを見ばやと思ひて、やをら歩み出でて、簾のはさまに入りたまひぬ。

 と逆に問いただしている点にも注目したい。その会話の声は妻戸にいる源氏の耳にも届いていた。この会話によって内実が源氏に説明されたことになる。というよりも小君は、源氏に聞こえるように意識して行動しているのであろう。同じく新編全集の脚注27に、「「さて」は、女房のいう、二人が碁を打っている状態で」とあるのも参考になる。だからこそ源氏は、碁を打っている空蝉と軒端の荻を垣間見たいという衝動にかられ、すぐさま行動に出ているのである。幸い「紛るべき几帳なども、暑ければにや、うちかけて、いとよく見入られる」と暑さのお陰で丸見えだった。

□今日の読書 ★★★★☆

「垣間見」る源氏物語 紫式部の手法を解析する  /吉海直人/著 [本] 「垣間見」る源氏物語 紫式部の手法を解析する /吉海直人/著 [本]
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2008年11月19日 (水)

「中国大崩壊―世界恐慌のシナリオ」柘植 久慶

[日本人観光客の危険]
 
 中国の商店街でブランド物を見つけたら、ホテルのショッピングモールでない限り、それこそ120パーセント偽物、と考えて間違いない。その多くは広東省で製造されている。
 それではと食品に目を転じると、天洋食品製品のほうがまだ安全と思われる品ばかりだ。どういった場所で生産されているのか、先が見えないので、気味が悪い。
 酒ならと考えても、中国全土に氾濫する偽酒の情報を知ると、銘柄はしっかりしていても、中味がどうなのか信用できない。これまた買う場所を考えないと、みやげ物に使うことがはばかられてしまう。

 玩具は鉛が塗料に使われていることが多いから、全く問題にならない。安かろう悪かろうで直ぐに壊れる。あたかも1950年前後の日本の輸出品を思わせる。
 衣料品もまた有害物質で染められているため、着ていると体内に吸収される危険性が大きい。とりわけ幼児とか年少の子供には、たちどころに影響が及ぶ。
 少し高尚なところで端渓の硯を選ぼうとすると、広東省の原産地でもはや資源が枯渇しており、本物など殆ど出回っていない。高級な墨もまた、下手なところで購入したらすべて偽物である。

 それではと漢方薬の店に行くと、有名な冬虫夏草など驚くほど高価だ。掘り出し物を見つけようなどと考えると、たいてい偽物を掴んでしまう。外見だけ知っていても、かえってそれが欺かれる原因となる。
 もし気に入った品があっても、金額をよく確かめてから紙幣を渡す。という注意が必要になってくる。なかには多額の釣銭となると、返してこない不正直な店員がいる。外国人で言葉が通じないと、ごまかす連中が結構出てくる。これもまた中国人の特徴と考えておきたい。

[毒入り餃子など氷山の一角]
 米作は華中と華南に絞られているが、全体計画のないまま工業化が進められたことにより、中国の農業はすでに末期的症状が随所に見受けられた。

 それでは副食の分野ではどうだろうか。これもまた主食の分野と同様に、現状でも極めて惨めな状態を招いている。河川の流れ込んでいる海岸と沖合いの漁業は汚染に軒並みやられて食べられる魚など全くない。

 そのため上海あたりの富裕層は、近海魚に見向きもせず、ひたすら日本からの輸入品や遠洋漁業の魚を買ってゆく。築地の魚市場で日本の業者が、鮪の大物を競り負ける、という事態まで招いているのだ。

 20世紀中盤まであれほど盛んだった河川の漁業も、現在では全くの壊滅状態である。未処理の工業排水が大量に流れ込み、魚がすべて死滅してしまったという。
 そうした工場で製造されるのは、商品とは名ばかりの「ガラクタ(ジャンク)」で、マーケットはアフリカの開発途上国しかない。そこでも資源の無駄遣いという、地球の耐用年数を減少させる企てが、中国人によって進められている。

 より重要なのが大地や河川の汚染だろう。そうした汚れた大地に育った豚が、汚れた河川や地下水の水を飲み、やがて食肉市場に出荷されてゆくから凄まじい。
 中国人の民族性からすると、病気で死んだ豚とかSARSで死んだ鶏などは、絶対に知らん顔で出荷してしまう。もし保健所に届けても一文にならないためである。

 これがSARSの被害を統計上、少なくしていると考える人もいる。

[アフリカを呑みつくす中国]
 中国政府は資源を有する国家を片っ端から調べ上げ、欧米の進出していない先への外交攻勢を強めた。そうした国家はたいて非民主的どころか、インチキ選挙をやってきた独裁的なところばかりで、欧米が進出に二の足を踏んでいた先だ。しかしながら中国は委細構わず、外交関係を高いレヴェルに格上げして、大規模な進出をやってのけた。
 資源と密接に結び付いた中国のアフリカ諸国への進出先は次のようなところがある。

 コンゴ民主共和国・・・・・銅、コバルト
 ジンバヴエ・・・・・・・・石油、他の鉱物資源
 アンゴラ・・・・・・・・・石油
 スーダン・・・・・・・・・石油、他の鉱物資源
 ナイジェリア・・・・・・・石油、セメント
 サントメ・プリンシペ・・・石油
 ガボン・・・・・・・・・・石油、鉄鉱石、材木
 ザンビア・・・・・・・・・銅

 これら8カ国の政権は揃いも揃ってロクなところがない。ジンバヴエなどは大統領選挙が終わって四週間以上も結果が発表できない--すなわち事実上大統領が敗北した、というとんでもない国家である。前回の大統領選挙も不正が囁かれており、ロバートムガベはアフリカ最悪の権力者の一人だ。

 欧米諸国は独立時の白人農民に対する約束が守れないどころか、農場から追い出しを企てたことにより、農業が壊滅してしまたのだから、欧米諸国は呆れて距離を置いた。そこへ中国が喰いこんだのであった。
 
 中国は何かを突破口として進出を果たすと、直ぐに資源を自国に向け送り出す。そのままだと外貨--ハード・カレンシで以って対価を支払わねばならない。そこで中国の採った方法は、電気製品、自動車、機械、繊維製品、兵器、雑貨などを輸出し、支払いが生じないというものである。

 このためジンバヴエではとんでもないことが起こり始めた。安価な中国製の繊維製品が安売りの店で氾濫し、地場産業を壊滅させたのであった。現地で生産される衣料品はたちどころに駆逐され、これはナイジェリアと全く同じパターンで、集中豪雨のような輸入品の洪水に、そこでも失業者続出という破目に陥ったのだ。

□今日の読書 ★★★★★

中国大崩壊―世界恐慌のシナリオ Book 中国大崩壊―世界恐慌のシナリオ

著者:柘植 久慶
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2008年11月17日 (月)

「見えない恋―メールだけで恋愛しました」ミサ

件名:こんにちは

 初めてメールします。大阪在住28歳調理師をしています。175センチ71キロ野球をやっていました。見た目はそんなに悪く言われたことがないかもしれません。スポーツが大好きです。遠出のドライブにもよく行きます。仲良くなってどこか遊びにいけたらいいですね。返事待ってます。

件名:はじめまして
 アメリカのロサンゼルスに住んでいますが、実家は東京です。僕は開発研究の仕事をしてます。毎日仕事に追われています。
 趣味はビリヤードで、アメリカ人を相手にトーナメントでプレーしています。
 僕は典型的なO型です。のんびりした性格です。
よろしければ返事をください。お願いします。

--------------------------------------------------------------------

 このメールがダメな理由。まず、第一に、自分のことしか書いてない。私のプロフには一切触れてない。誰彼かまわず送ったってのが、すぐ分かる。自分に興味を持ってくれる子をひっかけようとするのはいいけど、自分から気の合う女の子を探そうって意欲が全く見えない。誰でもいいのかな。

 第二に、その内容に惹かれない。それに文体も形式的。突っ込みどころも全くないし、これにどんな返事を期待してるんだろ・・・・後者なんか文体そのままでも、ちょっと書き換えるだけで最後の「お願いします」が説得力を持つのに・・・・もったいない。

--------------------------------------------------------------------
薄暗い部屋に着くとすぐにパソコンの電源を入れる。

 Will you love me?

□今日の読書 ★★★★☆

見えない恋―メールだけで恋愛しました Book 見えない恋―メールだけで恋愛しました

著者:ミサ
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2008年11月15日 (土)

「やまと教 日本人の民族宗教」 /ひろさちや

[仏教とヒンドゥー教は、まったく違った宗教]
 
 誰もが知っているように、仏教はインドに発祥した宗教です。では、仏教とヒンドゥー教はどう違いますか? 二つの宗教の関係はどのようになりますか・・・・?

 その点に関しては、現代インドのヒンドゥー教の学者は間違っています。日本人がインド旅行すると、インド人ガイドはヒンドゥー教の学者の考え方を我々に聞かせます。
 その結果、間違った考え方を教え込まれることになるので、注意せねばなりません。

 ヒンドゥー教の学者の考え方は、基本的には、
---仏教はヒンドゥー教の一派である-----


 というものです。まあ、ある意味で、このような主張も可能は可能です。というのは、インドに発祥したものすべての宗教をヒンドゥー教と見なすといった考え方があるからです。

 けれども、仏教とヒンドゥー教は、その根本思想・哲学が違うのです。
 仏教の開祖の釈迦は、婆羅門教のヴァルナ(四姓)の制度に反対しました。釈迦の時代のヒンドゥー教は"婆羅門教"と呼んだほうがよいでしょう。

もちろん"婆羅門教"はヒンドゥー教の古い形態であり、根本思想に違いはありません。婆羅門教もヴァルナ・アーシュラマ・ダルマを説いている宗教です。釈迦はそれに反対したのです。

[七福神の戸籍調べ]
 江戸後期の禅僧に仙厓義梵(1750-1837)がいます。彼は独特の洒脱な墨画で有名で、白隠禅師(1685-1768)とともに近世禅画の双璧とされています。
 あるとき、檀家の新築祝いに仙厓が招かれました。主人は仙厓和尚に、お祝いの揮毫を頼みます。

「ああ、よしよし」と、仙厓は気軽に引き受け、そして、
---ぐるりっと家を取り巻く貧乏神---
 と書きました。主人は渋い顔です。あたりまえですね。新築祝いに貧乏神なんて、真っ平ごめんですよね。

