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2009年2月 4日 (水)

[霞が関の逆襲] 江田 憲司,高橋 洋一

[タスポは天下り団体を作る伏線か]
 近年、世の中の禁煙ブームもあって、タスポの導入が始まりましたが、私はこの話には裏があると思っています。
 2008年7月1日から、関東地方や沖縄県でもタスポの導入が始まり、現在では、タスポがなければ、自動販売機でタバコを買うこともできなくなっています。未成年に買わせないための処置と言われていますが、どうもきな臭い。

 確かに喫煙は20歳以上と決まっています。そういう法律があるのですから、これは守らなければなりません。ただ、そのためになぜタスポが導入されるのか?
 このタスポに関しては、あまり世間に知られていませんが、JT(日本たばこ産業)やフィリップモリスが500億円ずつお金を出しています。しかし、これだけ多額のお金をかけてシステムを作らなければならないのか、疑問です。
 まず、なぜ新しいカードを作らなければならないのか?

 運転免許証でも同じようなシステムが作れるはずです。それなのに、なぜ新しいタスポのようなカードを喫煙者みなに持たせようとするのでしょうか? まるで、新しいカードを導入したいがために取られた策のように見えてしまう。こういったカード導入には、必ず後に業者からの囲い込みが行われるのが常です。ここに利権が発生するようになる。これは今後注視しなければなりません。

 また、タスポを導入することによって、全国の自動販売機に高機能の自動販売機に電話のようなものがついていて、タスポをかざすと、無線で情報を飛ばして認識しやすくするという構造になっている。
 しかし、このような大掛かりなシステムにする必要があるのでしょうか?
 タスポの導入でいわれているのは、結局儲かったのは、このようなシステムを導入した自動販売機メーカーだということです。

 タスポは「社団法人日本たばこ協会」「全国たばこ販売共同組合連合会」「日本自動販売機工業会」が主体になっていると、表向きはされている。役所の存在は、表に全然出てきていません。
 ただ、日本ではタバコに関して管轄しているのは財務省。こういったシステムを作ると、後にそれを統括する天下り団体ができるということがよく起こります。新しい制度を導入して、新たな法人を作り、そこに天下るというのは、霞ヶ関の得意技なのです。

 これは私の元役人としての直感なのですが、今後こういった類の話が出てくるのではないかと思っています。天下り団体、公益法人などができないか、国民は注目していく必要があるでしょう。

[温存された道路公団の打出の小槌]
 道路公団改革は、当時、小泉首相が「民営化問題が持ち上がったときには、こういうことができるとは誰も信じなかった」と胸を張ったにもかかわらず、残念ながら、「名ばかり改革」に終わりました。予想されたとおり、道路官僚や道路族は「名を捨てて実をとった」格好です。

「名」とは道路公団の経営形態で、そこを生贄にしておいて、「実」である高速道路の建設計画(9342キロ)は100%確保した、いや、それ以上のものを確保しました。

 道路公団の本質は、これまで国の税金や財投資金(国民が郵貯や年金等に預けたお金)を湯水のように使い、無駄な高速道路を造り続けることで、結果的に40兆円もの借金を残してしまうような体質を、根こそぎ改めることでした。そのためには、いわゆる道路族の介入をいかに排除していくかがキーポイントだったはず。そして、そのうえで、巨額な借金を新たな国民負担なく、通行料で返済していく道筋をつけることでした。

 にもかかわらず、採算にあわないため国自らが税金で高速道路を造る「新直轄方式」と、民営化会社が、政府保証を受けて民間から資金を調達し、新たな高速道路を造る仕組みの創設により、いかようにでも高速道路が造れるようになってしまった。いわば、道路公団の打出の小槌が温存されたのです。ちなみに政府保証ということは、焦げ付いたら税金で穴埋めするということを意味します。
 採算にあわなくても必要な道路もありますから、直轄方式の創設自体には私も異論はありませんが、それなら、民営化会社が整備する道路は、より一層厳しく採算性を求めるべきでしょう。
 しかし、会社に道路建設の拒否権があるとはいうものの、最終的には、国土交通省の諮問機関が、その拒否理由の正当性を審議し、「正当な理由なし」と判断した場合は結果的に建設せざるを得なくなる仕組みが導入されてしまいました。この時点で私は、「これで改革は失敗に終わった」と思いました。会社と道路官僚・道路族との力関係からすれば、実際、無駄な高速道路建設に歯止めをかけることにはならないからです。そうなると、現在の約40兆円にも上る借金はさらに拡大していく可能性がああります。
 道路利権はしっかりと温存されたのです。

