[破綻するアメリカ 壊れゆく世界]ノーム・チョムスキー
[厳しく、恐ろしく、避けようの無い選択]
半世紀ほど前の1955年7月のことだ。哲学者のバートランド・ラッセルと物理学者のアルバート・アインシュタインがちが、他に類をみない内容のアピール[ラッセル-アインシュタイン宣言]を、世界の人々に向けておこなった。私たち人類が抱える様々な問題にたいしても、もっともな意見はあるだろうが、いまはそれを、「いったん脇において、すばらしい歴史をもつ生物学上の種の一員であることだけ」を自覚するよう人々に呼びかけ、「その種の消滅を、私たちの誰一人として望んでいるはずがない」と訴えたのだ。世界の人々はいま、「厳しく、恐ろしく、避けようのない」選択を迫られている。それは「人類を絶滅させるか、それとも人類が戦争を放棄するか」という選択なのだ、と。
[核惨事の危機一髪]
ラッセルとアインシュタインが強調した核による破壊の危険は、空想ではない。私たちはすでに核戦争の瀬戸際まで来ている。最も有名なのは、1962年10月のキューバ・ミサイル危機だ。このとき、私たちが「核による抹消」を免れたのは「奇跡」にほかならないと、二人の著名な研究者が言っている。ケネディの補佐官をつとめた歴史家のアーサー・シュレンジャーは、2002年にハバナで開かれた記念会議で、このミサイル危機を「人類史における最も危険な瞬間」と述べた。会議に出席した人々は、自分達が考えていたよりもっと深刻な危機だったことを知った。世界は長崎以来初めて核兵器が使用される「寸前」まで行っていたと、この会議を準備した国家安全保障公文書館のトマス・ブラントは報告。彼が言及しているのは、ソ連潜水艦のワシーリー・アルキポフ中佐が核兵器の使用を阻止した一件だ。アルキポフは、自分の潜水艦がアメリカの駆逐艦に攻撃されていたときに、核魚雷の発射命令の実行を拒んだのである。さもなければ、恐ろしい結果になっていただろう。
ハバナの記念会議に出席した高名な製作立案者の一人で、ケネディ政権の国防長官をつとめたロバートマクナマラは、ミサイル危機の最中に世界は「核惨事の危機一髪」まで行ったと2005年に回想した。さらに「もはや世界の終わり(アポカリプス)」だと警告し、「現在のアメリカの核政策は不道徳かつ不法であり、軍事的に不要で恐ろしく危険だ」と述べた。アメリカの核政策は「他国民にとっても自国民にとっても我慢できないリスク」(「過失または不注意による核の発射」という「とんでもなく高い」リスクと、テロリストによる核攻撃のリスク)をもたらす。マクナマラは、「クリントン政権のウィリアム・ペリー国防長官のつぎのような判断--アメリカが10年以内に核攻撃のターゲットとなる可能性は、50%を超える--を支持した。
「国家安全保障担当者の意見の一致しているところでは」とグレアム・アリソンは報告している。
「汚い爆弾による」攻撃は「避けられず」、必須の原材料である核分裂性物質を回収し管理しないかぎり、核兵器による攻撃の可能性が高いと、と。1990年代初めから、上院議員のサム・ナンとリチャード・ルーガーが率先して書く分裂性物質の回収や管理を目指し、その取り組みは一定の成果をおさめた。この成果について見当したアリソンは、ブッシュ政権の初日からこの計画が妨害されたと述べている。ブッシュ政権の政策立案者たちは、「逃れられない核の恐怖」を防ぐためにこの計画がを脇へ押しやり、精力を傾けてアメリカを戦争へと駆り立て、その後、自分達がイラクにもたらした破局を何とかくいとめようとしているというのだ。
戦略アナリスtのジョン・スタインブルナーとナンシー・ギャラガーは、米国学士院の機関誌のなかで、誇張ではなく警告している。ブッシュ政権の軍事計画とその侵略的な姿勢は「最終的な破滅の危険をかなりともなう」と。その理由は簡単だ。一つの国家が絶対的な安全を追求し、意のままに戦争し「核の歯止めを取り除く」(ペダツールの言葉)権利を確保しようとすれば、他の国々の安全が脅かされ、それらの国は対応策をとると考えられるのだから。ラムズフェルド国防長官の米軍再編で開発されつつある恐ろしいテクノロジーは、「間違いなく世界中に広まるだろう」。「競って威圧しあう」状況では、行動とそれにたいする反応の繰り返しによって「危険が増し、制御不可能になるおそれがある」。「アメリカの政治システムがその危険を認識できず、その意味するところに対処できない」ならば、「アメリカの存続の可能性はきわめて疑わしくなるだろう」と、スタインブルナーらは警告する。
[もはや世界の終わり]