 しかし仙厓和尚は、にこにこしながら下の句を続けました。
---七福神は外へ出られず---
なるほどこれなら、めでたい文句に間違いありません。

 では、われわれは、七福神の戸籍調べをしてみましょう。

 最初に夷(えびす)。この紙はまた、"恵比寿"、"恵比須"とも表記されます。国籍は日本人です。狩衣に風烏帽子をつけ、右手に釣竿、左手に鯛を持っています。本来、漁民が信仰する神様でしたが、転じて海運業守護、商売繁栄の神様になりました。

 次に大黒天、どうやらこの神の出身地はインドのようです。インドのヒンドゥー教のシヴァ神は、インド人に一番人気のある神ですが、じつは破壊の神、死の神なんです。そんな不吉な神がどうして人気があるのか不思議ですが、インド人は、
「だって新しいものが誕生できるのは、古いものが死ぬからでしょう。破壊イコール創造なんですよ」と説明します。まあ、そういわれてみるとその通りですね。

 で、このシヴァ神は異名を"マハーカーラ"といいます。「偉大なる黒き神」といった意味です。それが、"大黒"です。
 この大黒天が仏教とともに日本に入ってきました。すると日本では、"大黒"すなわち"ダイコク" が"大国"に通じます。そこで大黒天がオオクニヌシノミコト(大国主命)と習合して、その結果、あの柔和な福相を帯びた大黒様のイメージが出来上がったのです。だとすると大黒天は、インド人と日本人のハーフですね。

 その次は毘沙門天。別名は多聞天です。仏教の守護神で、財宝と福徳のほかに子宝も授けてくれるといいます。国籍は明らかにインドです。インドでは、北方世界を守る神とされています。

 そして弁才天。この女神もインド出身です。ヒンドゥー教の河川神であるサラスヴァティーが仏教に取り入れられたのです。ヒンドゥー教では音楽や弁才、知恵をつかさどる女神で、だから"弁才天"と表記されていたのですが、日本に来てからはいつのまにか、"弁財天"と表記されるようになり、財宝を授けくれる福徳神に変身したのです。

 その次は福禄寿と寿老人。福禄寿は中国民間信仰の神で、南極星の化身とされています。そして、寿老人は福禄寿の異名です。同体異名の神を二人とも七福神にしているので、区別するために、福禄寿は短身、長頭で、長いひげを描き、杖を携え、鶴を従えさせています。一方、寿老人の方は、杖を持っているのは同じですが、頭に被り物をし、うちわを持ち、鹿を従えています。

 ともあれ、この二神の国籍は中国です

 最後に布袋。この人は歴史上の実在の人物で、中国、後梁時代(十世紀前半)の禅僧でした。僧名を契此(かいし)といいますが、いつも肩に布製の袋をかけて歩いていたので、庶民から、"布袋和尚"と呼ばれ親しまれていた人物です。ですから、この神も国籍は中国です。

□今日の読書 ★★★☆☆

やまと教 日本人の民族宗教  /ひろさちや/著 [本] やまと教 日本人の民族宗教 /ひろさちや/著 [本]
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2008年11月13日 (木)

「eメールの達人になる」村上 龍

[結びの文]
■「よろしくお願いします」
■「お手数をおかけします」

平凡だが、そのふたつはよく使う。かなり親しい人でも何か頼むときは、最後にその二つのいずれかを使う。
「面倒なことを頼んでしまって恐縮ですが、なんとかうまくやってください」
 というニュアンスが含まれているので、便利だ。

 冒頭からメール本文にかけて、簡潔で正確な文章を並べて「仕事上の依頼・指示」を書いた場合、結びの、「よろしくお願いします」「お手数をおかけします」が生きてくることがある。
「この人はやけに無機的で簡潔なメールを書くが、意外と儀礼的な部分も持ち合わせているのだな」
 というふうに、メールの末尾で受信者が安心できるわけだ。

■「ご検討ください」
 仕事上の提案のメールの末尾にはそう書く
「ご検討のほど、よろしくお願いいたします」

 だと、ていねいすぎて、緊迫感が失われる。

■「お返事、お待ちしています」
 という結びの文は、わたしは使わない。厚かましい感じがするからだ。相手にできるだけ負担をかけない、というメールの鉄則に反する。

できるだけ早くレスポンスが欲しいこともある。
 その場合は、
■「お手数ですが○○日までにメールをいただけると助かります」
■「できましたら○○日までに返信いただけると助かります」
という表現をよく使う。

■意外と親切なのは、返信の必要がないことを明記したものだ。
事務的な内容であれば、
■「ご連絡まで」
■「ご報告まで」
というようなあいさつ文で結ばれていると、「返信不要」に近いニュアンスになる。
■「このメールに関する限り返信は不要です」
 わたしはよくそう書く。

■「この件、OKでしたら無視してくださって結構です」
■「変更がある場合のみ、返信ください」
■「何か問題がある場合のみ、ご連絡ください」 
 不要なメールが減るわけで、効率的でもある。

[Subject:件名]
 保管しているメールを参照する必要が生じたときは、「件名」で探すが、件名がメールの内容を表していないと苦労する。しかも、ほとんどの件名は似たようなものが多くて、さらにイライラすることになる。
「お知らせ」
「お願い」
「ご連絡」
「ご案内」
 といったものが圧倒的に多い。しかも別件のメールでも、すべて同じ件名なので探すのに時間がかかる。

■「本日の打ち合わせは中止です」
 シンプルな情報の伝達と連絡はメールの基本だ。伝達と連絡では、伝えるべき用件を送信者が正確に把握していなければいけない。何を当たり前のことを、と言われそうだが、案外むずかしい。

■「早めにお返事いただけると助かります」
 このときに、なぜ返事を急いでいるのかという理由は書き添えておいたほうがいい。

 用件の緊急度にもよるが、
 「こちらの進行状況ですが、今週末がデッドエンドです。失礼ながら金曜夕方までにお返事いただけると助かります」
 というような表現なら簡潔性を維持し、かつ相手に不快感を与えずに済む。

■「~していただくと助かります」
 という表現は、相手への依頼や指示や命令ではなく、自分の都合(利益)を明かすわけで、それが正直さを演出するかも知れない。
■「~してくれるとうれしいです」
 うれしい、という言い方になるとさらに可愛くなる。まるで子犬がお腹を見せて仰向けになっている感じがする。

[英語]
 正確なニュアンスを伝えたいときは、日本語より英語の単語のほうがぴったりくるケースがある。特に短い返信などの場合、くどくどと説明するよりその一言で済ませてしまったほうが早いという便利な英単語がある。

 意外と便利なのが「no problemです」という返事だ。日本語のメールに英単語を使うわけだから、ほとんどの人がその意味を知っている言葉を使わなくてはならない。「no problem」 の意味を知らない人はまずいない。
 そのほかに、better, best, and, or などをよく使う。

□今日の読書 ★★★★★

eメールの達人になる Book eメールの達人になる

著者:村上 龍
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2008年11月11日 (火)

「パソコンは日本語をどう変えたか」

[画像に負けない文字を]

 この席には、ヒラギノのデザインを担当した本人である字游(じゆう)工房のお披露目であった。

 開発のコンセプトは2点。ひとつが「グラフィックと並べて違和感がないこと」、もうひとつが「ほかと類似しない書体であること」だった。
 デジタル全盛期であるにもかかわらず、フォントデザインの基本は今も「手書き」である。たとえば、偏や旁などのパーツを用意しておいて、コンピューター上でそれを組み合わせてデジタル的に文字を作ることはできる。しかし、それだけでは見た目がきれいにならないのが漢字の難しいところだ。たとえば同じ「サンズイ」でも「湖」と「汐」ではバランスを変えなければならない。同じ幅で収めるためには「湖」のほうのサンズイを狭くしなければならない。見た目のバランスは非常に重要だ。こういうことは機械的に処理できるものではなく、長年の経験で得た勘に頼ってバランスをとる作業が必要になる。

[大学生は中学生より漢字を知らない]
 「日本漢字能力検定協会」が2005年に実施した「漢字能力調査」では、中学・高校・大学の新一年生、新卒社会人の計8365人を対象に行われた。

 その結果、正答率は中学生から順番に78.5%、59%、39.8%、60.7%となった。普通に考えれば、高学年になるほど漢字に接する機会が増えるので、習熟度も高まりそうなものだが、結果は逆になっており、大学1年生の正答率が最も低かった。
 これは教育のせいなのか。ちょっと考えると、コンピューターや携帯電話が普及したことで、漢字を、日本語を使う能力が低下しているのでは、という疑問が生じてくる。

□今日の読書 ★★★☆☆

 

パソコンは日本語をどう変えたか (ブルーバックス) Book パソコンは日本語をどう変えたか (ブルーバックス)

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2008年11月 9日 (日)

「こころと脳の対話」河合 隼雄,茂木 健一郎

[愛は盲目は脳科学的に正しい]
 茂木 脳科学でも、関係性という部分では、われわれは「コミュニケーション」という言葉を使うんですけれど、脳内の伝達の過程がどうなっているかということはかなり研究されてきています。
 脳科学で、人間の関係性についての最近でいちばんおもしろい研究のひとつは、相手をクリティカル(批判的)に値踏みする領域は前頭葉にあるのですが、いままさに熱烈に恋愛中だという人に観察対象になってもらって、その恋人の写真を見せるんですね。そうすると、そのクリティカルに相手を値踏みする領域の活動がオフになるんです(笑)。つまり、マキャベリ的知性(ヒトの知能は複雑な社会環境の変化に適応することで高度に進化したとする仮説)といわれている。
 「愛は盲目」というのは、まさに脳科学的に立証されるんです。

 河合 おもしろいですね。そのときにオフになるというのは、つまりオンとかオフのスイッチのようなものがあるんですか。
 茂木 それはまだ、因果関係はわからないんです。脳活動としては、fMRI(機能的磁気共鳴映像診断法)で血流の変化を見て、その領域の活動が低下しているということまではわかるんですけれど。要するに、まだシステムになってないんですね。そういう意味でいうと。
 河合 システムというと、みんなシステムを統制するセンターというのを、すぐ連想しますね。ところが、おそらく、僕はセンターはないんじゃないかと思う。
 茂木 そうだと思います。

