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2008年8月

2008年8月29日 (金)

「夏の庭―The Friends」 湯本 香樹実

 「びっくりさせてやろう」

  河辺は、塾のカバンの中から、カエルのぬいぐるみをとりだした。島のおみやげ屋さんで、ぼくたちはおじさんのためにそのカエルを買った。目と目の間が離れているところが、メガネをとった時の河辺にそっくりなのだが、本人はそれに気付いていない。「おかしな顔をしているけれど、なぜか気に入ってしまった」と帰りの新幹線のなかでしげしげと見ているのには、ぼくも山下も笑った。

 「おい、賭けようぜ」河辺が言った。「おじいさんが、なにしているか」
 「昼寝」山下が言った。
 「風呂そうじ」河辺が言った。
ぼくは、なぜだか考えがつかなかった。「思いつかないよ」
 「想像力のないやつだな。なんでもいいから言えよ」
 「じゃ、爪きり」
よし、とぼくたちは縁側に近づいた。
 窓はほんの少し開いている。網戸ごしになかをのぞくと、布団の上におじいさんは横たわり、薄い夏掛けをかけたおなかの上で両手をゆったりと結んでいる。ぼくたちは、そろそろと網戸を開けた。
 「オレの勝ち……」山下がささやいた。でも次の瞬間、ぼくたちは同時に気付いていた。奇妙なくらいはっきりと、からだの奥で感じ取っていたのだ。眠っているんじゃない。

 その部屋を満たしていたあまい匂いは、ぶどうの匂いだった。おじいさんのまくらものには、遠くの火事に照らされる寄るの空のような色をしたぶどうが四房、鉢に盛ってあった。ぼくたちと食べようと、まくらもとに置いて眠りについたのにちがいない。
「遠足にいく前のガキみたいだね」山下が、泣きはらした目をTシャツの袖でついとぬぐった。河辺は部屋のすみで、背中を向けてしゃがみこんでいる。時々、押し殺したかぼそいうめき声が、聞こえてくる。

□今日の読書 ★★★☆☆

夏の庭―The Friends (新潮文庫) Book 夏の庭―The Friends (新潮文庫)

著者:湯本 香樹実
販売元:新潮社
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2008年8月22日 (金)

「取るに足らない事件」 早川いくを

[金をお出しなさい、いやに優しい強盗]
 17日午前三時四十五分頃、荒川区田端新町、木箱製造業の吉田益次郎さん方へヨレヨレのズボンをはいた失業サラリーマン風、三十五歳ぐらいの男がナタを持って押し入り、驚く吉田さんに「さわがないでお金をお出しなさい」とていねいなことばで脅し、七百円を出すと、賊は「有り難う有り難う」と二、三回くりかえし、「あと二、三件寄るところがありますから戸締りをよくしてから警察へ届けてください」といってソワソワと出ていった。

[百キロ爆弾盗まる]
 茨城県那珂郡前渡村米駐留軍飛行場から、九日国警本部に百キロ爆弾が盗まれたと連絡があった。同本部ではただちに管下各地区署に手配した。Photo_6
 この爆弾は同飛行場で先月二十一日演習のため投下したが、不発だったので海岸寄りに放置してあったものだが、特殊の高性能火薬を使ってあるので、爆発の危険が大きいという。

 重さ百キロの爆弾である。どうやって運搬したのだろう。米軍駐留地にクリーンやら起重機をもちこむわけにはいかず、かといって一人で背負っていくわけにもいかない。おそらくこっそりリヤカーなどで仲間と運びだしたか、ボートに載せて海上を運びでもしたのだろう。

□今日の読書 ★★★☆☆

取るに足らない事件 Book 取るに足らない事件

著者:早川いくを
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2008年8月20日 (水)

「続仏像のひみつ」 山本勉

[獅子]
 文殊菩薩の台座。仏像の世界で獅子の出番は多いのだけれど、これは背中に鞍を載せて、その上にハズの花の形をした台座があって、そこに文殊菩薩像が坐っています。獅子のまわりに、文殊菩薩の四人の家来がついている場合があります。

[ヘンダンウケンとツウケン]
Photo_4

 五智如来像という、マンダラの中心にいる五体の如来像から二体をとりだしてみました。向かって右がヘンダウケンの姿、左がツウケンの姿です。右は右肩がまるまる出ているから、ちょっと寒そうですね。左はえりもあまり開いていないからあったかそうですね。どちらの着方も、日本のふつうの如来像では、あまりありません。

