「夏の庭―The Friends」 湯本 香樹実
「びっくりさせてやろう」
河辺は、塾のカバンの中から、カエルのぬいぐるみをとりだした。島のおみやげ屋さんで、ぼくたちはおじさんのためにそのカエルを買った。目と目の間が離れているところが、メガネをとった時の河辺にそっくりなのだが、本人はそれに気付いていない。「おかしな顔をしているけれど、なぜか気に入ってしまった」と帰りの新幹線のなかでしげしげと見ているのには、ぼくも山下も笑った。
「おい、賭けようぜ」河辺が言った。「おじいさんが、なにしているか」
「昼寝」山下が言った。
「風呂そうじ」河辺が言った。
ぼくは、なぜだか考えがつかなかった。「思いつかないよ」
「想像力のないやつだな。なんでもいいから言えよ」
「じゃ、爪きり」
よし、とぼくたちは縁側に近づいた。
窓はほんの少し開いている。網戸ごしになかをのぞくと、布団の上におじいさんは横たわり、薄い夏掛けをかけたおなかの上で両手をゆったりと結んでいる。ぼくたちは、そろそろと網戸を開けた。
「オレの勝ち……」山下がささやいた。でも次の瞬間、ぼくたちは同時に気付いていた。奇妙なくらいはっきりと、からだの奥で感じ取っていたのだ。眠っているんじゃない。
その部屋を満たしていたあまい匂いは、ぶどうの匂いだった。おじいさんのまくらものには、遠くの火事に照らされる寄るの空のような色をしたぶどうが四房、鉢に盛ってあった。ぼくたちと食べようと、まくらもとに置いて眠りについたのにちがいない。
「遠足にいく前のガキみたいだね」山下が、泣きはらした目をTシャツの袖でついとぬぐった。河辺は部屋のすみで、背中を向けてしゃがみこんでいる。時々、押し殺したかぼそいうめき声が、聞こえてくる。
□今日の読書 ★★★☆☆ 著者:湯本 香樹実
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人間はある程度、無駄を抱えて生きていないとダメになる。
昔からオリジナル・コンプレックスがあって、いつも誰かに憧れてたんですよ。ボブ・ディランとか吉田拓郎とか、横尾忠則とか野坂昭如とかにね。ボプ・ディランなんか憧れすぎちゃって、高校の時から真剣に真似してて、気がついたら四百曲ぐらい作っちゃって、みんなに気持ち悪いと言われて。でも、薄々は感じていたんだけど、ある時までディランが外国人だって知らなかったの(笑)






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