[言語に依存しすぎの現代人]
 茂木 河合先生は、以前私と話をされたとき、「誰かと話していて、聞いているこっちがつらくなるときは、相手の症状が重いんだ」とおっしゃっていましたね。
 河合 はい。
 茂木 それは、カウンセリングをされるなかで、はっきりと感じられる実感なのでしょうか。
 河合 話しの内容には関係なく、こっちの苦しみのほうが多くなるんですんね。
 茂木 そこまで確固とした感覚があるのでしょうか。
 河合 そうですね。こられた方に「どうですか」いうたら、「いや、べつにふつうです」いうて、そんなに困ってないようなことを言っておられるんだけど、そのうち聞いてる僕がものすごく疲れてくるんです。すっごくしんどくなってくる。こういう人は、絶対、むずかしい人だと思いますね。その人の言語的表現と違うものが僕に伝わってくるわけですね。そういうものをキャッチできる人間に自分を鍛えているんじゃないかと思いますけれど。
 茂木 その話をうかがって、僕はこのあいだある作家の方とお目にかかる機会があって、三時間ぐらいしゃべったあと、もうドーッと重くなって、それで河合先生の半紙を思い出したんですね。(笑)
 河合 いや、その方も疲れたんじゃないかと僕は思いますけれどね。(笑)
 茂木 それって何なんですかね。
 河合 やっぱり僕らの知覚というのは、どうも言語に頼りすぎているんですよ。言語表現に頼りすぎているけれど、本当は僕の体験なんかでいうと、言語で表現されてるのは一部分でしょう。
 たとえば、「どうでした?」と訊いて「ああ、おもしろかったですよ」といったって、たんに「おもしろい」いうようなもんやないでしょう。ほかに、ものすごいたくさんありますね。それをいちおう「おもしろい」という言葉にしているわけです。
 その言葉にするときに、その人の体験が、その人のなかで動くじゃないですか。そういうのを僕らはキャッチしていると思う。やっぱり生きるうえでは必要なことなんですかね。
 河合 それはそう思いますよ。だからわれわれも、もっとその人をよく理解できたり、わかったりするわけでしょう。

□今日の読書 ★★★★☆

こころと脳の対話 Book こころと脳の対話

著者:河合 隼雄,茂木 健一郎
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2008年11月 7日 (金)

「シニアの読書生活」 鷲田 小彌太

シニアの読書生活 (MG BOOKS) (MG BOOKS) Book シニアの読書生活 (MG BOOKS) (MG BOOKS)

著者:鷲田 小彌太
販売元:エムジー・コーポレーション
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[一生幸せになりたかったら、読書がある]

 衣食住に心配がないという条件下で、あと一つだけ、かなうものがあるとしたら、あなたは何を望むだろうか。こう自問してほしい。

 開高健がたえず口にしていたチャイナの古い諺がある。
  一時間幸せになりたかったら酒を飲め
  三日間幸せになりたかったら結婚しろ
  一週間幸せになりたかったら豚を殺して食べろ
  一生幸せになりたかったら釣りを覚えろ
 開高の釣りキチガイは世に知られている。「オーパ!」を一読すればわかる。
 では、開高を地球の果てまでも魚をもとめて狂騒的に釣りへと誘った深い動機は何か、ご存知だろうか? 他でもない、妻(結婚)から逃れるためだったのである(そうだ)。
 開高の釣りは、現実逃避から生まれた副産物だったのだ。
 開高が生きたのは日本である。開高が、どれほどのドランカーでも、グルメでも、釣りキチでも、本がなければ生きてゆくことができなかったのである。若いとき、本物の飢餓と精神的飢餓の「地獄」からかろうじて開高を救ったのは、読書であった、と述懐している。

[寝るとき、枕元の本がなければ]
 読書好きの人は、たいてい枕元に本を置いている。私の妻もそうである。人間、毎日寝るのだから、枕元で読んだ本の数は、バカにならないだろう。
 ジュニア期からミドル期にかけて、私も横になりながら本を読んだ。冊数からいうと、一番多いのではないだろうか。枕元に、何十冊と本が並んでいると、もうそれだけで幸せ、という気持ちになれた。

 ところが、寝て読むと、姿勢に無理がでる。人間の部位で重いのは、頭と腰である。頭と腰を支えるために、腕、肩、背骨、膝等の身体の各部署に無理がゆく。各所が痺れる。だから、横になって本を読むためには、終始、姿勢を変えなければならない。しかも、目線が一定しない。照明もたえず変えなければならない。思うに、寝る姿勢は、長時間の読書には適していないのである。

[一年計画と、読書メモ]
 第一命題、計画はショートレンジ(a short-range plan 短期計画)がいい。
 計画は、一年がいい。それを四季に分け、月単位にし、週間計画、さらには、一日に、そして、一日を午前と午後、できれば、四分割して、朝、午前、午後、夜にとなればいい。
 第二命題、計画はラフ(rough租)がいい。
 これもしたい、あれもやらなければ、と最大漏らさず「計画表」に書き込んである計画は、実現性の薄い、実行力の伴わないものだ、と思ってもいい。

[浪費が利益を生む]
 読書の第一で最大のものは「暇つぶし」である。これが私の意見だ。人間は浪費を好む「贅沢」な存在なのだ。「浪費」は人間のマイナス性格ではない。根本かつプレス性格なのだ。この高速の消費社会は、ますますその性格を強めている。浪費しない人間社会は、ついに滅びるとみなしていい。
 読書のための読書、浪費としての読書、これはもっとも人間的な行為の一つである。

[定年後に読む本を選定する]
1.極めつけのエッセイ
『父の詫び状』向田邦子(文春文庫 1981)
『笑わぬでもなし』山本夏彦(文春文庫 1984)
『夜明けの新聞の匂い』曽野綾子(新潮文庫 1990)
 この美人作家は、老いてますます健在で、老人には耳が痛い話題に富むが、読後感は、精神衛生上においても、非常にいい。

『低空飛行』丸谷才一
『風に訊け』開高 健
『人間の蚤の市』高峰秀子
『時代を読む』鮎川信夫
『本とつきあう法』中野重治
『残る本 残る人』向井敏
『鞍馬天狗のおじさんは』竹中労
『男たちへ』塩野七生
『人とこの世界』開高 健
『努力論』幸田露伴
『機械仕掛けのホモ・サピエンス』古川俊之
『環境先進国日本』長谷川慶太郎
『論語の新研究』宮崎市定
『日本人とは何か』山本七平
『文明の生態史観』梅棹忠夫
『生命の意味論』多田富雄
『歴史の世界から』司馬遼太郎
『歴史の中の日本』司馬遼太郎
『古往今来』司馬遼太郎
『歴史と視点』司馬遼太郎
『日本史の誕生』岡田英弘
『江戸時代』大石慎三郎
『文明の海洋史観』川勝平太
『日本史からみた日本人』渡部昇一
『用心棒日月抄』藤沢周平
『三屋清左衛門残日録』藤沢周平
『隠し剣』藤沢周平
『私が殺した少女』原尞
『あなたに似た人』ロアルド・ダール
『隅の老人の事件簿』バロネス・オルツィ
『天上の青』曽野綾子

□今日の読書 ★★★★☆

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2008年11月 5日 (水)

「これから―50代の居場所」 夏目房之介

[金子光晴の老い方]

 金子光晴「衆妙(しょうみょう)の門」(桜井滋人による聞き書き)という本がある。
 大学を出たばかりの私は、これで金子光晴のファンになった。詩や文のほうはほとんど知らないが、この本にあらわれる金子老人に惚れたんである。
 もういきなり最初から最後まで女遍歴の話。猥談。きわどい話。そればっかし。
 当時私がもっていた老人というイメージからは想像もつかない、びしゃびしゃと音をたてそうな生々しい口調。それでいて下卑たいやらしさのない堂々たるスケベ。こんな老人が目の前にいたら、思わず一日中でもお話をうかがってしまうに違いない。

 人に聞いたところによると金子老人、初対面のときはムスッとしていかにも偏屈。こりゃかなわんなと思っていると、いきなりスケベの話を始めるのだという。写真で見るかぎり、眼光鋭い、いかにも偏屈そうな老人であった。そりゃたしかにドギモを抜かれるだろう。

 たとえば百戦錬磨の三十代の女性に、あっちの達人について聞く部分はこんな調子だ。<<赤坂の太鼓もちの名人がいたてえの。これは長襦袢でそろりと入って、ああはじまったな、と思うともう何もわからなくなっちまうんだって>>

 うーん、すごそうである。で、その女性がそのあとでいうんだそうである。
<<でも、ああいうの技巧がすぎて、あとで嫌なものよ。やっぱりあなたのようなのがいいわ>>
 うふふ。なるほど。柳家三亀松(みきまつ)(って誰も知らないか)。歳をとると、こんなことも話せちゃうのか、と初めて読んだ頃は思った。

 あこがれのジジイ群像を並べてみてわかるのは、私のあこがれる追い方にモノサシになりうる共通項がある、ということだ。

 その一。老いの自然な芸を感じること。すなわち彼の存在自体が面白いこと。
 その二。後悔や未処理な感じを与えないこと。後悔や未処理なことは、ふつうに人生を送っていれば、誰だってきっとあるにはちがいないが、もはやそれとは別の心の居場所ももっている感じがするということだ。
 この心の居所については、かすかながら推測がつく。後悔や未処理なもの、冷や汗ものの実人生があればあるほど、しまいにはそれをどっか別の場所から他人事のように見ないと人間をやっていけなくなる。そんな、実人生や人間そのものを、遠くから眺めざるをえない場所である。

 漱石は理不尽にこわい父親だった。父もそうで‥‥、若い頃の私も‥‥、だから今の長男もそうらしい。因果応報とはこのことか。トホホ

□今日の読書 ★★★☆☆

これから―50代の居場所 (単行本)

夏目 房之介 (著)

Korekara

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2008年11月 3日 (月)