[はだかの仏像]
 阿弥陀如来像。はだかだから、着物を着ているとわからない如来のからだの特徴がわかります。どこのことをいっているのか、わかりますかね。おなかの下のほうです。ハスの花があらわされていて、男女の区別がわかりません。

[シパック]
 金箔というのはじかに貼るよりも、ウルシを塗ってすくった、とてもなめらかな表面に貼ると、もっと効果的です。こういうやりかたを、漆という字に金箔の「箔」の字をくっつけて、シパック(漆箔)といいます。

[キンデイ塗り]
 「金」という字に泥んこの「泥」という字をくっつけて、「キンデイ」と読みます。ちょっとしゃれて、コンデイと読む人もいるみたいですが、まあ、キンデイでいいでしょう。
 それは、金箔をたたいて、こなごなにして、すりつぶす。そうすると、金の粉、金粉というのができます。その粉を、ニカワという、動物の骨からとれたものを溶かした液体で練って、どろどろにしたのが金のどろ、つまりキンデイです。それを仏像の表面に塗るのがキンデイ塗りです。

□今日の読書 ★★★★☆

続仏像のひみつ Book 続仏像のひみつ

著者:山本勉
販売元:朝日出版社
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2008年8月18日 (月)

「仏像のひみつ」 山本勉

[仏像たちにもソシキがある]

 仏像にはいくつかの段階のグループがあって、それぞれの役割があります。そして仏像はそれが見た人にすぐわかるように、それぞれが決まった髪形や服装をしています。仏像がはじめてつくられたインドでも、中国でも、おとなりの韓国でも、日本でも。
 そしてそれぞれの国のどんな時代でも。だから、同じ種類の仏像をくらべてみると、それがつくられた国や時代の特徴が、ときには仏像をつくった彫刻家の特徴が、よくわかります。だから仏像を鑑賞したり調べたりするのは、とても楽しいのです。とはいっても、仏像の種類はとんでもなくたくさんあって、仏像のソシキはとても複雑です。

 仏像のグループは四つです。だいたいこの順番がえらい順番と思ってもらえれば結構です。Photo_3
①如来
②菩薩
③明王
④天







[如来]

 如来というのは、さとりをひらいた者のことです。「さとり」って何、ってきかれると、ちょっとむずかしいけれど、自分だとか世界だとかがどんなものであるかが、すっきりとわかって、もう悩まない……そんな状態かなぁ。それはともかく、仏教をはじめたのは、紀元前五世紀ごろのインドに「釈迦族」という貴族の王子様とし生まれたゴータマ・シッダルタという人です。たいへんきびしい修行の末にやっとさとりをひらいて、如来になりました。釈迦族出身の如来だから「釈迦如来」と呼ばれるようになりました。これが最初の如来です。

[五つの指のしるし]2_2 3_2
 まず、釈迦は人々に教えを説きました。両手を胸の前にあげて手のひらをひろげているのは、そのときの形です。(①)
 心を静かにして瞑想することもありました。おなかの前で両手を重ねるのが、そのときのかたちです。(②)いまでも座禅を組むときはこういうふうに手を組むのです。
 修行中、さとりを完成しようとする釈迦のところに、たくさんの悪魔を追い払いました。(③)
 人々に「願いをかなえてあげる」という意味でてのひらを上に向けて指を全部のばすかたち(④)
 「こわがることはないよ」という意味でてのひらを正面に向けて立てるかたちがあります(⑤)

[マンダラ]
 密教で考え出された、大日如来が中心にいる世界の見取り図、それがマンダラです。大日如来が「宇宙の真理」そのものだというなら、マンダラは「宇宙の見取り図」だということになるのでしょう。マンダラには、胎蔵界マンダラと金剛界マンダラの二つがあります。

[菩薩]
 如来の次、二番目の仏像のグループは菩薩です。将来さとりをひらいて如来になるために、一生懸命修行している者をいいます。だから、もともとは、さとりをひらいて如来になる前の釈迦だけが菩薩でした。でも、たくさんの如来が考え出されると、それをめざして修行する菩薩も、いろいろな種類が考え出されました。
 弥勒菩薩、観音菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩、虚空蔵菩薩などは、もうかなり修行が進んでいて、それぞれの立場から人々を救うためにはたらいている菩薩です。