「もはや世界の終わり」であるかどうかを実際的に見極めることは不可能だ。だが、気のたしかな人なら静観できないほど、その可能性が高いのは間違いない。推測は無意味だ、アインシュタインとラッセルが述べた「厳しく、恐ろしく、避けようのない」選択に対処することは、決して無意味ではない。それどころか、これは切迫した問題である。とくにアメリカについてそう言える。アメリカ政府は、歴史的に類を見ない軍事的支配を拡大し、破壊競争の加速に中心的な役割を果たしているのだから。
「偶発的な、または過失による、あるいは正式な許可のない核攻撃の可能性が高まるかもしれない」と、核戦争の脅威を減らす取り組みを率先してつづけてきたサム・ナン元上院議員は警告する。「私たちは最終戦争の危険をわざわざつくりだしている」とナンは言い、それは「アメリカの存続」が「ロシアの警告システムと指揮統制の正確さ」に左右されるような政策を選択した結果だと述べる。
ナンが言っているのは、アメリカが軍事計画を急拡大して戦略的均衡を破っているということ。その結果、「ロシアは、攻撃の警告を受けた場合、その警告が正確かどうか確認せずに、ただちに核兵器を発射する可能性が高まる」。「ロシアの早期警戒システムはひどい機能不全であり、ミサイルの飛来を誤報するおそれが大きい」という事実から、そうした脅威はいっそう増大する。アメリカは「高度警戒、核兵器即応態勢」をよりどころにし、「数分以内にミサイルを発射することになる」ため、「指導者は攻撃の警告を受けたら、核兵器を発射するか否かはほとんど即座に決定しなkればならない。データ収集し、情報を交換し、状況を把握し、破壊的な判断ミスを避けるための時間を奪われる」。その険がおよぶ範囲はロシアにとどまらず、中国が同様の行動をとれば、やはりその周辺まで危険がおよぶ。戦略アナリストのブルース・ブレアによると、「早期警戒および発射制御に関しては、パキスタンやインドをはじめとする核拡散国家も問題をかかえていて、そちらのほうがもっと深刻」である。
[無法国家のやりたい放題!]
フィナンシャルタイムズ紙の調査で明らかになったことがある。「クリントンとブッシュの両政権は、イラクがトルコとヨルダンに石油を密輸していると知ったいただけでなく、アメリカ議会に知らせてもいた」うえ、「見て見ぬふりをする」よううながしていた、と。その理由は、ヨルダンはアメリカの重要な顧客国であるため、この違法売却が「国益にかなう」から。また、重要なアメリカ軍事基地として長期にわたり地域支配に協力してきたトルコへの支援は、「安全保障や繁栄をはじめとする死活的な利益」を促進するのだから。
イラク侵攻前のリベート計画がどれほどの規模だったにせよ、イラク占領中のアメリカの管理下で消えた総額を概算することさえおぼつかない。連合国暫定当局(CPA)が統治を終えたとき、その管理下に移されていた推定200億ドルのイラク復興資金--石油・食糧交換計画による未使用の資金と110億ドルを超えるイラクの石油収入をふくむ--の行方がわからなくなっていた。「透明性の欠如」がCPAの汚職に関する「疑惑を深めている」とフィナンシャルタイムズ紙は報じ、多くの実例を挙げている。たとえば、500万ドルを超える契約の四分の三が、競争入札なしで成立していた。そのうちの一つ、「イラクの石油施設を再建する14億ドルのプロジェクトは、アメリカ副大統領のディック・チェイニーがかつて経営トップだった石油関連会社ハリバートンが、競争入札なしで受注し、[それによって]ハリバートンはイラク復興資金の最大の単独受領者となった」。さらなる調査によって、テキサスの会社と「伝説的な石油マンたち」が「国連の石油・食糧交換計画による規定」を覆そうと計画していたことが明らかになり、数件が告発されている。これまでに明らかになったのは、とりわけアメリカ企業による不正の泥沼化をしめしていることだ。 著者:ノーム・チョムスキー
□今日の読書 ★★★★★
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2004年8月に打ち上げられたNASAの水星探査機「メッセンジャー」は、2008年1月、水星に接近しました。このとき、メッセンジャーは、1200枚以上の画像を撮影することに成功しました。
ダイナミックな地形が広がる赤い惑星
木星表面で最も目立つ模様は、「大赤斑」とよばれる巨大な渦模様です。大赤斑を発見したのはイギリスの科学者ロバート・フックです。1664年のことでした。それ以来、340年以上もの間、ずっと消えることなく存在しています。

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