「奇跡の10倍整理術」 ジェフリー・ジェイメイヤー

[60パーセントの"不用品"をいますぐ追い出せ]
 あなたの机の上に目をやってほしい。いったい何が見えるだろうか。さらに言えば、見えないものは何か。
 もし、机の表面がごく一部しか目に入ってこないようなら、あなたは、"積み重ねマニア"に陥ってしまっている。本来の目的通りに机を利用していない。したがって、仕事の能率も生産性も、あなた本来の能力どおりに上がっていないのだ。明らかに貴重な時間を浪費してしまっている。
 机の上を整理することによって、かなりの時間の節約ができるようになる。ただ単にやり残しのある仕事に関する資料や書類をすぐに取り出すことができるというだけで、ずっと能率は上がるのである。

 冷静になって机の上を見直し、余計なものすべて捨てて系統立てて整理すること。単に机の上をきれいにすればいいというのではない。常に自分の頭の中できちんと系統立てて整理された状態にしておくようにする。本当に問題にしなければならないのは、「時間と金の節約」である。あなたの仕事の質と時間の使い方を向上させることが肝心なのだ。

[一分一秒を効率よく生かすこの工夫]
 まず、大きな紙の上に一日の時間帯を書き込んでほしい。この表が、あなたの一日の仕事の計画を系統立ててこなしていく習慣を身につけるための有力な武器となるのである。

 まず、マスター・リストを参照しながら、翌日の行動計画を左の「本日の予定」欄に細かく書き込んでおく。
 商談や打ち合わせのアポイントメント、電話をする相手名、日常的な連絡作業やデスワークなど、予定している時間のところにきめ細かく記入する。この日程表に多くのことを書きすぎないかと心配する必要はない。
 ここで大事なことが、自分の時間についてスケジュールを組んだり、コントロールすることがどんなことかの感じをつかむことである。そして、この作業は、一日の仕事を終え、退社する前の最後の作業として行う。

 翌日、出社したあたなには、その実行を思い出させ、迂回への注意を促すものが二つ待っている。マスターリストとカレンダーである。
 そのスケジュールを忠実に実行することだ。重要な仕事を棚上げし、安易な作業に迂回しそうになったら、そこで厳しく自分を戒める。そうすれば、時間を有効に活用することができ、仕事は予定どおりに進んでいく。
 第二の方法もやはりスケジュールの厳守に関するものである。確かに日常的な事務処理作業を軽んじてはならない。得意先や顧客に手紙を書いたり、電話をかけたりということも、あなたにとっては大切な仕事の一環だ。
 だが、私が指摘したいのは、なぜ、そういう重要度が低い作業を、(より集中力や切れのいい頭脳の働きを必要とするという意味で)一日のうちで最も生産性が高くなる時間帯にわざわざ行うのか、ということなのである。あるいは、一日中ダラダラとそういう作業を優先させて行っているのか、ということである。これでは、明らかに一日中「棚上げシンドローム」に陥ってしまっている。

[朝一のミーティングほどもったいないものはない]
 朝のミーティングをすべて11時以降に行うことにして、それ以前の時間は最も重要な仕事にあてるのだ。

[先のばし、棚上げは、時間の借金をするようなもの]
 作家のマーク・トウェーンは次のような忠告を残している。
「あさってでもできるようなことを、明日まで延ばすような真似は絶対にするな」
 いつでもできることなら、今すぐやってしまえということを、皮肉をこめて言ったものである。
 問題は、先送りにしたことは最終的に決してなしえないということである。あるいは、ようやくなんとか重い腰を上げて作業に取りかかる頃には、タイム・リミットが間近になっていて、精神的な重圧が非常に大きくなっている。だから、実力を十分に発揮できずに終わってしまう場合が多い。

[割に合わない"殉教者"になることは拒否しなさい]
 新しいプロジェクトの担当を要請されたり、現在進行中の仕事関連の追加作業を頼まれたりすれば、現在、自分が抱え込んでいる未完了の仕事のことなどまるで考慮に入れず、とにかく「YES」と答えてしまってはいないだろうか。
 それが出世への道だと思っているからそうしているのか、上司にいい印象を与えたいから無理を承知で引き受けるのか、それとも、"殉教者"になりたいのか。

□今日の読書 ★★★★★

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2008年10月31日 (金)

「官僚との死闘七〇〇日」 長谷川 幸洋

[政治を根底で動かしている基本図式]
 
 いまや「与党」VS.「野党」、「自民党」VS.「民主党」ではない。「与野党双方の改革派」VS. 「政権内抵抗勢力」という構図にシフトしつつある。参院での首相問責決議が象徴したような与野党対立は陳腐化した。与野党の改革派が手を結んで公務員制度改革の法案を成立させた経験は、やがて政界再編にも影響を及ぼすにちがいない。

 ある高級官僚が語った言葉がある。
「政治主導なんてのは言葉だけだ。政治家なんて結局、おれたちがいなくては、なにもできないのさ。官僚がこの国を動かす仕組みは永久に変わらないんだ」
 追い詰められた霞ヶ関官僚の本心を物語っているのではないか。
 だからこそ、霞ヶ関との戦いは続く。これは安部政権から現在に至る約2年間の戦いと、今後を展望した中間報告である。
 
□今日の読書 ★★★★★

官僚との死闘七〇〇日 Book 官僚との死闘七〇〇日

著者:長谷川 幸洋
販売元:講談社
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2008年10月29日 (水)

「貧乏人の逆襲!―タダで生きる方法」 松本 哉

[食い逃げ作戦]
 まずは、携帯ショップの店頭なんかに置いてあるサンプルの携帯電話を手に入れよう。これは携帯ショップやフリマなんかでタダ同然で手に入る。で、まず、適当に高級ホテルのレストランなんかに行き、さんざんいいものを食べる。そして、タバコでもすいながらおもむろにニセ携帯を取り出し「ああ、○○さん。いまどこですか。‥‥うん、目の前だ。いま迎えに行きますよ。ちょっとそこで待っててください」などとニセ会話をして、適当な書類を入れた封筒とともに、携帯をテーブルに置き(←これが重要)外に出てそのまま帰る。去り際に「じゃあ、コーヒー二杯持ってきといて」などと注文していけばもうバッチリだという。携帯があるので店員も安心しきるので、これで捕まったことはないとのこと。

[葛飾の別荘作戦]
 ペンキ攻撃も大成功に終わったのはいいのだが、敵もさる者、まんまと警察を呼ばれて逮捕され、留置場に送られた。しまった!!
 いやー、これは不覚だった。‥‥と思ったのもつかの間。これがまたびっくりするぐらい楽しい所だった! 留置場は6人部屋で、ヤクザの親分から、麻薬の売人、福建省から来たけどビザが切れたラーメン屋店主、ゲーム喫茶の逮捕要因店長、ベロベロに酔って人を殴ったランボー怒りのアフガン風のアメリカ人、痴漢、殺人犯、偽造カード製造業の香港人など夕方のニュースで見るような人々が勢ぞろいしている。前科26犯の詐欺師なんてのもいた! どいつもこいつも話題が豊富すぐて、毎日腹がよじれるくらい笑いながら雑談していると、とても牢屋の中とは思えないほどの楽しさだ!! 普通では絶対聞けない極悪情報から、詐欺師の話術、凶悪犯の人生観など、とてつもない社会勉強になり、本当にすごかった。

 こんな連中と、毎日毎日ヒマなものだからゴロゴロして漫画を読んだりしている。イメージとしてはちょっとガラの悪いユースホステルみたいなもんだ。諸君も機会があったらぜひ一度行ってみてほしい。
 
[恐怖!すっぽかしデモ]
 2004年の年末、しかもクリスマスイブの24日と大晦日の31日の両日、数百人規模のデモを申請して、実際にはほとんど行かなかったことがある。しかも名称も「反政府デモ」!これはビビるだろ。
 まんまと、やたら図体のでかい機動隊が数百人いるわ、すわアルカイダの登場かとも様子を見に来た公安刑事はいるわの大騒ぎになっていた‥‥。下っ端の警官や機動隊員には気の毒だが、まあ、たまには権力者にも牽制球を放っておかないと何をし始めるか分からないので、就いた職が悪かったとあきらめてもらうよりない。
 
□今日の読書 ★★★☆☆

貧乏人の逆襲!―タダで生きる方法 Book 貧乏人の逆襲!―タダで生きる方法

著者:松本 哉
販売元:筑摩書房
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2008年10月27日 (月)

「アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)」 松本 仁一

[植民地支配が生み出した部族国家]
 
 アフリカでは他部族国家がほとんどだ。多くの場合、選挙は出身部族の人口比で決まってしまう。その結果、国益より部族益が優先されるケースが多い。ジンバブエのムガベ大統領は人口の八割を占めるショナ族の出身だ。ショナ族に有利な政策をとっていれば選挙で敗れることはない。それが、政権が長期化し、腐敗が進行した大きな原因である。

 植民地支配がアフリカに引いた国境線は、数多くの多部族国家を作り出した。それは国民意識を形成する上での障害となり、国民国家をつくりにくい状態を生み出した。国民が部族への帰属感を強く持ち、国家との一体感が薄い状態があると、権力者の腐敗をとがめる者がいなくなる。そのため、腐敗は非常な速さで進行していく。

[殺人は一日50人] アフリカ
 1998年度の殺人事件は21,553件。強盗228,442件、強姦52,425件。
 2005年度、殺人事件は18,545件。強盗194,449件、強姦54,926件。
南ア警察発表の数字だ。98年以降、殺人事件の件数は減少しているが、それでも2005年には一日当たり50人が殺されている。強盗、強姦など、凶悪犯罪全体の発生傾向は大きく変わっていない。それよりも、むしろ、けた違いに多い凶悪事件が毎年発生していることが、問題なのだ。

 民間調査機関「治安問題研究所」の調べによると、2001年の殺人事件の起訴率はわずか25%。強姦18%。強盗4%、カージャックにいたっては3%にすぎない。犯罪者の「やり得」状態が生まれている。同研究所は2001年の年次報告書に「われわれは戦いに敗れた」というタイトルをつけた。