[なぜ、官僚は官邸で力をもっているのか]
 それは、政権が代わると、総理や官房長官、各大臣、副大臣に至るまで政治家すべては入れ替わってしまうのに、この官邸官僚たちは替わらないからです。政権交代時には、いったん、彼らの辞表をとりまとめるのですが、新しい総理や官房長官は、ついつい、官邸の仕事の運び方も熟知していて、たくさんのノウハウも受け継がれている彼らに頼ってします。

 事務担当の官房副長官の最大の任務は「霞ヶ関内調整」です。総理や官房長官まで問題を上げる前に、一府一ニ省庁の間で調整しきれなかった政策を扱います。官僚の掟やしきたりを十二分に熟知した立場から調整を行うのです。ちなみに、官房副長官は事務次官等会議の主催者でもあり、閣議にも出ることができる。事務次官等会議との閣議の両方に出席できるのはこの官房副長官のみです。
 この事務次官等会議とは、火曜、金曜の閣議に備え、その前日である月曜と木曜に官邸で開かれる会議です。すべての省庁の責任者が出席し、各省庁から提出が予定されている案件を事前に調整します。

 全会一致が原則で、ここで調整がつなかければ閣議案件としてあがらないことになっていますが、実際は会議にかかる前の段階で、各省庁間で根回しなどが行われて合意が図られているので、この会議がもめることはまずありません。しかし、霞ヶ関の権力が見え隠れする会議であるのは確かです。

 したがって、通常何代もの内閣に仕える、この事務担当の官房副長官に誰を据えるかが、大変重要な問題となってきます。「霞ヶ関の組織防衛」派か、「国益」派かで、政権運営はずいぶん変わってくるのです。

[JT株と地デジで6兆円]--高橋
 政府はJTの株の半分ほどを持っています。これはJTを霞ヶ関が天下り先として確保していたいためでしょう。ただ、政府が株を半分持っているためJTには自由度がないのが現状です。
 私はJTは、完全民営化でいいと思っています。なぜ株を半分持っているのか、国会で議論すべきでしょう。
 株を政府は売却すればいい。この売却益が二兆円ほどになるでしょう。

 また、これも新しい話なのですが、2010年には地デジに完全移行します。
 実は地デジに移行すると周波数帯が空く。日本はいままで周波数帯が空いたときには関係業者の間に配るしかありませんでした。もちろん電波料はとりますが、格安で関係業者に叩き売りするという、持ちつ持たれつの関係を続けてきたのです。
 しかし、世界では、こういった空いた周波数帯はオークションで売ってしまう。日本も同様のことをすれば、四兆円ぐらいの収入が入ると思います。ここはうまく制度デザインすると、もっと収入が増えるでしょう。
 この三年間でやろうと思えば、六兆円の「埋蔵金」が発掘できるのです。

[URのファミリー企業が行った埋蔵金隠し]--江田
 特別会計だけではなく、数ある独立行政法人やそのファミリー企業にも埋蔵金が眠っています。
 そもそも独立行政法人にはそれ自体、無駄といわれているものも多い。
 その一つである都市再生機構(UR)について、私は、そのファミリー企業の一つが、その余剰金を資本金に移し替えた件について、政府に質問趣意書を提出して問いただしたことがあります。その企業の名前は日本総合住生活株式会社(JS)。2008年3月現在、URの持ち株比率が75.5%の子会社です。
 JSは、2006年決算で、剰余金を519億円から248億円に約270億円減らす一方、資本金を50億円から300億円へ250億円増資しました。剰余金のうち、250億円をしれっと資本金にしてしまったのです。株主総会で決めたといっても、それはUR含めた身内の会なので、まったくのお手盛り。これでお金の流動性をなくしてしまったのですから、これでは剰余金隠しといわれても仕方ありません。

 ちなみに、JSおけるURからの再就職役員は2008年3月末現在で、16人中10人です。また、毎年のURからの受注(契約)金額は200億円近い。そして、随意契約100%というのがその実態です。まさに、URとJSは一体不可分の関係なのです。

[独立行政法人に眠る15兆円の埋蔵金]
[労働保険特別会計に眠る埋蔵金]

□今日の読書 ★★★☆☆

霞が関の逆襲 Book 霞が関の逆襲

著者:江田 憲司,高橋 洋一
販売元:講談社
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