「だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ」都築 響一
[アスタルテ書房]
京都でいちばんマニアックな品揃えで、いちばん場所がわかりにくい本屋、それがアスタルテ書房である。
なにしろマンションのひと部屋で、外に大きな看板が出ているわけでもない。店にたどり着いたら、今度は入り口で靴を脱がなくてはならない。本屋で買い物というより蔵書家の書庫にお邪魔した気分だ。
もともと住居にしていた2DKのマンションを「壁をぶち抜いて窓を覆って」店にして、照明も本屋らしからぬ暖色照明。書棚やケースはすべて木製で統一され、壁には新刊書のポスターじゃなくて、額に納められた版画がびっしり並んでいる。お客さんはスリッパ履きだし、ゆったりできるソファもある。店主はいつも、レジじゃなくて昔の作家みたいな書き物机に坐って本を読んでいる。
ここってやっぱり本屋じゃない。お金を払えば売ってくれる、こころ広い蔵書家の書庫だった。
[楠田書店]鹿児島県奄美市名瀬末広町
2009年は21世紀で世界最長の皆既日食があり、その観測に世界で最も適したロケーションが奄美諸島だ。「しかも2009年は、奄美がヤマトに併合された400年記念なんですよ!」その2009年に開催予定の記念イベントに向けて、いまから張り切る。
[デブの帝国]
うーっ、この本のことは書きたいけど、気が重くもある。「デブの帝国」すごすぎる題名だ。原題の『FAT LAND』よりインパクトが百倍ぐらい増している気がする。
副題に「いかにしてアメリカは肥満帝国となったのか」とあるとおり、これはアメリカ合衆国をびっしりと脂肪でおおいつつある、国民総肥満現象に激しく警鐘を鳴らす本。しかしコトはアメリカに限ったわけでもなく、当然ながら肥満化が進む日本のデブにとっても、厳しくも貴重な一冊になっている。
[スプートニク]
ソビエト時代の宇宙開発計画の闇に葬られた(らしい)、宇宙飛行士と犬のスペース・ドラマが抱腹絶倒。クールなジョークっていうのはこういう本のことを言うのだ。(筑摩書房)
[最驚!ガッツ伝説]
「青いリトマス試験紙を酸性の水につけたらどうなる?」の質問に「濡れる」と答えたガッツ。相模女子大学のことを、最近まで女相撲の養成所だと思っていたガッツ。パスボートの申請で性別(SEX)の欄に「週一」と書き、土木作業員を土曜と木曜しか働かない人と勘違いしていたガッツ。病気は全部ひなたぼっこで治し、急ぐときは電車の先頭車両に乗るガッツ。山下清以来久々に日本にあらわれた、生きて、呼吸する文学であり芸術作品である人間の、本書は貴重な生態報告なのだ。
[地球家族]
「世界30カ国のふつうの暮らし」とサブタイトルのついた『地球家族』は、その題名どおり世界中の国の、ふつうの家族がどんなふうに「ふつうの生活」を送っているのかを、いままでだれも考えなかったようなユニークな方法で解明しようとした本だ。つまり、世界各地に飛んだカメラマンが、その国の中流程度の生活をしている「ふつうの家族」を選び出し、その人たちに「申し訳ありませんが、家のものを全部、家の前に出して写真を撮らせてください」とお願いをする。それぞれの家の前に持ち物を全部並べて、家族全員といっしょに写真を撮ることで比較・理解しようというのである。まったくとんでもないことを考えたものだ。オビに「前人未到の大プロジェクト」とあるのが、少しの誇張もないことは、中に収められた想像を絶するような苦労の末に撮られた写真の数々を眺めれば、直ちに了解されるのである。
[映画のなかの図書館 Library Cinema]
これまた情熱に圧倒されるのが『映画のなかの図書館』。登場人物が利用するとか、館員が登場するとか、ちょっとでも図書館にかすれば記録するという、現役図書館員による、なんの役に立つのかわからない驚異の収集リストである。
[文学よりも奇な実人生を堪能できる『裏仕事師の本 パート4』]
「裏街道の住人たち」が、全部で60人も取り上げられてきた。たとえば、どんな仕事が紹介されているのかというと、裏プロ雀士、競馬の予想屋、ゴーストライター、キャッチセールス、借金取り立て屋、偽装結婚ブローカー、白タク、タッチワイフ開発人、女体調教師、カギ師、使用済み下着屋、名簿屋……
もう警察関係者からアイデアに詰まった小説家まで、ヨダレ垂れほうだいという感じのラインナップである。200ページ近い各冊の中に、それぞれ20人ほどのこうした裏仕事人たちの詳細なインタビューが載っているのだから、おもしろくないわけがない。
[テルミンエーテル音楽と20世紀ロシアを生きた男]
昔のホラー映画で「ヒヨヨヨ~ン」というような、ヘンに気持ちの悪い効果音を耳にする。あれが「世界最初の電子楽器」テルミンだ。えも言われぬ調べを生む楽器の発明者にして、革命ソビエトから新生ロシアまでを生き抜いた、レフ・テルミン博士の数奇な運命を描いた好著。こんな本が日本語で読めるとは。
[紅色新聞兵]
文化大革命という、あの途方もない動乱を記憶した、おそらくはじめての決定的写真集だ。著者の李振盛(リー・チェンション)は黒竜江省ハルピンの新聞カメラマンとして、文革の始動期から終焉までを記録しつづけた。動乱の実態を記録したネガを自宅の床下に隠して守り抜き、約3万枚にのぼる写真と、ひとりの男としてのセルフレポートをアメリカの通信社に持ち込んだ。貴重な歴史記録であると同時に、これは信念に生きたカメラマンの闘いの記録でもある。
□今日の読書 ★★★★★ 著者:都築 響一
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