[新植民地主義システムの新しい主役]
 西アフリカのセネガルが独立後、フランスでは援助名目で「コーペラン」(行政顧問)を大量に送り込んだ。未熟な現地官僚はそうしたコーベランに頼りきり、行政はコーベランが取り仕切るようになった。
 1980年代、アフリカ開発銀行が融資してセネガル川に三つのダムを建設する事業が始まった。同銀行は日本が最大出資国で、セネガル川流域の砂漠を農地に変え、食糧自給率を高めようという目的だった。しかし、ダムが完成したとき、流域の新しい可耕地はフランスのピーナッツオイル会社に買い占められていた。ダム建設を知った建設省や農業省の仏人コーペランが、ダム建設予定地などについての非公開情報を、フランスの企業に横流ししていたのである。

 農業予定地を買い占められてしまったため、地域農民は食糧自給がますますできなくなった。その結果、農民は農業労働者としてフランスの落花生農場に雇われて働き、フランスから輸入された小麦粉やコメを買って生活せざるを得ない境遇に落ち込んだ。
 そんな状態を招いたのは、仏人コーペランを排除しようとしないセネガル政府指導者の責任であることは明らかだ。指導者みずからが、自国を植民地的な境遇に陥れてしまったのである。

[アフリカの中国人]
 個人ベースの中国商人が入り込む一方で、アンゴラには政府ベースでも中国人が入り込んでいた。目当ては豊富な石油である。
 アンゴラの石油埋蔵量は80億バレルといわれる。サハラ以南のアフリカでは、ナイジェリアに次ぐ大産油国だ。急激な近代化でエネルギー確保に危機感を抱く中国が、それに目をつけた。

 2004年10月、中国政府にODA名目で20億ドルを融資し、アンゴラ政府は日量1万バレルの石油で17年かけて返済するという契約が結ばれた。中国側の融資はの内容は「住宅建設、道路・鉄道の補修」だった。
 その20億ドル融資プロジェクトのほとんどすべてを中国の国営企業が受注した。中国企業からは本国から労働者をごっそり連れてきて工事にあたった。設備も資材も中国から運んできた。アンゴラ人労働者は雇われず、アンゴラに金は落ちなかった。20億ドルは中国労働者の賃金、機材の代金として中国に還流した。

[国から逃げ出す人々]
 日本で働くアフリカ人の皮切りはガーナ人と言われている。彼らは1980年代後半からバブル期の日本に来はじめ、最初は埼玉県など東京の近郊の小工場で働いていた。しかしその後の不況で職を失い、95年ごろから都心に移ってくる。ビジネスセンスのある数人が、原宿などで、ヒップホップ系の店を始めた。六本木で風俗店のドアマンになるものも出てきた。
 ナイジェリア人は遅れてやってきたが、都心ではたちまちガーナ人を追い越した。やがて六本木の風俗店の客引きビジネスを独占する。

[アフリカ開発会議]
 2008年5月末、日本政府が主催する「第四回アフリカ開発会議(TICADIV)が横浜で開かれた。政府は、アフリカ53カ国中40カ国の首脳が参加したことで会議は成功だったと評価し、今後五年間で対アフリカ政府援助(ODA)を倍増すると宣言した。

 しかし、アフリカ首脳の多くが本書に出てくるような状態であるとき、日本が彼ら首脳を相手とした旧態依然のアフリカ外交を続けていていいのだろうか。
 ましてや、倍増を宣言したODAの多くの部分は円借款、つまり返済が必要な融資である。これまで30年間、いかに多くのアフリカ政府指導者が援助国からの借款を私物化し、債務のツケが国民に回されてきたか。今回、倍増を約束した日本のODAが、むしろアフリカの大衆を苦しめることにつながるのではないかと心配になる。

 TICADは五年に一回だ。前回のTICADからの五年間で、アフリカ最大の問題である「政府の腐敗と統治の失敗」がどう改善されてきたか。日本政府は国別にそれを検証し、場合によっていはTICADを、政府でなくアフリカの人々を対象にした会議にするべきではないだろうか。さもないと日本は、腐敗した首脳から足元を見られた「甘いスポンサー」になってしまうだろう。

□今日の読書 ★★★★★

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書) Book アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

著者:松本 仁一
販売元:岩波書店
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2008年10月25日 (土)

「日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト」古田 隆彦

[少子高齢化ではなく、少産・多死化]
 人口減少の原因はどきにあるのでしょうか。高名な人口学者は「少子化のためだ」と主張し、新聞やテレビも「少子・高齢化のためだ」ときめつけています。が、いずれも現実を見誤った見解にすぎません。
 人口の増減は、海外からの転出入がない限り、出生数と死亡数で決まります。出生数が死亡数より多ければ増え、少なければ減ります。少子化でいくら出生数が減ってもベビーはゼロにはなりません。なにがしかが生まれる以上、人口は前年より増えます。他方、高齢化で寿命が延びれば、死亡者は確実に減っていきますから、前年より減少分は減るはずです。

 少子化でも出生数が存続し、高齢化で死亡数が減っていくとすれば、出生数と死亡数の差はプラスになる可能性があります。つまり、少子・高齢化だけで人口が減るとは限りません。増えることさえあります。「詭弁だ」といわれそうですが、物事を正確に表現すれば、「少子・高齢化で人口が減る」とはいえないのです。

 では、なぜ人口が減るのでしょう。うそれは、2005年に死亡数が出生数を追い越したからです。生まれてくる人の数より死ぬ人の数が多くなる。そうなれば当然、人口は減っていきます。
 出生数が減ることを、人口学の「人口転換」論では「少産」と表現しています。社会の進歩発展に伴って、人口動態は「多産多死」(高出生・高死亡)から「多産少死」(高出生・低死亡)へ、さらには「少産少死」(低出生・低死亡)に至るというものです。ここでいう「少産」という言葉には、出産数そのものの減少が意味されています。

 この言葉に「化」をつけて「少産化」とすると、それが進む背景としては、

①出産適齢期にあたる女性人口が減ってきた、
②晩婚や非婚を選ぶ人たちが多くなってきた、
③結婚しても子供を作らない夫婦が増えてきた、
などが考えられます。その背景として、結婚・出産適齢期の人たちの間では、結婚したり子供を作ることより、自分の好みの生き方や暮らしを優先するという選択が増えていることがあげられます。

 一方、死亡数が増えることも、人口転換論では「多死」と表現しています。この言葉を引き継いで「多死化」という言葉を使うと、その要因としては過去50年間、平均して三年に一歳ずつ伸びてきた平均寿命がそろそろ限界にちかづいたという事情があります。マスメディアなどではまだまだ延びると書いていますが、実際のところ、一歳延びるのに、今後10年間では五年、その後の10年間では九年もかかる、という段階に入っています。こうなると、すでに高年齢層の人口が増え始めていますから、死亡数も当然急増します。いわば、「高齢化がはじけて多死化」となるのです。

 平均寿命が限界化したのは、現代の栄養水準や医療水準をもってしても、これ以上大幅な延命が不可能になってきたからです。栄養水準でいえば、昨今の豊か過ぎる食生活は逆に寿命を縮めています。医療水準でいえば、人工臓器や延命装置などを使用すれば、確かに100歳以上にまで寿命を延ばせるでしょう。だが、そのためには膨大なコストがかかりますから、一部の高額所得者はともかく、国民全体の寿命を延ばすまでには至りません。つまり、現代医学の最先端をもってしても、平均寿命を大幅に延ばすのはもはや無理な状況に入ってきました。

 このように少産化の背景には、近代的な生活様式や現代医学の限界があります。要するに人口が減るのは、出生数が減って死亡数が増加する「少産・多死化」のためであり、「少子・高齢化が人口減少の原因」などといっているのは、まったく不可解なことです。

 一部の工業先進国だけが高価な工業製品を生産し、大半の発展途上国は農業生産を担当する、というアンバランスな国際構造が進んでいました。こうした環境の下では、工業製品の価格が農産品より必然的に高くなりますから、高い工業製品を売って安い農産品を買うのは極めて賢明な方法でした。
 戦後の日本はこうした方策を積極的に推進することで、本来なら7600万人程度の人口許容量を一気に1億2800万人へと伸ばしてきたのです。

[逆転する農工の立場]
 ところが、こうした方策は今や限界に差し掛かっています。世界の産業分布では、発展途上国産品は工業化に伴う労働力の減少や農業用地の縮小などで、次第に供給不足へ向かっており、それに伴って価格も上昇し始めています。

 実際、2007年に入ってから、世界の穀物需給は逼迫の様相を強めています。生産量はなお増加しているのですが、中国、インド、ブラジル、ロシアなどで消費量が急増しているうえ、バイオマス燃料原料用の需要が重なって、需給バランスが大きく崩れたからです。小麦、米、大豆などの穀物の期末在庫量は、世界人口を養うに必要な量に換算して、55日分しかありません。過去最低の水準であり、異常気象や穀物投機などが起これば、世界的な食糧パニックへ進むおそれもあるでしょう。

 農林水産政策研究所が2003年末に行った、穀物価格の予想では、アジア地域の都市周辺部で、優良灌漑農地の多くが工業用地などへ転用されていることを考慮して、2030年までに、米は1.2倍、小麦は1.7倍、とうもろこしは1.6倍ほど上昇する、としていました。ところが、昨今の価格水準はすでにこの予測を超えています。

[マルサスの人口思想]
 マルサスは1798年に「人口論」第一版を出版し、「人口は幾何級数的に増加するが、食糧は算術級数的にしか増加しないから、その帰結として窮乏と悪徳が訪れる」という有名な理論を発表しました。人口と食糧の間には伸び率の差があるから、必ずパニックへ突き進む、というのです。そのショッキングな内容で、この本はたちまちベストセラーになりましたが、同時に厳しい批判にも晒されました。そこで、マルサスは何度も書き直し、1826年にようやく第六版を完成させました。最終版でマルサスが到達した結論はおよそ次のようなものです。

①人口は生活資料(人間が生きていくために必要な食料や衣料などの生活物質)が増加するところでは、常に増加する。逆に生活資料によって必ず制約される。

②人口は幾何級数的(ねずみ算的)に増加し、生活資料は算術級数的(直線的)に増加するから、人口は常に生活資料の水準を超えて増加する。その結果、人口と生活資料の間には、必然的に不均衡が発生する。

③不均衡が発生すると、人口集団には是正しようとする力が働く。人口に対してはその増加を抑えようとする「能動的抑制(主として窮乏と罪悪)や「予防的抑制(主として結婚延期による出生の抑制)が、また生活資料に対してはその水準を高めようとする「人為的努力(耕地拡大や収穫拡大など)」が、それぞれ発生する。

