「終末のフール」 伊坂幸太郎
[太陽のシール]
「小惑星が降ってきて、あと三年で終わるんだ。みんな一緒だ。そうだろ? そりゃ、怖いぜ。でも、俺達の不安は消えた。俺達はたぶん、リキと一緒に死ぬだろ。っつうかさ、みんな一緒だろ。そう思ったら、すげえ楽になったんだ。」
言葉に詰まった。感嘆とも驚きともつかない感情で胸がつかえた。呼吸がうまくできない。僕は、土屋の力強さに目をしばたたくしかなかった。
「みんなには申し訳ないけどさ」高校生のころから彼は、いつだって他人の気持ちを配慮していた。
「土屋は偉いよ」何といっても、十代の時のおまえと変わっていないじゃないか。
「偉かねえよ。でもさ、ここに来て、あれだ、あれが起きた気がするんだ」
「何がさ」
「大逆転だ、大逆転が起きたんだ」
「あれ、見ろよ」しばらくして、土屋が正面の太陽を指差した。沈みかけの太陽は、綺麗な円形をしていて、空に貼りついたシールのように鮮やかだった。
「小惑星が落ちてさ、俺達がいなくなっても、きっとあの太陽とか雲は残るんだろうな」
[冬眠のガール]
目の前には三つの「目標」が貼ってあった。四年前お父さん達がいなくなった後に書いたやつ、私がやるべきこと。
「お父さんとお母さんを恨まない」
それが一つ目。これは努力する必要もなくて、実行できている。
「お父さんの本を全部読む」
これが二つ目。今まさに、なし遂げたばかりのところだ。本当にやっちゃうとはなあ。
三枚目を見る。
「死なない」
今のところは達成中だ。
[天体のヨール]
「おまえみたいな、天体ファンにとってさ、どう思ってるんだよ。三年後、小惑星が落ちてくる。みんな、絶滅だ。自分の好きな星に、自分が殺されるってのはどんな気分なんだ?」
「どんな気分って言われてもね」
「衝突する時、おまえはどうしてる?」
二宮はそこで頬をゆるませ、いつもの強張った目つきをやわらげ、俺に向かって笑った。「もちろん望遠鏡を覗いているよ」
「もちろんなのかよ」
「だってさ、今までは、地球から何十万キロ離れた彗星を見て、喜んでいたんだよ、僕達は。それが、もっと間近で見られるんだ。しかも、横に流れていくどころか、こっちに近付いてくるんだからさ」喋るほどに興奮してくる彼に、俺は圧倒される。
□今日の読書 ★★★☆☆ 著者:伊坂 幸太郎
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コメント
読んだんだね。短編苦手なのにご苦労様。
投稿: ぽん | 2007年2月 4日 (日) 17時48分