[明王]
 密教の最高の如来が大日如来で、その大日如来がマンダラのなかでそのそばにいる如来・菩薩がやさしい顔をしていては、いうことを聞いてくれないどうしようもない人々を救うために、おっかない姿の分身をつくりだしました。それが明王です。大日如来たちの子分だと思えばいいですね。

[天]
 いろんな神さま全員集合
 仏像の位の四番目が「天」というグループです。もともと、仏教ができる前からインドの人たちが信じていたたくさんの神さまが、仏教にとりいれられたものです。
 いろいろ神さまの寄せ集めですから、姿かたちや役割はさまざまです。名前も「○○天」というふうに、「天」がつくものばかりではないので、ちょっとわかりにくいかもしれません。
 お堂の中で東南西北の四隅を守る四天王はその代表です。

[北を守る天]多聞天
[東を守る天]持国天
[西を守る天]広目天
[南を守る天]増長天

□今日の読書 ★★★★★

仏像のひみつ Book 仏像のひみつ

著者:山本 勉
販売元:朝日出版社
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2008年8月15日 (金)

「小説会計監査」 細野 康弘

[ABC銀行消滅]

 勝は、ABC銀行の西郷常務へ電話した。
「すごいプレッシャーが金融庁から来ています。例の有名人のメッセンジャーが伝えて来るのですが、
『検査の結果を決算に厳密に折り込んだことをしっかり監査してみろ。六月には直接入検して状況を調べる。あんたの監査法人の立っていけることのみを考えろ。いつまでも金融庁があんたの監査法人のことんび配慮してくれると考えるな』
 とのことです。坂本たちが正しいと考えて、出そうとしている監査意見が気になるようです。銀行の状況はどうですか」
「監督局といろいろ決算方針について協議しているのですが、結論を出してくれません。もう関係のなくなっているはずの検査局の恵比寿氏が何かといいに出て来て、引っかき回しています」
「監査チームは普通に考え結論を出すでしょう。しかし、監査法人審議会はわからない。金融庁の圧力を感じています。金融庁リスクを考えて、超保守的な結論を出すかもしれません。全くもう会計の話ではなくなってしまっています。会計士など本当に弱いものです」
 勝は弱気になって、西郷につい愚痴をもらした。
 西郷は心配気に、
「勝さんが頼りです。よろしくお願いします」
と電話口で深々と頭を下げた。

[メッセンジャーからの電話]
 例の金融庁のメッセンジャーから勝に電話が北。
「貸倒引当金は、ABCはよくあそこまで取ることにした。これでよいだろう。
あとは税効果だ。いまの繰延税金資産の額で行くと自己資本比率が8%台の中ぐらいになるはずだ。このままでは、今朝の英国のフィナンシャルタイムズが懸念を言っていたように、海外が納得しない。どんな理由付けでもよいから、繰延税金資産を削り、自己資本比率の8%を割らせろ。
 割ったらすぐに公的資金が入るようにしてやる。それで、自己資本比率が8%以上に戻り、海外業務は続けられるようにしてやる」

 勝は腹が立っていた。それもすこぶるである。
 メッセンジャーに理解できるかを考えもせずに、日頃の口癖を電話口で声高にいった。
「あんたは知っているか。『孟子』の離婁編の下に『成さざること有り。しかる後に以って成すこと有るべし』とあるのを。われわれにはどんあことがあっても、媚びてはいけないことがある。まさに原則を曲げて金融庁に迎合することだ。このしてはいけないことが何かを突き詰めていくことにより、何をすべきか明らかになってくる。どう生きていくべきかが明らかになってくる。
 われわれには、どんな脅しがあっても、それをしては生物の霊長ヒトとして、会計士としてお終いになってしまうことがある。
 われわれは会計士だ。どんな圧力があっても、強制されても、正しいと考える監査意見を出さなくてはいけないということだ。
 われわれは正しいと考えることをさせてもらうよ」
 黙って聴いていたメッセンジャーが最後にいった。
「われわれは権力とのパイプを持ち、結ばなければ駄目だ。あんたは間違っている」

□今日の読書 ★★★★☆

Book
小説会計監査
著者 細野 康弘
販売元 東洋経済新報社
定価(税込)

¥ 1,680

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2008年8月14日 (木)