④人為的努力によって改めてもたされる、あらたな均衡状態は、人口、生活資料とも以前より高い水準で実現される。

□今日の読書 ★★★☆☆

日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト (幻冬舎新書) Book 日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト (幻冬舎新書)

著者:古田 隆彦
販売元:幻冬舎
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2008年10月23日 (木)

「世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃」 ジョセフ・E・スティグリッツ,リンダ・ビルムズ

[社会にのしかかる戦争のコスト]

 ここで、イラクとアフガニスタンで続いている戦争の真の社会的コストを見積もってみよう。これは財政的コストを超過した、つまり政府が支払う金額を超過したコストだ。死亡者ひとりにうき、VSL720万ドルとして、死亡した兵士それぞれに政府が支払う50万ドルを差し引く。重傷については、障害補償で支払われる金額を除き、負傷の頻度に応じて経済的な損失の価値を計算する。

 失われた命の価値、重傷や精神障害による経済的損失の価値、仕事をあきらめたり介護人を雇ったりしなければならない家族の社会的コストを計算に含め、障害を負った退役軍人に政府が支払う給付金を差し引くと、イラク戦争の財政支出を除いた経済コストは、"最良"シナリオでも2620億ドル、"現実よりの保守的"シナリオでは3670億ドルとなる。アフガニスタンと関連の活動を加えれば、コストは2950億から4150億ドルにおよぶ。

 "最良"シナリオには、直接の戦闘で負傷して除隊した兵士と、非戦闘で重傷を負った兵士の半数のみを含めた(負傷者の数の増加分、つまり平時の軍での推定死傷者数に加算される分の数値にちかづけるため)。

 この50%増加分の負傷が、別の形の障害にもつながると推定したので、重度のPTSD患者は50%、失明、重度の資格障害、難聴、外傷性脳損傷などの深刻な非戦闘員での負傷も50%のみを含めることとした。

 しかしながら、この手法には著しい制限が加えてある。すでに26万3000人の兵士がVAで治療を受けており、5万2000人がPTSDと診断されたことを考えれば、非戦闘での障害者数を半分に減らすことはきわめて恣意的な推定だと思われる。そのうえ平時には、予備軍や州兵軍の兵士は配置されること自体がまれなので、その死傷者数は非常に低いはずだ。
 
 したがって、"現実よりの保守的"シナリオでは、社会的コストを計算する際、すべての重傷者を考慮に入れることにする。ここには、敵対的および非敵対的な状況で発生した重傷者すべてが含まれる。計算では、医療救助が必要となったすべての兵士に、全PTSD患者の三文の一を加え、治療のため戦域から搬送されたその他の重傷者すべてに起因する経済的損失を補うわずかな給付金を差し引いた。

 どちらのシナリオでも、戦闘中に負傷し、治療され、任務に復帰した兵士たちは、その障害について支払われる小額の手当以上の損失はこうむらないものと推測した。性格の質低下のコストはまったく含めていない。極めて深刻な外傷や精神障害を伴う負傷者の世話をする家族のコストは含めた。要するに、私たちは極端に控えめな見積もりを行ったのだ。家族がかかえる未払いの医療費の増大や、生活の質の低下を含めれば、この数字は大幅に上昇するだろう。

 しかし、重大な戦争のコストはほかにもあり、その一部は定量化がむずかしいが、現実に存在する。そこには、兵士やその家族にかかるコストだけでなく、アメリカの経済と全国民にかかるさらに幅広いコストも含まれている。

[カトリーナ被害は戦争優先のつけ]
 次に、州兵軍と予備軍の大規模な配置によって生じる国内の欠員補充の財政的コストについて検討した。定量化がむずかしいのは、州兵や予備兵を国内にとどめておかないことで生じる費用だ。彼らの多くは通常、消防署や警察署で、あるいは緊急医療スタッフとして、地域社会の重要な"第一応答者"の役割を果たしている。彼らを地域社会から引き離したことで派生した影響は、ハリケーン・カトリーナによる大災害という無残な形で例証された。ハリケーンが襲来したとき、3000人のルイジアナ州兵と4000人のミシシッピ州兵はイラクに駐在したいたのだ。

 過度の要求をつきつけられた予備兵と州兵は、さらに戦争の別のコストにも対処させられている。国内に残る州兵に供給される装備が、十分ではないという事実だ。これが2007年の夏に致命的な影響をおよぼした。カンザス州グリーンズバーグに突然の竜巻が発生し、10人が死亡、数百人が負傷したのだ。州兵は、車両と重機の40~50%としか稼動させていなかった。救助活動に必要な装備の大半は、イラクへ輸送されていたからだ。州議会議員ドナルド・ベッツはこう語った。

「竜巻が襲った直後に州兵が出動して、町の安全を確保し、瓦礫をかたづけ、生存者がいるかどうかを確かめていれば、人々を救えたかもしれない。応答時間があまりにも遅く、それがひとつの傾向となっている。この傾向はカトリーナ後から見られ、過去の過ちを繰り返す結果とも言える」

 GAO(政府説明責任局)は、2007年1月、州兵の装備品不足に関する報告書を発表したときに、まさにこの問題について警告していた。
「州兵軍を連邦の海外任務に多用しているため、州が国内任務において利用できる装備品が減少してしまっている。また、残った州兵軍は国内での広範囲にわたるおびただしい数の脅威に立ち向かわなければならなくなっている。」

[コストの総計]
 本章では、政府の財政的コストには反映されない兵士とその家族にかかる社会的・経済的コストに焦点を当てた。これらのコストの一部は用意に定量化できるが、その他の部分はかなりむずかしい。可能なものだけ計算すると、イラク戦争の総コストにおよそ3000億から4000億ドルのコストが加わる。(ここでは、政府がすでに人命の損失に対して、あるいは傷害への補償として支払った財政的コストを超過した経済的コストのみを加えている)

 これによって、総コストは---利息を含まずに---"最良"シナリオで2兆ドル、"現実寄りの保守的"シナリオで3兆1000億ドルとなった。

 さらにもうひとつ、重要なコストがある。経済全体にかかるコストだ。この戦争は、アメリカ経済にも世界経済にも、よい結果をもたらしてはいない。この先何年にもわたって、さまざまな問題が派生してくるだろう。乳六できません。にゅうにゅう

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2008年10月21日 (火)

「最強ウイルス―新型インフルエンザの恐怖」 NHK「最強ウイルス」プロジェクト

[ある女性の死--それは、世界を揺るがす事件の始まりだった]

 ジャカルタから航空機でおよそ2時間。スマトラ島北部の小さな村で、その"事件"は起きた。オランダ統治時代から商業で栄えるというこの島最大の都市メダンを出て、南東方向に車を走らせるとその村は現れる。人口1350人のクブシンブラン村。村人の多くが、果物や野菜の栽培で生計を立てている農村だ。

 のちにインデックスケース(第一例目の患者)と呼ばれることになる女性プジ・ボル・ギンティン(37歳)は、この村の入り口近くにある木造平屋建ての家に、三人の子供と年老いた母親とで暮らしていた。

 プジが、最初に体の不調に気づいたのは、2006年4月24日のことだった。額に手を当てると少し熱っぽい。普段は、村で採れる野菜や果物を近くの市場まで運んで売るのが生業だが、熱と体の痛みのため、立ち上がることさえできなくなったという。
 自宅でビニール製のゴザの上に横たわりながら、プジは、次第に呼吸が苦しくなっていくのを家族に訴えた。陸にあがった魚のように口を大きく開け、呼吸しようとするが、酸素をうまく取り込めないのだ。

 看病には、ブジの19歳と18歳になる二人の息子と隣に住む妹(29歳)があたっていた。家族は、高熱が一向に下がらないブジを村の診療所に連れて行き、抗生物質やビタミン剤をもらい飲ませたが、少しもよくならなかったという。

 その数日後、ブジは呼吸困難に陥った。スマトラ島奥地の山間をぬう狭い道路を車で2時間近く走り、ブジは、メダンの私立病院へと運び込まれた。自力で呼吸できなくなっていたブジは、直ちに集中治療室へと担ぎ込まれ、人工呼吸器が装着された。だが、いくら呼吸器で酸素を押し込んでも、血液中の酸素濃度は下がったままだ。次第に唇や爪の色が紫色へと変わっていく。ブジの肺は、すでに酸素を受取る力を失っていた。さらに血管内に多数の血栓ができて全身の臓器が障害を起こす"DIC゛と呼ばれる症状も出始め、もう手の施しようがなかった。病院に運び込まれてわずか数時間。ブジは息を引き取った。医師は肺結核を疑っていたが、結局死因は不明とされた。

 インドネシアではこうした事態は、そう珍しいものではない。だが、このあと続いた異変は、世界中の専門家たちを震撼させるに十分だった。その異変は、ブジの死の翌日から始まった。

[異変の始まり]
 ブジが死亡した翌日の、2006年5月5日。村では、ブジの親族や親しい村人たちが集まり、葬儀が執り行われる手筈になっていた。この村では、自宅に遺体を置き、家族や親戚が集まって、数日間、大切な家族の死を悼むのが習慣だ。
 ブジの遺体もメダン病院からクブシンブラン村に送り返され、自宅の土間の上に横たえられた。本来なら参列者が、若い母親の死を静かに悼むはずだった。だが葬儀は、ブジの親族たちの身に現れた異変で、異常な事態へと変わっていったのだ。

 村で長年、医師替わりを務めている看護師のアレムは、その異変を目の当たりにしたひとりだ。アレムは最初、何がおきたのか良くわからなかったと話す。

 ブジの葬儀の日、アレムのもとに最初にやってきたのは、ブジの妹のアンタとその娘のレナタだった。アンタは、「頭がとても痛い。具合が、どんどん悪くなってきて治らない」とアレムに訴えた。1歳半になる娘のレナタも額に手を当てると高い熱が出ている。アレムは診療所の奥の部屋にあるベッドに横たわって休むよう促した。

