「数学の謎―数と数学の不思議な関係」 カルヴィン・C. クロースン
[数列]
有名な数列のなかに、フィボナッチ数列と呼ばれるものがある。1,1,2,3,5,8,13……というもので、新しくくる数が、前の二つの数の和になっている。この数列は、ピサのレオナルド(1170-1240)、またの名をフィボナッチが提示したものだ。フィボナッチは、最初にひとつがいのウサギがいて、そのつがいが初めのひと月で成熟し、その後毎月ひとつがいのウサギを生むとすると、毎年、何組のウサギが生まれてくるかを知ろうとした。この問いへの答えとなるのが、フィボナッチ数列だ。フィボナッチ数列は、ある種の個体数がどこまで大きくなるかということにかかわるため、自然のなかに頻繁に認められる。この数列への関心は高く、フィボナッチ協会が作られ、この数列がもつ様々な驚くべき性質が研究されて『フィボナッチ季刊誌』に掲載されている。
[驚異の級数]
よく知られている収束する級数に、平方数の逆数の和がある。
ちょっと待った。この級数の和にはπがある。どうやってπが無限級数に入り込んだんだ。πは、円の直径に対する円周の比だ。どうしてそんなものが、明らかに円とは関係なしに出てくるんだろう。これもまた、数学の驚くべきところだ。すべて解決がついたと思ったちょうどそのときに、思いも寄らなかった不思議なことが目の前に飛びだしてくる。
ところが、πが出現するのはこの級数だけではない。こういうものもある。
ここでもπに遭遇する。どちらの級数にも、各項の分母の指数と同じ数だけ累乗されたπがある。ということは、この二つの級数には関係があるのだろうか。級数
記号が交替する級数でもうひとつ、なかなかよいものがある。これもまたオイラーの級数だ。
[ラマヌジャン]
シュリーニヴァーサ・ラマヌジャン・イエンガー(1887-1920)-短くしてラマヌジャンと呼ばれる青年は、インドの貧しい数学者で、ほとんど独学で数学を身につけた。高名なイギリスの数学者、G・H・ハーディが、ラマヌジャンの天才的な才能を見抜き、オックスフォードのトリニティ・カレッジに招聘した。不運なことにラマヌジャンは病気にかかり(おそらく肺炎だろう),インドに帰国し死亡した。この若き天才は、数学の源泉の奥底をのぞき込み、美しい式をつかみとってくる能力をもっていた。短い人生のあいだに、数多くの無限級数の和を発見した。次のものは、ラマヌジャンが発見した、かなり複雑な無限級数の一例である。
収束する無限級数はどれも、πをもつ値へ収束するのだろうか。もちろん、そんなことはない。次の例を見てみればわかる。これもまたラマヌジャンの級数だ。
[無限乗積]
級数のときと同じように、積を表す特別な記号、つまり、数を掛け合わせた結果を表す記号がある。級数には、大文字のシグマ
最初の六個の奇数を掛け合わせるとしよう。大文字のパイを使って、このように表現できる。
この等式では、添え字のnは1から6までの値をとる。n=1のとき、(2n-1)は1となり、nが一つずつ大きくなると、(2n-1)は順番に次の奇数になる。大文字の
だが、もっと目覚ましい成果を上げるには、連続して掛け算をする対象を、無限個の因数にまで広げる必要がある。無限乗積を初めて詳しく検討したのは、無限級数のところですでに登場したレオンハルト・オイラーだ。無限級数と同じように、無限乗積も、発散するか、ある有限の良に収束する。1だけでできた、単純な無限乗積を見てみよう。
この変わった式は、1を無限個に並べてすべて掛け合わせたなら、結果はなおも1になることを示している。今度は、発散する無限乗積の簡単な例をあげよう。
こうなるのは、どんどん因数を掛けていくと、積が任意に大きくなっていくからだ。ここで質問がわいてくる。収束するのはどういう無限乗積なのだろうか。それに、どんな値に収束するのだろうか。
その一例に、次の美しい式がある。これは、アイザック・ニュートン以前のイギリスで最も優れた数学者とされている、ジョン・ウォリス(1616-1703)が導き出したものだ。ウォリスは、影響力のある数学の本を二冊著し、ピューリタン革命には王党派の秘密のメッセージを議会派のために数学の原理をもちいて解読し、後には、英国王立協会の創設に加わった。50年にわたり、オックスフォード大学の幾何学教授を務めた。
ウォリスの無限乗積には、二つの際立った特徴がある。ひとつは、式のパターンがとてもすっきりとしていてエレガントなこと。もうひとつは、積がπの半分であること。無限の乗法から、円の直径に対する円周の比の半分の値が生まれるなんて、これほどびっくりさせられることが他にあるだろうか。
□今日の読書 ★★★★☆
著者:カルヴィン・C. クロースン
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