「三宅裕司の略語研究会」 ニッポン放送・編

□アフガン■あふれるガンモドキ
□イントロ■インサイダー取引して仕入れたネギトロ
□潤い■うるさい甥っ子
□エキサイト■駅員の斉藤さん
□おじぞうさま■おじや、ぞうすい、サマーバイキング
□カニ缶■蚊に刺されるのが快感
□カリスマ■借りた金、返せん。すまん!
□クロアチア■苦労あってのチアリーダー
□キャバクラ■キャベツばかりで暮らす
□グローバル■グローブがはめられないバルタン成人
□結婚■欠陥だったコンドーム
□しゃっくり■借金繰り返す
□地場産業■じいさんとばあさんがぎょーさんおる
□セクハラ■セクシーだけど腹出すぎ
□ソムリエ■それは無理どすえ
□たすきがけ■助けたキツネに崖から落とされる
□ドリカム■ドリーム・ジャンボ・カタツムリ
□PTA■パットたくさん入れたのにAカップ
□ふれあい■フレッシュな愛人
□メタボ■滅多に募金しません
□メルヘン■メールにいっぱい、変な文
□ライバル■ラーメン屋にいつもいるバルタン成人
□恋愛■レントゲンの相席

□今日の読書 ★★★★☆

三宅裕司の略語研究会 Book 三宅裕司の略語研究会

著者:ニッポン放送・編
販売元:毎日新聞社
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2008年8月13日 (水)

「偽装管理職」

[偽装管理者の実態]
 要は、会社のパワーハラスメントや不当行為に対して、対応できるノウハウを身につけるということです。もちろん、経済的に守られることを優先して、黙っていることも一つの手段なんです。それで精一杯という人もいていいんです。
 不当な行為に耐えられない人は、アクションを起こすことです。辞めることもひとつのアクション。あるいは完全に不当だとわかった時点で、労働センターや組合に加入して交渉にもっていく方法や裁判を起こす方法などさまざまなかたちがあると思います。どういう方法があるかは伝えられますが、どれを選択するかは本人の価値観なんです。

 東京管理職ユニオンによれば、会社が団体交渉を避けようとして、社員に歩み寄りをみせることはよくあるのだという。しかしその場合、会社があとでうそをつく、つまり、その場しのぎの手段として交換条件を出してくるということは、非常に多いそうだ。
 町田さんの場合も、たとえ今回の事態が解消されたとしても、あとからまた同じようなことが起こる可能性は高かった。だから、きちんと第三者を入れたかたちでの団体交渉を行い、そのなかで問題を解決していくべきだ。これが、町田さんとユニオンが話し合って出した結論なのである。

[原因は高度経済成長期にまで遡る]
 「こんなにも働かされているのに、どんなに働いたとしても、管理職という肩書が付いていたら、月5万だの3万だの1万だのという手当てを渡して済ましているのが、いまの多くの企業です。部下もいないのに管理職と呼ばれて、1万円の手当てが付くだけ。
 なぜこんなことになったかというと、ひとつは管理職という肩書を付ければ一所懸命働くし、時間外労働賃金もかからないし、責任を負わせることもできる。経営者側にとって、そんあ安易で都合のいい労働条件のあり方がつくられてしまったんです。

 この状態が最初に作り出されたのは、高度成長期なんです。やれ拡大だ、発展だということで、その当時のサラリーマンたちが、ボロボロになるくらい時間外労働をやりぬいてしまい、それが定着してしまった。ところが、バブル崩壊後はリストラが進んだため、逆に人手不足になってしまう。そうなると会社に残るも地獄、リストラになるのも地獄なんです。

□今日の読書 ★★★★☆

偽装管理職 Book 偽装管理職

販売元:ポプラ社
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2008年8月11日 (月)

「書斎の達人」宇田川 悟

[田崎真也]
Photo_3  他人の本は一切読まないことにしたソムリエの再生の場所
 いつの頃からか、田崎さん他人が書いた本を読まなくなったという。新聞や既存のデータや時事的なデータ、スタッフがパソコンなどから収集した必要なデータは読むが、その他の記事は読むことを止めた。たとえば、フランス人の一人当たりのワイン消費量などといったワイン専門家として必要な情報は入手しておくけれど、このワインはどうしてこういう味になるのかというような情報の関しては、自分で感じたものをそのまま書いていこうと決意した。