 異常を訴える村人は、このあともさらに続いた。次に来たのは、亡くなったブジの二男ポ二だった。鼻から血を流している。「頭が痛い。体が熱い」。ポ二はアンタと同じ体長の異変を訴えた。かなりの高熱が出ている。さらに続いて、長男のロイもやってきた。ロイも高熱を出し、意識も朦朧として苦しいという。ふたりはアレムが抗生物質を手渡すと、再び母親の葬儀に戻っていった。だが翌日に行われた二日目の葬儀には、皆、出ることができなかった。ブジと同じように呼吸ができない苦しさに、立ち上がることさえできなくなっていたのだ。

 異常を訴える親族は、このあともさらに増えていった。ブジの弟ジョネス、そしてブジの甥のラファエル。わずか2日の間にブジの周囲で同じような症状を示す患者は、4家族わたり計6人にまで増えていったのだ。

 6人とも抗生物質を投与しても容態は回復せず、ブジと同じように次々と呼吸困難に陥っていった。息ができない、苦しいと訴える患者たちを前にアレムは恐ろしくなったと話す。もう彼女の手ではどうしようもなくなっていた。

 1歳半の女の子から29歳の女性まで男女あわせて6人が同じひとつの村から、しかも、同時に呼吸困難を訴えて運ばれてくるのはどう考えても異常な事態だった。それは、ある不吉な結論をスロソに突きつけていた。蛍光灯の光に照らし出された胸部X線写真は、その患者も胸の肺の部分が真っ白く濁っている。重い肺炎の症状だ。しかも、すりガラス状に曇るその白い影は、小さな病原体が肺の隅々にまで入り込んでいることを示していた。ウイルス性の肺炎とみて間違いない。スロソは鉛のような重い感覚が全身にのしかかってくるのを感じた。

「全員が高熱、呼吸困難を訴え、激しい咳が続いていました。重症の肺炎、そして白血球の減少が血液検査で確認され、鳥インフルエンザに間違いないと思ったのです」

 アンタに続いて、一人娘のレナタ、ブジの二男ボニ、そしてブジの甥ラファエルも次々と死んでいった。6人全員の体からは、鳥インフルエンザウイルスH5N1が検出された。H5N1による世界最大の集団感染の発生だった。

[遺伝子の交雑]
 鳥インフルエンザのH5N1は、致死率60パーセントという毒性の強いウイルスだが、ヒトからヒトに感染する力は弱い。一方、毎年ヒトの世界で流行を引き起こしているH1(Aソ連型)は、毒性はH5N1に比べれば格段に低いものの、ヒトからヒトに感染する力は極めて強い。
 この二つのウイルスが同じ人物に感染したとき、極めて危険な事態が起きる恐れがある。
 ふたつのウイルスが、互いに遺伝子を入れ替える交雑である。つまり、この交雑によってH5N1の毒性を受け継いだ上に、H1の感染力を持つ、極めて危険なウイルスが誕生する恐れがあるのである。実際、過去のパンデミックを振り返ると、1957年のアジアかぜ、そして1968年の香港かぜでは、こうした遺伝子の交雑によって新型インフルエンザウイルスが誕生し、大流行を引き起こしたとみられている。進藤は看護師がH1に感染していたという事実を知ったときの恐怖をこう語る。

「人間のH1ウイルスと鳥のH5N1型とが、同時に非常に至近距離で、発生しているわけですよ。こんなに近い距離でニアミスをおこしているということですよね。もう確率の問題です。私たちが恐れていたあの遺伝子の交雑がサイエンスフィクションではなくて、実際に起こりうることとして目の前につきつけられたんですよ。まさにあの場合は、本当にパンデミックの現場にいるんだなと。目の前で新しいウイルスが誕生するのを見てしまうかもしれないと思いました。」

「私たちは、いや世界はラッキーだったのです。あのH5N1のウイルスがヒトからヒトへと次々に感染する力を獲得しなかったのですから。しかし、次に大きな集団感染が起きたとき、また同じ幸運に恵まれるとは限らないのです」

[国の行動計画]
 日本の新型インフルエンザ対策は、世界的に見てもかなり早い段階から始まっていた。厚生労働省は、1997年に香港でH5N1が初めてヒトに感染する前から、専門家による会合を開き、新型インフルエンザ対策を始めているのだ。その後、数年のブランクはあったが、2005年には、国としての行動計画を策定した。

 この行動計画では、全国民の25パーセントが感染、うち2500万人が発症して医療機関を訪れ、最悪64万人が死亡するとし、ウイルス感染を防ぐためのプレパンデミックワクチンの原液製造、さらに治療薬となるタミフルの備蓄、また、学校の休校、大規模集会の自粛、国際線の旅客機の運航自粛など、国内での感染拡大を抑えるための対策の柱が示されている。

 しかし、日本の対策には、根本的な問題があると、厚生労働省の新型インフルエンザ対策専門家会議のメンバー、押谷仁東北大学教授は話す。
「日本の対策は、すべて中途半端なんです。どの対策を柱としてウイルスの感染拡大を防いでいくのか戦略がありません。厚生労働省が進める対策は、抗ウイルス薬やワクチンの備蓄など、国民や政治家に『これだけやっています』という公衆衛生学的な視点が欠落しているんです。このままだと、どの対策も有効に行えず、被害が広がるということになりかねないと思っています。」

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2008年10月19日 (日)

「ブラジル 巨大経済の真実」 鈴木 孝憲

[奇跡の高度成長と日本のプレゼンス]
 
 1960年代後半から70年にかけて、ブラジルは、”奇跡のブラジル゛といわれた高度成長を実現した。(70年代の年平均成長率は7.7% で、7年間10%を超える成長が続いた)。この時代にブラジル産業界は重化学工業化(バイーア州のカマサリ石油コンビナートなどを完成)を実現したが、73年と79年のニ度の石油危機で、成長を支えていた原資の外貨借り入れがままならなくなり、82年にはモラトリアム状態に陥り(このときは中南米のほとんどの国が同時にもらトリウムに入った)、対外債務問題が表面化した。

 しかし、この時期に、ブラジルの資源が世界から注目を浴びた。日本も資源確保の見地から、ブラジルの大型ナショナルプロジェクトに官民で参加した。アマゾン・アルミ・プロジェクト、カラジャス鉄鉱山開発、ツバロン製鉄所建設、セラード農業開発プロジェクト、セニブラ日伯パルプ資源開発等であり、一国でこれだけ次々と大型プロジェクトに協力した例は、ブラジルの歴史でもこのときの日本だけである。

 この時代、高度成長のブラジルに対する外資の第二次進出ブームが起こり、日本企業も二輪車、食品、化学・石油化学、建築、機械、保険、銀行、繊維などの業種に進出した。ブラジルは、この時代、新興工業国(NICs=韓国、台湾、香港、シンガポール、メキシコ、ギリシャなど10カ国)のトップにランクされていた。1970年代の最後の頃には、ブラジルに進出している日本企業の数は500社を超えていた

[ハイパーインフレとモラトリアムで失われた10年間]
 しかし、1985年3月に21年続いた軍事政権からの民生移管が行われると、政治家たちが発言権を増し、収入のあてのない予算支出を続々と増やした。そのため、それまで軍事政権がインテグセーション(通貨価値修正)を使いながら何とか年率200%ぐらいで水平飛行されていたインフレがあっという間にハイパー化し、ブラジル経済は混乱し始める。
 1986年2月にはハイパー・インフレ抑制のための物価・賃金・為替を凍結する「クルザード・プラン」が実施され、一瞬インフレはゼロになったが、すぐに再燃してさらにひどくなっていった。86年から91年までに五回、物価・賃金・為替の凍結策が実施されたが、90年3月のコロール政権スタート時には預貯金まで封鎖するショック療法がとられ、企業は売上金を封鎖されて給与などの支払いができず、年金生活者は生活費を封鎖されるなど国中が大混乱に陥った。

[ハイパー・インフレ収束ですっかり変ったブラジル]
 ブラジル経済を根本から変えたのは、1994年7月に導入されたインフレ抑制策の「レアル・プラン」だった。同プラン導入直前のインフレ率は月間で50%で年間3000%近かったが、このハイパーインフレが経済の緩やかなドル化を骨子とする「レアル・プラン」で見事に収束したのである。
 1993年5月に蔵相に就任したカルドーゾ(全大統領)は、なんとかこのパイパー・インフレを収束させる手はないか模索した。ハイパー・インフレの最大の原因は国民の自国の政府と通貨に対する信頼の喪失にあるが、ものすごい原価通貨のハイパー・インフレも米ドルに換算してみるとインフレはほとんどない。そこで通貨を米ドルにリンクさせて経済のゆるやかなドル化を実施してみてはどうか、というアイデアが出てきた。

 1993年12月、カルドーゾは「レアル・プラン」の骨子を発表。国民に対してプランの詳細を事前に説明すること、抜き打ちの物価凍結等は絶対に行わないことを約束して協力を要請し、この約束を最後まで守った。

[世界一、恵まれた国]
 西暦1500年のポルトガル人たちによるブラジル発見以降のブラジルの歴史をみると、この国の経済を支える農産物や鉱物資源が次々に出現していることがわかる。ブラジル発見当初はメキシコ以南のスパニッシュ・アメリカ諸国と異なり、ブラジルには金銀財宝はまったく見当たらず、ポルトガル人たちをがっかりさせた。唯一、紅い染料のとれる〝ブラジル"と呼ばれる木だけが金目のもので、ポルトガル人たちは土着のインディオにこの木を伐って海岸まで運ばせてポルトガルへ持ち帰り、アニリン系の化学染料が出現する以前のヨーロッパの宮廷では紅いロープなどに使われ、貴族たちに珍重されたという。そしてこの木の名前から現在の国名「ブラジル」がつけられたが、これだけではどうしようもないといので、ポルトガル人たちは北大西洋のアソーレス諸島からサトウキビをブラジルに持ち込んで植えた。サトウキビからとれる砂糖は瞬く間に国を支える貴重な農産物となり、現在もブラジルは世界一の砂糖の輸出国だ。

 コーヒーもオランダ領ギアナ経由でブラジルに入ってきており、ブラジルはその後世界一のコーヒー生産国となった。次いでゴム、胡椒もブラジルの特産品になった。ゴム景気で20世紀初め、アマゾンの密林のど真ん中にあるマナウスを大いに栄え、いまでも当時建てられたオペラハウスが残っていて往事を偲ばせている。
 胡椒(ポルトガル語でピメンタ)は日本人移民がブラジルに向かう途中のシンガポールに船が寄港したときに仕入れた種を持ち込み、アマゾン流域で試行錯誤の末についに栽培に成功したものだ。最近では大豆もブラジル経済を支える代表的な農産物となっている。

