「経済の世界勢力図」 榊原 英資
[アジアで五億人の中産階級が勃興]
注目すべきことは、中国の13億人のうち15%に当たる2億人の人々が、年収で100万元(日本円で1000~1300万円)クラスの中産階級として育ってきたという事実です。
同じように、人口が10億人を超えるインドには、年収3000ドル以上の所得層が約1億5000万人いるといわれます。
このように、世界第一の人口大国・中国と第二位のインドで、合計3億5000万人もの中産階級が形成されているのです。さらに日本を含む東アジアには1億5000万人の中産階級がいるので、合計5億人になります。そのスケールは、米国1億5000万人、EU1億5000万人といわれる欧米の中産階級の数をはるかに超えています。
[今こそ親中路線をとれ]
日中関係は現在「政冷経熱」状態です。経済の面では非常に緊密さであるにもかかわらず、政治の面では相変わらず冷え切った関係が続いています。好き嫌いにかかわらず、中国と友好的な関係をもたなければ、日本の国益が損なわれます。にもかかわらず、経済の面ですら、イデオロギー的な反中感情のせいで、国益を損なっているケースが多い。たとえば、新幹線問題がそうです。
北京-上海新幹線の受注競争では、日本の新幹線技術は非常に評価が高かったにもかかわらず、結局ドイツ製リニアモーターカーに売り込み競争で勝てていません。その敗因には、日本側の新幹線技術の中国への流出を嫌う反中感情があったと聞きます。
中国と敵対していては、アジアのブロックから日本ははじき出されることになります。
[AMF構想]
1998年、タイ・インドネシアで始まったアジア通貨危機の際、日本は、IMFにかわるAMF構想を発表した。通貨危機に陥った国に対して、共同で資金援助を行うファシリティーで、具体的には日本、中国、香港、韓国、オーストラリア、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピンのアジア十カ国が合計1000億ドルの資金を供託し、基金を創設するという青写真を描いた。しかし、IMFとは独立に行動する機関であることがわかると、IMFやアメリカの猛反対に会い、実現できなかった。
[アメリカの単独行動主義]
2001年9月11日以来、ブッシュ政権はがらりと変った。その特徴を一言で言えば、戦時内閣であり、単独行動主義です。イラク戦争では、古くからの同盟国であるヨーロッパ内部の大国フランス・ドイツが戦争の正当性に疑問を最後まで投げかけたにもかかわらず、開戦にふみきりました。また、二酸化炭素の排出の制限を多国間でとりきめる京都議定書を批准しませんでした。国内においても、愛国法の制定など、市民的自由をある程度制限しても国家保安を優先するという方向性が強く出るようになりました。
[国民の金融資産が財政赤字を支えている]
2005年末現在で日本政府と地方自治体を合わせた債務残高は774兆円、対GDP比で170%に達しています。アメリカでも財政赤字が問題とされていますが、累積債務残高はGDP比60%、額にしても日本の半分以下です。
これだけ巨大な債務を抱えながら、日本政府の財政が一向に破綻する気配がないのはなぜでしょうか?
国債の価格が下がらないのは、国債の発行額に対して、それを上回るほどの国債の需要が市場にあることを示しています。特に、日銀、郵貯、銀行、生保が日本国債を買っています。これは、日本国債以外に、同等あるいは高い利率で回せる安全な投資対象がほかにないからです。
金融機関のその資金を支えているのは、他でもない日本国民の貯蓄です。国内の金融機関が大量に国債を保有しているそのお金は、銀行の預金者や保険の契約者、つまり日本国民から出ているのです。
[個人資産はどう持つべきか]
個人のみなさんの場合、国債を買ってずっと持っていれば間違いありません。郵貯や銀行が、個人から集めた金で国債を買っていますが、個人で直接国債を買えばいいわけで、たとえば十年国債を買ってずっと持っているわけです。しかも近頃は個人向け国債があって、一年以上たてば満期以前に売却しても元本が保証されています。
□今日の読書 ★★★★★ 著者:榊原 英資
経済の世界勢力図
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)



最近のコメント