[島田雅彦]
Photo_4  人間はある程度、無駄を抱えて生きていないとダメになる。効率だけを求めて生きていると、体の変調や精神的ストレスをきたして狂ってくるという。時には二日酔いやハシゴ酒をしたり、場末巡りをしたり、体力の限りを尽くして愚行に走らなければならない人間が持ているそうした不思議な感覚と行動は、どこかに無駄を求めようとする心のあらわれなのである。

[みうらじゅん]
Photo_5  昔からオリジナル・コンプレックスがあって、いつも誰かに憧れてたんですよ。ボブ・ディランとか吉田拓郎とか、横尾忠則とか野坂昭如とかにね。ボプ・ディランなんか憧れすぎちゃって、高校の時から真剣に真似してて、気がついたら四百曲ぐらい作っちゃって、みんなに気持ち悪いと言われて。でも、薄々は感じていたんだけど、ある時までディランが外国人だって知らなかったの(笑)そんなコンプレックスと憧れが合体していることに気付いたんです。それでA+BをCにしようと。そうすれば、自分を素直に出せるんじゃないかと思ったわけ」
 97年に「マイブーム」が新語・流行語大賞トップテンに入賞して一躍メジャー入りしたみうらじゅんさん。その特異な才能とキャラクターがマンガ、小説、エッセイ、ロック、音楽プロデュースと全開し、いまや若者たちの間でアイドル的な人気を得ている。

□今日の読書 ★★★☆☆

書斎の達人 Book 書斎の達人

著者:宇田川 悟
販売元:河出書房新社
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2008年8月 8日 (金)

「頭のいい夫婦 気くばりのすすめ―ちょっとしたコツですれ違い解消!!」 松本 光平

[お互いに相手の欠点は片目で見る]
 女性が口やかましくなりやすいのは、家庭のなかでは男性よりも「細かいことによく気がつく」という特質を持っているからでしょう。男は仕事に神経を集中して生きていますから、仕事の専門分野になると細かい点にも敏感に反応します。
 しかし、仕事から解放されて、家でリラックスしているときは、周りのことに対しては"ぼんやりと見ている"といった程度なのです。女性からすれば、家庭での男の振る舞いは、「なんて鈍感!」「なんて大雑把!」と見えるに違いありません。

 男性、女性ともに口やかましい忠告やヒステリックな非難は、どんなに激しく浴びせても、決して相手に受け入れられることはなく、逆に反発と怒りを買うだけであることを心に留めておきましょう。
 「相手の欠点は、片目で見よ」という諺にあるように、おおらかに構えて暮らしましょう。そして、穏やかで優しい話し方に変えれば、相手も不愉快に思うことはなく、楽しい夫婦の会話ができるようになります。

[子供の教育にもプライドを大切に]
 男の子も女の子も、幼少時代の基本的なしつけは、一定の厳しさが必要ですが、小学校の高学年~中・高校生になれば、一定の人格を認めた接し方をすることが大切です。
 最近は、子供の数が減って、過干渉になりやすいのが実情です。「十ほめて、一叱る」べきなのが、現実は「十叱って、一もほめない」というふうになりがちです。
 特に、男の子は、たとえ子供であっても「男のプライド」をもっていて、このことに敏感ですから、頭ごなしに叱ったり、不足な点ばかり見つけて叱りつけるといったやり方は、禁物です。萎縮してひきこもったり、反抗したりします。よいところをほめながら、やる気を育てるということに、留意することが大切だと思います。

□今日の読書 ★★★☆☆

頭のいい夫婦 気くばりのすすめ―ちょっとしたコツですれ違い解消!! Book 頭のいい夫婦 気くばりのすすめ―ちょっとしたコツですれ違い解消!!