[無尽蔵の地下資源]
 ブラジル南東部に日本が経済協力して建設されたウジミナス製鉄所があるミナス・ジェライス州がある。ミナス・ジェライスとはあらゆる鉱物資源がとれる鉱山という意味だ。ブラジルにはないと思われていた金が17世紀にこのミナス・ジェライス州でとれるようになり、ブラジルもゴールドラッシュの時代が訪れた。
 
 ブラジルの輸出の代表産品の一つである鉄鉱石もまずミナス・ジェライス州で産出した。同州では鉄鉱石のほかにもマンガンなどの非鉄金属、金、ダイヤモンド、アメジストなどの宝石類やウラン等まで産出されており、ミナスの山々はすべて鉱物資源の鉱床といわれている。

 鉄鉱石についてはアマゾンのカラジャス鉄鉱山もある。1970年代のある日、アマゾン上空を偵察飛行中の空軍機に乗っていた将校が森林地帯の一か所に樹木のまったく生えていないところを見つけて調査したところ、純度60%を超える鉄鉱石の山が露出していた。これがカラジャス鉱山の始まりだ。この鉱床の埋蔵量は当時、自由世界の需要の500年分を賄えるといわれた。産出される鉄鉱石はマラニヤウン州イタキ港まで960キロメートルを鉄道で運ばれ、日本向けを含めてすべて輸出されている。このカラジャス開発プロジェクトには日本が経済協力を行ったが、これらの鉄鋼石の産出現場から山並みを越えて鉄鉱石を運搬するベルトコンベアや、電気機関車が100両以上の貨車を引っ張って港まで運ぶシーンは、日本人には想像もできない壮大さだ。

 まだある。アマゾンのボーキサイトだ。これも日本が経済協力して現在、アマゾン・アルミ・プロジェクトとして稼働しており、日本にもアルミニウムを輸出している。

[ついに出た石油]
 80年代初めまで出ないといわれていた石油が(当時、ブラジルの石油自給率は15%レベルで、残りは輸入に依存していた)、その後、リオ・デ・ジャイロ近くの海底で次々に発見され、海底油田掘削技術(現在、ブラジルが世界一)の開発と進歩のおかげで、2006年にはついに石油自給率(この時点の石油消費量は日量190万バーレル)100%を達成している。その後も新なた石油や天然ガスの鉱脈が次々に発見されており、近い将来、ブラジルは石油の輸出国になるであろう。 
 
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2008年10月17日 (金)

「日本の諺・中国の諺 両国の文化の違いを知る」 陳 力衛

[腐っても鯛(くさってもたい)]
 
 日本人は昔から海の鯛、川の鯉、鳥の鶴を食物の三尊と呼んでいた。そして、マダイは目出度い魚とされ、祝いの席に供される。「魚は鯛、人は侍、木は檜」のように大変すぐれた価値を持つものとして先人の評価が込められている。その鯛が少々腐っても、「本来優れた価値を持つものは、おちぶれてもそれなりの値打ちがある」というわけである。
 一方、中国にも同様に「痩死的駱駝比馬大(痩せ細ったラクダであっても馬よりは強い」という言葉がある。砂漠という過酷な環境下では、どんなに痩せ衰えたラクダでも馬とは比べ物にならない程の力と忍耐強さがあるという砂漠地帯特有の知恵を盛り込んだ諺である。中国の明清小説にもよく使われたこの諺は、漢民族の文化に由来するのではなく、明らかに西域の自然から生まれたものと言えよう。

[猫に小判]

 動物を題材にした諺は、どの言語にも多くみられる。動物に人間の言いたいことを代弁させるのは、それだけ人間の日常に動物が密着していることの証とも言えよう。
 この諺もそうだ。周知のとおり「客観的にどんな価値のあるものであっても、そのことのわからない人にとっては何の役にも立たないこと」がその意味するところである。結局、猫を引き合いに出しながらも、人間のことを言っているのだから滑稽である。
 「豚に真珠」は聖書に出てくる「Don't cast pearls before swine 真珠を豚に投げてはならない」から変わってきたものだから、洋の東西を問わず動物を見下していることがわかる
 中国では、「対牛弾琴」人を助ける働き手として不可欠で実用的な牛・馬などの大型の動物を使っており、西洋では、それらの中間の大きさの豚を使っている点が特徴的である。

[一石二鳥]

 この言葉は中国由来ではなく、英語「Kill two birds with one ston」を直訳した和製漢語である。
 ただ、この種の喩は中国にはいくつもある。ヨーロッパでは石で鳥を撃ち落とすのに対して、中国のほうは「一箭双雕」という、一本の矢で獰猛な鷹二羽を射落とす相応の表現がある。モンゴルの英雄譚によく出てくるチンギスハンもそれを成し遂げているという。

[疑心暗鬼]
 
 中国春秋時代の『列子』にはこういう話がある。ある男が斧をなくした。男は隣の息子が盗んだのではないかと疑った。隣の息子を観察してみると、歩き方も顔色や言動もいかにも斧を盗んだように見える。のち、男が自分の窪地を掘り起こしていたら、偶然なくした斧が出てきた。後日、また隣の息子を観察してみると、動作や態度に怪しい点はなくなっていたという。

 中国語では、宋の時代から「疑心生暗鬼」や「疑心生鬼」などの形で使われていたが、のちに「疑神疑鬼」のほうが主流となる。明代の『農政全書』に「壒妄信流傅謂氣所化是以疑神疑鬼甘受戕害(世のうわさをいたずらに信じ、疑神暗鬼して害を甘んじて受けることになる)」の例がある。

 形態的には現代中国語の「疑心暗鬼」に比べて、中国古典の形を受け継いでいるのはむしろ日本であろう。同音異形の「阪神半疑・疑神暗鬼は毎度の事」のような使用は野球ファンの焦りと苛立ちを活写しいるものとして言い得て妙なところであろう。

[難兄難弟]
日 実力が拮抗し、優劣の判断がつきにくいさま
中 肉親以上に固い絆で結ばれた男の友情

[鶏鳴狗盗]
日 つまらぬ芸でも役に立つことがある
中 コソ泥や人だまし

[呉越同舟]
日 他人と居合わせること
中 敵味方が協力して共通の目標を目指す

[朝三暮四]
日 人をだますこと、生活の糧
中 ぐるぐる変わりやすいこと

[天衣無縫]
日 純粋で無邪気な性格
中 物事が完璧なさま

[八面玲瓏]
日 表裏なく美しいさま
中 八方美人、独自性のない人

[万事休す]
日 絶体絶命の窮地、おしまいだ
中 何事もなく、すべてを忘れる

[風流韻事]
日 詩歌、書画、華道、茶道などの風流な遊び
中 男女の色事、ロマンチックなこと

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2008年10月15日 (水)

「知ったかぶりで恥をかく常識のウソ」 常識のウソ研究会

[アラビア数字はアラビア生まれではない]
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  「1、2、3」というアラビア数字(算用数字)は、アラビアという名前だがインド生まれだ。インドで発明された数字が北アフリカからスペインを経由して、12世紀頃アラブ人により、ローマ数字(I、Ⅱ、Ⅲ)に対応してつけられたものだ。しかしアラビア人は、現在でもこの数字を「インド数字」と呼んでいる。
 アラビア数字の元となっているのがインド数字で、アラビア人は、アラビア語とともに、こちらを主に使っている。

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*

[乾電池を冷蔵庫に入れると長持ちするというのはウソ]
 乾電池の保管方法として昔からよくいわれているもに「冷蔵庫に入れるとよい」というのがあるが、これは間違った方法だ。
 以前は、乾電池の自己放電(使用しなくても勝手に放電すること)を抑えるために、冷蔵庫など低温の場所へ保管するのがよいとされていたが、技術が進んで自己放電の量も減った現在の乾電池なら、常温保存でも十分だ。冷やしすぎると結露がつき、錆びやショートの原因となるので、冷蔵庫は避け、直射日光の当たらない場所に保管しておくとよいだろう。

[早朝の運動が健康にいいというのはウソ]
 健康維持のため、ダイエットのため、早朝にジョギングしている人をよく見かける。一日の始まりに体を動かすとすがすがしい気分になるし、体があたたまっていいともいわれる。また、朝しか運動する時間がなかったり、女性が夜公園などで運動するのは危なかったりと、朝でないと運動できない人もいるだろう。
 しかし、早朝に運動をするのは、実はよくないことなのだ。
 起きたばかりの体は、免疫力が低下していて、細菌に感染しやすくなる。また高齢の人や高血圧の人は心筋梗塞を起こしやすいので、避けたほうがよい。特に冬の早朝は、寒さで心臓に負担がかかりやすい。どうしても朝、運動するのであれば、起きてから1時間ほど経ってからするようにしたい。

[果物は太らないというのはウソ]
 「果物は甘いけど水分が多いので太らない」といわれている。
 これは半分正解で半分間違い。正しく摂ればダイエット効果も上がるが、果物なら何をいつどれだけ食べても大丈夫というわけではない。
 果物に含まれる甘みは「果糖」という糖分で、これは糖類の中でも最も甘みが強い。水っぽいのに甘いのはそのせいだ。
 他の食材が分解や消化を経てエネルギーに変わるのに対して、果糖は直接エネルギーに変わるため、早く疲労回復したいときには有効だ。スポーツドリンクの成分表示にも「果糖」の文字を見つけることができる。

 しかし、果糖やブドウ糖は消化も早く、食事と一緒に果物を摂ると、食事で摂取した脂肪分や脂分と結合して、体に吸収されやすくしてしまう。食後のデザートに果物を食べる人も多いと思うが、これはできるだけ控えたほうがよいのだ。食べるなら朝食で摂るようにするとよいだろう。
 また、バナナやパイナップルなど温かい地方で取れる果物は高カロリーなので、太りやすい。食事とバランスを考えて摂るようにしたい。

[世界標準時を計る時計が、現在もグリニッジにあるというのはウソ]
 世界の時刻の基準となって