著者:松本 光平
販売元:コスモトゥーワン
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2008年8月 6日 (水)

「経済ってそういうことだったのか会議」 佐藤 雅彦,竹中 平蔵

[投資と消費]

佐藤 資本主義だと一人ひとりが「何かないか」って活発にやってるんだろうけど、社会主義になると、政府が、国のやるべきことや進む方向をいちいち会議で決めて、それを何カ年計画とか言って大々的にやるといった感じになるんでしょうね。

竹中 かつてのソ連なんかその典型で、意味もなく巨大な鉄工所とかを作ってるんです。国の威信をかけて全エネルギーを注ぎますからね。それにリスクという概念がないですから、とてつもないでかいものを作るんです。
佐藤 おもしろいですね。見方を変えると、社会主義ってとてつもない大間違いを犯せるんですね。

竹中 その通りです。とてつもない大間違いをずうっと続けたから、国が潰れてるわけです。そのとてつもないプロジェクトや工場が、そのつどちゃんと無理せず作れてたら、国は潰れなかったんでしょうね。

佐藤 社会主義ほどデカイ間違いじゃないけど、小さなおかしな間違いはいっぱいあるわけですね。テレビでやってたんだけど、渡ってもその先がない橋とか……。もうすごいですよね。橋を渡ったはいいけどそこで行き止まりなんです。

竹中 例のアクアラインもそれに近いものありますよね。川崎から乗って木更津に着いたらその先は高速道路がないんですから。「木更津に行くだけのためにあるのか?」ってすごい橋ですよね。

佐藤 あの橋は半分トンネルで半分橋という妙なつくりになってますけど、あれはセメント会社と鉄鋼会社が半分ずつお金をだしたからだっていう、もっともらしい話を聞いたことがあるんですが、本当なんでしょうか?

竹中 その二つが、これは儲かるということで出資して、この出資者の顔を立てるために、セメントと鉄の両方を使えるように、途中までトンネルにして途中から橋にした。

佐藤 えー。嘘だと思ってたんですが、本当なんですね。

□今日の読書 ★★★★★

経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫) Book 経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)

著者:佐藤 雅彦,竹中 平蔵
販売元:日本経済新聞社
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2008年8月 4日 (月)

「あぁ、阪神タイガース―負ける理由、勝つ理由 」野村 克也

[最大のガンはスポーツ新聞]

 あれは何年前だったろうか。南海と阪急の直接対決があった。しかも、そのゲームは月曜日におこなわれることになっていた。月曜日なので、セリーグの試合はない。私は思った。
「明日こそ、新聞の一面はオレたちだろうなあ」
 関西のスポーツ新聞は、何が起ころうとも連日阪神の動向が一面を飾っていた。

 とはいえ、月曜日に阪神の試合はない。しかも戦うのは南海と阪急、すなわち両方とも関西のチーム、いまのことばで言えば、関西ダービである。だから、「いくらなんでも明日くらいはわれわれが一面に出るだろう」と思ったのだ。
 ところが、翌朝スポーツ新聞を手にした私の目に入ってきたのは、次のような見出しだった。

 "不振にあえぐ掛布、特訓!"

「なぜなんだ!?」
 私は南海の担当記者に詰め寄った。
「おまえら、ちゃんと記事書いているのか?」
「だったら、なんで阪神が一面なんだ」
すると、担当記者は口ごもってこう言った。
「いや、デスクが言うんです。南海が一面じゃ新聞が売れないって……」
 この事実が、すべてを物語っている。阪神タイガースをダメ虎にした責任--その第一はメディアにある。

 関西に少しでも住んだことのある方ならおわかりだろうが、関西のスポーツ・メディアは異常である。「報知」以外どのスポーツ新聞の一面も、とにかく、"阪神阪神阪神" まるで阪神以外のチームは存在していないかのようだ。
 したがって、阪神の選手だというだけでマスコミがこぞって取り上げてくれる。ほかのチームの中心選手など比べものにならないくらい知名度も上る。当然、若い選手は「自分はスターなんだ」と勘違いすることになる。

[なぜ、阪神監督で失敗したか]
 二年目、編成が選んだのは内野手の的場寛壱。編成に言わせれば「10年にひとり出るかでないかの逸材」だという。が、この年は巨人が指名した高橋尚徳やロッテに入団した清水直行、ヤクルトに行った藤井秀悟といった投手がいたのである。本気で獲りにいけば、獲れる可能性はあったはずだ。しかも、「逸材」だったはずの的場は、入団時にひざを痛めていて、ほとんど出場機会のないまますでに引退している。そもそもなぜだか理由はわからないが、球団社長や編成部長は指名候補選手の名前すら私に教えてくれなかったのである。

[阪神を星野、岡田は強くしたか]
 星野の具体的な功績のなかでいちばん大きいのはやはり、2002年オフに金本、伊良部、下柳を獲得したことだろう。結果的に伊良部と下柳はふたりで23勝を挙げた。井川が成長し、前年に10勝をマークしたムーアも健在だったとはいえ、このふたりがいなかったらあれほどまでの躍進はなかったはずだ。さらに星野は二年目の安藤とルーキーの久保田を抜擢、新加入のウィリアムスと合わせて万全のリリーフ陣を形成した。
 この体制が確立したことで、先発が最低五回まで持ちこたえることができれば、勝利に結びつく可能性が高くなり、先発の肉体的・精神的負担軽減される。各自が自分の役割を果たすという適材適所の投手陣ができあがった。

 一方、攻撃では星野は金本を三番に置き、一番に今岡、二番に赤星を配するという打線を組んだ。今岡は足は速くないし、走塁にも興味を示さないので、一番は適任ではない。したがって私に言わせれば適材適所の打線ではなかったが、結果的に今岡の打線が爆発、赤星が急成長したことで、それほど問題にはならなかった。
 が、それ以上に大きかったのはやはり、金本の存在だ。金本は三番に座ることで自分を殺し、つなぎに徹した。四球を選び、進塁させるために右打ちを心がける姿が目立った。本来なら四番を勤め、「おれが、おれが」とつねに一発狙ってもおかしくない選手が、チームを第一に考え、犠牲心を発揮したことにより、その姿勢がほかの選手にも波及した結果、阪神打線は「点」ではなく、一番から八番まで途切れることのない「線」となった。

□今日の読書 ★★★☆☆

あぁ、阪神タイガース―負ける理由、勝つ理由 (角川oneテーマ21 A 77) Book あぁ、阪神タイガース―負ける理由、勝つ理由 (角川oneテーマ21 A 77)

著者:野村 克也
販売元:角川書店
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2008年8月 1日 (金)

「ザ・万歩計」 万城目 学

[ニューソング・パラダイス]
 4千年後、少年は手にした杖で、地面の物体におそるおそる触れた。プシュウという音とともに、突然球体が二つに割れた。同時に何人もの人の声が一斉に聞こえてきて、少年は思わず後退った。それは21世紀のありとあらゆる挨拶だった。もちろん、4千年後の少年には、何ら聞き慣れぬ音だった。

 そのとき、ディスプレイ脇のスピーカーより、音が聞こえてきた。4千年後の世界には歌はなかった。
 ゆえに少年が耳にしたものは、風の音とも、ヤギの鳴き声とも違う、これまで聴いたことのない不思議な調べを醸し出していた。

「うぉーうぉーうぉー」 (長渕剛 とんぼ)
「のーーー」      (細川たかし 「北酒場」 "北のー"の「の」)
「ッアァ」       (アリス「冬の稲妻」 "You're Rollin' Thunder"後の「ッアァ」
「ヤー ヤー ヤー」  (CHAGE and ASKA 「YAH YAH YAH」)
「ヤ、ヤ、ヤ、ヤ、ヤ」  (少年隊 「仮面舞踏会」)
「たーー」       (安室奈美恵 「CAN YOU CELEBRATE?」"こわかった"の「た」)
「うぉーうぉーうぉつうぉー」(「六甲おろし」)
「あ~あ~」             (美空ひばり「川の流れのように」)

[kid's Return]
 私はビデオ屋で当時たけしの最新作だった「キッズ・リターン」を借りた。たまげた。こんなおもしろい映画を作る男だったのかと今まで無視してきたことを心から悔やんだ。「見たからわかる」「言わずともわかる」という一貫した北野武の姿勢は、おそろしいほどテンポのいい作品を造り上げていた。本人は今も、映画でいちばん楽しい作業は、編集だと広言して憚らない。おそらくサディスティックなほど、無駄な部分を切り取る作業が好きなのだろう。
 「キッズ・リターン」は、高校生のシンジをマーちゅんが馬鹿をする、ただそれだけの話しだ。だが、それがせつないし、痛々しいい。本当に馬鹿なのだ。
 すっからかんになって、高校の校庭に自転車で戻ってくる主人公の二人、最後のシーン、シンジがマーちゃんに言う。
「マーちゃん、俺たち、もうおわっちゃたのかな」
 自転車の荷台でマーちゃんが答える。
「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねえよ」

□今日の読書 ★★★★☆

ザ・万歩計 Book ザ・万歩計

著者:万城目 学
販売元:産業編集センター
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